【特集】新潟県内の上場企業 コロナ禍で業績に明暗③「運輸などに大きなダメージか」
3回目は建設、運輸、物流、金融、サービスなどの県内上場企業の最新決算を紹介する。
【建設業界 新型コロナの影響は軽微?】
株式会社福田組(新潟市中央区)の2020年12月期第2四半期決算(連結)は売上高841億5,800万円(対前期同期比10.7%増)で、営業利益41億7,700万円(同82.8%増)、経常利益42億6,300万円(同73.4%増)、親会社株主に帰属する純利益27億9,200万円(同77.3%増)と増収増益となった。同様に、第一建設工業株式会社(新潟市中央区)も2021年3月期第1四半期決算(非連結)は売上高109億9,100万円(対前期同期比16.9%増)、営業利益13億6,800万円(同82.7%増)、経常利益14億8,700万円(同73.6%増)、親会社株主に帰属する純利益は10億1,100万円(同74.7%増)の増収増益となった。
建設業界では新型コロナウイルスの影響により、民間建設投資は企業収益の減少を受け慎重な動きとなり受注・価格競争が厳しい状態が現在も続いているが、一方で公共建設投資は堅調に推移している。その中で特に、前事業年度からの繰越工事が順調に進捗し、採算性が高い物件を完成させた福田組と第一建設の2社は増収増益となった模様だ。
田辺工業株式会社(上越市)では、第1四半期以降に繰越しになる物件が多かったことに加えて、一部海外子会社においてロックダウンや移動規制による工場の稼働率低下や工事進捗の鈍化が発生し、前年同期との比較では減収となった。しかし、施工体制の確立や原価管理の徹底などの取り組みにより粗利益率が改善し、2021年3月期第1四半期決算では増益となった。
なお、受注の確保・拡大に努め、設備工事事業の大型プラントや定期修繕工事を中心とした受注により、グループ全体では前年同四半期並みの受注高を計上した。
こうした中、株式会社植木組(柏崎市)の2021年3月期第1四半期決算(連結)は売上高79億5,200万円(対前期同期比△16.2%増)、営業利益△4,900万円(前年同期は1億8,600万円)、経常利益△2,000万円(同2億2,500万円)、親会社株主に帰属する純利益は△4,400万円(同1億1,000万円)と減収減益となった。
減収の主な要因としては、建設事業における前期繰越高の減少と、採算性の高い大型土木工事が減少したことなど。建設事業単体の売上高は72億7,600万円と前年度同期比で△16.2%、利益は400万円と前年同期の△97.7%となった。また、新型コロナウイルスの影響としては、ゴルフ場運営事業において来場者が減少し、売上高が3億8,100万円(前年同期25.4%)、利益は△4,800万円となった。
社名 | 売上高 | 経常利益 | 通期売上高予想 |
福田組(2020年12月期第2四半期連結) | 841億5,800万円(10.7%) | 42億6,300万円(73.4%) | 1,760億円(△3.3%) |
第一建設工業(2021年3月期第1四半期非連結) | 109億9,100万円(16.9%) | 14億8,700万円(73.6%) | 490億円(2.2%) |
植木組(2021年3月期第1四半期連結) | 79億5,200万円(△16.2) | △2,000万円(前年同期は2億2,500万円) | 500億円(△3.7%) |
田辺工業(2021年3月期 第1四半期連結) | 70億9,800万円(△3.9%) | 4億600万円(61.2%) | 350億円(△7.2%) |
(カッコ内は対前年同期比) |
【運送・物流などの業界 新型コロナの影響が顕著に】
交通や運送、物流に関する業界は顕著に新型コロナウイルスによるマイナスの影響が出た。
佐渡汽船株式会社(佐渡市)の2020年12月期第1四半期決算(連結)は売上高16億7,600万円(対前期同期比△15.8%)で、営業利益△9億1,900万円(前年同期は△7億7,200万円)、経常利益△9億4,800万円(同△7億9,900万円)、親会社株主に帰属する純利益は△9億3,000万円(同△8億900万円)。
佐渡汽船は第1四半期にカーフェリー「おけさ丸」の不具合による欠航が増加していたが、3月以降の新型コロナウイルスの影響が追い討ちをかける形になった。新型コロナウイルスによる観光客、および団体客のキャンセルで、旅客輸送人数は17万4,810人と前年同期に比べ20.0%減少。自動車航送台数は乗用車換算で3万5,309台、前年同期比では9.1%減少し、売上高は11億1,175万円、前年同期比16,1%の減少となった。さらに旅客の海運以外にも、貨物の運送や売店・飲食などの他事業でもマイナスの影響が出た。
株式会社新潟交通(新潟市中央区)と株式会社リンコーコーポレーション(新潟市中央区)も同様に新型コロナウイルスによる利用者・取引貨物の減少で、運輸事業、商品販売事業、旅館事業など多くの事業が減収減益となった。リンコーコーポレーションではアジアを中心として仕向国の経済活動が制限されている影響も受けたという。
【その他】
株式会社新潟放送(新潟市中央区)の2020年3月期決算(連結)は売上高225億6,500万円(対前期同期比8.1%増)で、営業利益15億4,800万円(同52.2%増)、経常利益15億9,400万円(同49.1%増)、親会社株主に帰属する純利益7億1,200万円(同13.5%増)と増収増益。
