【特集】新潟県内で広がるサブスクリプションサービス最新事情
近年、動画配信サービスや音楽配信などのサブスクリプション(定額制サービス)が定着しているが、新潟県内でも様々な業種で導入されるケースが増えている。消費者にとっては定額使い放題でメリットある一方、企業側は採算性の兼ね合いもある。様々な業界がコロナ禍で苦戦しているなか、新規顧客を開拓するカギとして期待されているサブスクリプションサービスの県内最新事情を追った。
弥彦温泉の温泉入り放題
弥彦温泉(新潟県弥彦村)の「四季の宿みのや」が8月からスタートした温泉のサブスクリプションが県内では珍しい取り組みとして話題になっている。期間が2カ月限定で、先着200人限定となっており、同社によると、「スタート当初は契約が進み、現在、半分くらいまで埋まった」と話していた。利用客には新潟市などの市外からもいるという。元々、温泉サブスクのアイデアは同館の店主がアップルミュージックで聴き放題を利用していることから、これは快適だと思いついたそうだ。
ラーメン1杯無料に
株式会社ニューズ・ライン(新潟市中央区)は、昨年12月から月額500円で月にラーメン1杯が無料になるというラーメンアプリをリリースしたが、スタートから3カ月で2万ダウンロートとなった。9月1日から名称を「ラ~ポン」に変更して、同社がラーメン店紹介本を出版している群馬県版(60軒)もリリースする。また、新潟県版も現在の63軒(下越エリア38軒、中越エリア25軒)から上越エリアが12軒参加し、87軒に拡大する予定だ。「ラ~ポン」は新潟県内だけでなく、群馬県でも食べることができる。
イタリア軒がドリンクサブスク
株式会社ホテルイタリア軒(新潟市中央区)は8月7日から、同ホテル1階リストランテマルコポーロにて、同社初の試みとなる月額定額飲み放題(30日間)「ドリンクサブスク」のサービスを開始した。新サービスの導入により、新規顧客の獲得を狙う。
アルコールも含み、ランチから喫茶、ディナーまで対応する3つのコースがあり、ソフトドリンクサブスクが2,000円(税サービス込み)、アルコールサブスクが4,000円(同)、ソフトドリンク+アルコールサブスクが5,000円(同)となっている。
同社担当者は「当初の狙いであった若い層の取り込みについては結果につながっていないが、年齢の高い層には反応がいい。今まで月1回の来店だった人が、サブスク利用によって、月に2、3回になったので、老舗ホテルという敷居を下げる狙いは達成できたのではないか」と話している。
コワーキングスペースも
コロナ禍でテレワークなどが普及していることを背景に、株式会社ヴァーテックス(新潟市江南区)は8月1日から、「エンジョイ・ライフ・クラブ コワーキングスペース」を新潟市中央区のケーズデンキ2階の「エンジョイ・ライフ・クラブ女池インター校」にオープンした。
同社は、新型コロナウイルスの影響で自宅作業が増える一方で、家に子供がいて仕事ができないといった状況があることから、今回コワーキングスペースをオープン。「エンジョイ・ライフ・クラブ」は「スパ&ラウンジ長潟」の温浴、カルチャー教室、インドアゴルフが定額制で全て使えるサービスで、フリーランスやテレワークなどのビジネスマンを想定している。料金は定額制で1万1,999円。
同社によると、時間制などのビジター利用からサブスクサービスに乗り換える人も出てきたという。オープン1か月で10人の定額制サービスの会員が増えたという。同社では「ビジターで利用のイメージがつかめると、定額制のサービスの割安感に気づき、定額制サービスに入る人もいる」と話している。
キャンプ場までサブスク
株式会社アドベンチャートリップ(新潟県長岡市)は、同社の新規事業として、9月9日から新潟県燕市に新潟県内アウトドア業界初となるサブスクリプション(月定額)型キャンプ場フリーアートフィールドをオープンする。
キャンプ場開業のきっかけは、アドベンチャートリップの五十嵐貴博代表が約5年前から、長岡市の自宅と燕市にある私有地の森を行き来する生活を送っていたところ、友人や首都圏の知人にも非日常の体験を味わってもらいたいと、私設のキャンプ場(約370坪)を開設。そのさなか、新型コロナウイルス感染症が拡大し、遊び場に困っている親子などにキャンプ場を提供したいという思いから、今回の開業にこぎつけた。
会員は50組限定(初回体験無料)とし、1名利用は月3,000円(税込み)、ファミリー利用は月4,000円(税込み)で、365日24時間使い放題となる。
今後、フリーアートフィールドではWi-Fiの整備も進める予定で、ワーケーションやテレワークの拠点としても利用が可能になるほか、新潟県西山町の飲食店だった建物も同料金で利用できる。西山町の物件は、ワーケーションでの利用や将来的にはゲストハウスとしての活用も検討している。
厳選した地酒を届けるサービスも
また、昨年9月からのスタートと最近の導入ではないが、角打ちという立ち飲みスタイルで営業している、わたご酒店(新潟市江南区・亀田)が全国の酒蔵から厳選した地酒を毎月定額で届けるサブスクリプション形式(月額制)のオンラインショッピングモールsubscに新規出店した。
わたご酒店はsubscで、厳選した地酒720ml・2本を毎月定額で届ける。コースは2種類で、日本酒に詳しくなれる「日本酒入門コース」(月額4980円/送料・消費税込み)と、利き酒師が選ぶ「今が飲み頃の地酒」(月額4780円/送料・消費税込み)となる。
同店によると、現在100人近くの会員がおり、同店では「消費者の選び疲れを背景にプロのお薦めを飲みたいというニーズは多い。割安感ではなく、選ぶ時間を省くというサービスだ」と話している。
ある業界関係者は「弊社は多角化の中の1つの事業なので出来るが、定額制で採算が合うのかと思う業種もある」と話し、別の関係者は「新しいサービスなので、新潟県ではまだ受け入れられるか分からない。今回の導入は感度を試す意味もある」と話している。サブスクサービスがコロナ禍の救世主となるかどうか、今後が注目されるところだ。