【特集】新潟県内の上場企業 コロナ禍で業績に明暗②「エアコン、加湿器などが好調の一方で部品関連は厳しい結果に」
上場する新潟県内のメーカーを見ると、家電など生活関連製品のメーカーは比較的好調だった半面、サプライチェーンが国外にも広がるBtoB向け製品のメーカーは、営業自粛、商談と展示会の延期・中止、顧客である工場の稼働停止、海外主要国のロックダウンなどの影響などで厳しい結果となった。
【生活関連などのメーカー】巣ごもりで売上高は伸長?
株式会社コロナ(三条市)の2021年3月期第1四半期決算短信(連結)は、主にルームエアコンなどの空調・家電機器が好調だったことにより、売上高は204億4,900万円と前年度同期から23.7%の増収となった。
空調・家電機器単体での売上高は114億円で、前年同期を47.3%上回る結果となったが、これは気温が高めに推移したことや、販売店による早期提案の動き、そして新型コロナウイルス感染拡大に伴う在宅時間の増加などがプラスに影響した。また同様に、部屋干し需要の増加によって除湿機の販売も好調だった。一方で、販売活動においては展示商談会などのイベントや営業訪問において一部制限が続いたが、業績への影響は軽微であったという。
利益面については、営業利益が△3億1,900万円(前年同期△6億2,400万円)、経常利益が△2億2,900万円(同△5億3,000万円)となった。また、株価下落により投資有価証券評価損を計上したことなどが影響し、親会社に帰属する純利益は△4億7,300万円(同△4億700万円)となった。
ダイニチ工業株式会社(新潟市南区)も新型コロナウイルスの影響により、本来であれば需要期を過ぎている加湿器の売上げが上がった。また、昨年10月から受託生産を開始している燃料電池ユニットも売上げに寄与し、2021年3月期第1四半期決算短信(非連結)の累計売上高は12億1,700万円と前年同期と比べ116%上昇し、第1四半期の売上としては過去最高を記録している。
株式会社スノーピーク(三条市)の2020年12月期第1四半期決算(連結)は、売上高31億400万円(対前期同期比9.8%増)、営業利益は400万円(前年同期は△500万円)、経常利益は△1,300万円(同△2,100万円)、親会社株主に帰属する純利益は9,500万円(同△4,500万円)となった。
全体的に新型コロナウイルス感染拡大の影響は見られるものの、堅調に推移した。国内既存事業は暖冬の影響により例年よりもキャンプシーズン開始が早まったことなどを受け、キャンプ初心者が購入しやすいエントリー製品の販売が進み、前年同期に比べ14.6%増となる23億3764万9,000円の売上高となった。
直営の既存店は、新型コロナウイルスによる来客数減少が見られたものの、売上は前年同期比で6.3%増の5億5,388万円となった。さらに、自社ECサイトによるオンラインの売上は前年度比52.5%増の1億3,096万円となり、直販チャンネル全体では22.7%増になった。(直営店以外の)卸売の売上に関しても堅調に推移したが、一方でAmazonなどのEC卸は新型コロナウイルスの影響により日用品の販売が優先され前年同期比5.7%の減となった。
一方、ツインバード工業株式会社(燕市)の2021年2月期第1四半期決算(連結)は、売上高23億1,500万円となり、対前年同期比で△11.8%の減収となった。営業利益△1億3,900万円(前年同期は△1億8,500万円)、経常利益は△1億8,200万円(同△2億2,700万円)、親会社株主に帰属する純利益は△1億3,700万円(同△1億6,300万円)。
卸先の量販店が一部休業したことから来客人数の減少や流通在庫の調整などの影響を受けたようだ。一方で、巣ごもり需要の高まりから全自動コーヒーメーカーなどの調理家電がポイントサービス市場やEC市場で好調な推移した。
売上高が減収となっている一方で、売上総利益率は、収益性の高い商品への販売重点化や原価低減活動に取り組んだ結果、前年同期に比べて改善し損失額を圧縮している。
社名 | 売上高 | 経常利益 | 通期売上高予想 |
スノーピーク(2020年12月期第1四半期連結) | 31億400万円(9.8) | △1,300万円(前年同期は△2,100万円) | − |
ツインバード工業(2021年2月期第1四半期連結) | 23億1,500万円(△11.8%) | △1億8,200万円(前年同期は△2億2,700万円) | 122億円(0.3%) |
コロナ(2021年3月期第1四半期連結) | 204億4,900万円(23.7%) | △2億2,900万円(前年同期は△5億3,000万円) | 821億円(4.3%) |
ダイニチ工業(2021年3月期第1四半期非連結) | 12億1,700万円(116.0) | △5億700万円(前年同期は△7億2,600万円) | 190億円(0.9%) |
(カッコ内は対前年同期比) |
【BtoBなどのメーカー】商談機会の喪失と取引先工場の停止が響く