特に、情報サービス事業は消費税増税前の駆け込み需要やシステム開発収入により順調に推移し、加えてWindows7のサポート終了に伴う機器更新などのサーバやパソコンの機器販売が好調だったことも収入を押し上げた。結果、この事業の売上高は154億9,500万円(前期比15%増)、営業利益は10億2,900万円(同80.5%増)となった。
北陸瓦斯株式会社(北陸ガス、新潟市中央区)の2021年3月期第1四半期決算(連結)は売上高112億9,100万円(対前期同期比△9.9%)で、営業利益は10億2,600万円(同1.1%増)、経常利益11億400万円(同1.3%増)、親会社株主に帰属する純利益は7億3,900万円(同1.1%増)と減収増益となった。
見附市のガス事業譲受に伴いガスの販売量の増加があったものの、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、業務用ガスを中心としたガス販売量が減少、加えて原料費調整に伴うガス料金単価の引き下げが減収に影響した。
営業費用は、見附市のガス事業による増加があったものの、ガス販売量の減少とLNG(液化天然ガス)価格の下落による原料費の減少により前年同期と比べ減少し増益となった。
北陸ガスは、第2四半期以降も新型コロナウイルス感染症拡大による業務用を中心としたガス需要への影響が継続すると予想しているが、見附市のガス事業譲受や平均気温ベースの想定により、ガス販売量は前期並みを見込んでいる。また今期の連結売上高は、減量調整に伴うガス料金単価の引き下げなどにより、前期比6.3%減となる483億円を見込んでいる。
セコム上信越株式会社(新潟市中央区)の2021年3月期第1四半期決算では、事業向け、家庭向けのオンライン・セキュリティシステムの契約が順調に推移した一方で、新型コロナウイルスの影響で各種イベントの自粛により臨時警備が中止になったことや、安全商品の営業活動を自粛した結果、全四半期に比べ2.1%減収となる58億7,100万円の売上高となった。
営業利益は、緊急事態宣言下でもサービスの提供を続けた一方で、営業活動の自粛、研修の中止・延期をした結果、売上原価や販売費及び一般管理費が抑制さたことなどにより増益となった。
株式会社キタック(新潟市中央区)の令和2年10月期第2四半期決算での売上高は、繰越業務の早期計上などにより大幅増となった前年同期と比較して6.3%減の18億7,500万円となり、それを反映し営業利益は3億4,100万円(前年同期比△17,2%)、経常利益は3億6,700万円(同△14.7%)と減収減益。
株式会社大光銀行(長岡市)の2021年3月期第1四半期決算は、経常収益53億8,600万円(前年同期比13,7%増)と収益が増加したが、業務費用と経常費用の増加などにより、経常利益は4億7,000万円(同△36.0%)、親会社株主に帰属する純利益が1億8,700万円(同△61.8%)と増収減益になった。
預金等残高は、個人預金及び法人預金の増加などにより、前年四半期末比で52億円増加し、1兆4,120億円。貸出金残高は、事業者向け及び消費者ローンの増加などにより前年同四半期末比で282億円増加、1兆692億円となった。
株式会社第四北越フィナンシャルグループ(本店=長岡市)も経常費用が増加したことから、2021年3月期第1四半期決算は、経常収益358億8,300万円(前年同期比10,4%増)、経常利益41億5,900万円(同△12.9%)、親会社株主に帰属する純利益が25億1,900万円(同△19.2%)の増収減益。貸出金残高は、県内では新型コロナウイルスに伴う資金繰り支援などによって中小企業を中心に増加したものの、県外では大企業向けが減少したことから、全体では前年同期比で58億円減少し、4兆9,790億円となった。
社名 | 売上高 | 経常利益 | 通期売上高予想 |
キタック(2020年10月期第2四半期非連結) | 18億7,500万円(△6.3%) | 3億6,700万円(△14.7%) | 27億7,400円(1.8%) |
新潟放送(2020年3月期連結) | 225億6,500万円(8.1%) | 15億9,400万円(49.1%) | − |
佐渡汽船(2020年12月期 第1四半期連結) | 16億7,600万円(△15.8) | △9億4,800万円(前年同期は△7億9,900万円) | − |
新潟交通2021年3月期 第1四半期連結) | 24億7,700万円(△47.3%) | △10億5,900万円(前年同期は2億9,600万円) | 126億7,000万円(前年同期は186億5,900万円) |
リンコーコーポレーション (2021年3月期 第1四半期連結) | 35億1,000万円(△20.4) | △1億300万円(前年同期は2億2,500万円) | 141億3,000万円(△15.9%) |
セコム上信越(2021年3月期 第1四半期連結) | 58億7,100万円(△2.1) | 11億7,700万円(2.6%) | 246億5,900円(1.2%) |
北陸瓦斯(2021年3月期 第1四半期連結) | 112億9,100万円(△9.9%) | 11億400万円(1.3%) | 483億円(△6.3%) |
(カッコ内は対前年同期比) |