北越工業株式会社(燕市)の2021年3月期第1四半期決算短信(連結)は、売上高80億3,000万円(対前期同期比△18.0%)、営業利益は5億2,700万円(同△59.2%)、経常利益は5億5,700万円(同△56.2%)、親会社株主に帰属する純利益は3億2,000万円(同△62.6%)で前年同期に比べ減収減益となった。
エンジンコンプレッサや発電機、高所作業車といった建設機械事業において、売上高は64億9,400万円と前年同期と比較して18.5%下回る結果となった。これは緊急事態宣言発令による外出自粛や移動制限により営業活動の一部自粛が行われ、建設工事も新規案件が見送られるなどした影響である。
産業機械事業に関しても同様に、新型コロナウイルスにより経済活動が大きく停滞したことで販売先の投資マインドが低迷したことや、商談が停滞したことが原因で減収となった。一方、主力であるモータコンプレッサは販売促進の効果でシェアが伸び、部品などは底堅く推移していたが、製品販売の落ち込みをカバーすることはできなかった。
株式会社遠藤製作所(燕市)の2020年12期第1四半期決算短信(連結)でも、受注の減少により、ゴルフ事業、メタルスリーブ事業、鍛造事業のいずれにおいても減収減益となり、累計の売上高は21億6,800万円(前年同期比△19.1%)、営業利益は△3,200万円(前年同期は1億5,000万円)、経常利益は△5,300万円(同1億9,600万円)、親会社株主に帰属する純利益は△1億1,500万円(同1億2,900万円)という結果になった。
また、 8月11日に発表予定だった2020 年 12 月期第 2 四半期連結決算を、新型コロナウイルスの影響で一部海外子会社で決算数値の確定に更に時間を要することから9月下旬発表に延期した。
日本精機株式会社(長岡市)、株式会社太陽工機(長岡市)においても同様に、新型コロナウイルスによる活動自粛で商談と展示会の延期・中止や、顧客である工場の稼働停止、海外主要国のロックダウンなどの影響があり、減収減益となった。
北越メタル株式会社(長岡市)も主原料や諸資材、エネルギー価格の下落に加え、コスト改善を行なったが、コロナウイルスにより製品販売数量の減少や製品販売単価安の影響があり、2021年3期第1四半期決算短信(連結)の売上高は56億4,000万円(前年同期比△1.2%)、営業利益3億7,800万円(同310.8%)、経常利益4億700万円(同250.2%)と減収増益になった。
一方、企業向けの製品を製作する多くの上場企業が減収減益となる中、増収増益となったのは株式会社有沢製作所(上越市)である。
有沢製作所の2021年3期第1四半期決算(連結)は、売上高は105億9,700万円(前年同期比0.5%)、営業利益7億4,800万円(同48.9%)、経常利益7億3,200万円(同23.2%)、親会社株主に帰属する純利益は4億2,800万円(同71.2%)。新型コロナウイルスの影響が一部のセグメントに留まった一方で、フレキシブルプリント配線板材料の販売増とリジッドプリント配線板材料の収益改善により電子材料事業の利益が前年同期に比べ大きく増加した。
セグメントごとに見た場合、電子材料の売上高が68億9,000万円(同5.2%)、利益が7億6,800万円(同71.5%)。産業用構造材料は開発経費の増加により、売上が22億3,100万円(同5.2%)に対し、利益が5,400万円(同△19.1%)。電気絶縁材料の売上高は6億2,500万円(同△18.5%)、利益が4,700万円(同△34.9%)。ディスプレイ材料の売上高は5億7,500万円(同△32.3%)、利益が200万円(同△94.6%)。また、その他の売上高は2億7,500万円で、前年同期に比べ7,000万円増加した。
なお有沢製作所は、通年の連結事業予測に関しては新型コロナウイルスの影響がセグメント全般に及ぶものと予想している。
社名 | 売上高 | 経常利益 | 通期売上高予想 |
遠藤製作所(2020年12月期第1四半期連結) | 21億6,800万円(△19.1) | △5,300万円(前年同期は△1,960万円) | − |
太陽工機(2020年12月期第1四半期非連結) | 18億9,200万円(△31.1%) | 1億6,000万円(△71.0) | 70~80億円(△35.7~△26.6%) |
日本精機(2021年3月期第1四半期連結) | 324億8,000万円(△47.3%) | △30億1,800万円(前年同期は19億8,400万円) | − |
有沢製作所(2021年3月期第1四半期連結) | 105億9,700万円(0.5) | 7億3,200万円(23.2) | 423~461億円(0.9%) |
北越工業(2021年3月期第1四半期連結) | 80億3,000万円(△18.0%) | 5億5,700万円(△56.2) | 300億円(△8.0~0.3%) |
北越メタル(2021年3月期第1四半期非連結) | 56億4,000万円(△1.2) | 4億700万円(250.2) | 207億1,000万円(△8.2%) |
(カッコ内は対前年同期比) |