【特集】「エネルギー王国新潟」(上)「古くからのエネルギー大国の新潟に新たな息吹」

新潟県は原油、天然ガスは国内生産量が現在全国1位

新潟県では古くから原油・天然ガスの開発が行われており、「日本書記」には「668年に越の国から燃ゆる土と燃ゆる水を献ず」との記録があり、旧黒川村には、その燃ゆる水を献上したとされる日本最古の原油湧出地もある。

また明治時代に入ると全国有数の産油県となり、日本一の産油量を誇った新津油田(新潟市秋葉区)を掘り当てて石油王と呼ばれた中野貫一氏や、昭和シェル石油(現・出光興産株式会社=出光昭和シェル)の前身の1つである新津石油の創業者である新津恒吉が活躍した。なお中野貫一氏は日本石油(現・新日本石油株式会社=後述)に買収された中央石油株式会社や、帝国石油(現国際石油開発帝石株式会社)に買収された中野合資会社を設立している。

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旧新津油田

 

また日本の二大石油会社であった日本石油と宝田石油(両社は合併し現在は、ENEOSホールディングス株式会社傘下の新日本石油)も新潟で誕生した。

一方、新潟県は現在もエネルギー分野で重要な役割を担っている。新潟県のホームページによると、原油は国内生産の68.8%、天然ガスは国内生産の78.1%を占め、その生産量は現在全国1位となっている。また東北電力株式会社の発電所(東新潟火力発電所など)、東京電力ホールディングス株式会社の柏崎刈羽原子力発電所、東京電力フュエル&パワー株式会社と中部電力株式会社の合弁会社で世界屈指の火力発電事業会社である株式会社JERAの火力発電所「上越火力発電所」などがある。

 

 

 

新潟東港に新たなバイオマス発電所が誕生か

地図中央右に見えるのが赤い広大なサンライフゴルフ場だ

こうしたなか、再生可能エネルギー関連でも新たな動きが出てきた。

国内トップクラスのバイオマス発電事業者であるイーレックス株式会社(東都)が、新潟東港周辺の土地(聖籠町)に出力300メガワット規模の世界最大級のバイオマス発電所の建設計画を進めている。現在、東北電力との系統接続における最終的な調整段階に入っている。

イーレックスでは、場所は明らかにしていないものの、地元関係者の話によると、かつて石油精製施設の誘致を進めていたものの断念した新潟サンライズゴルフコースがある土地の可能性が高い。昨年9月県議会の産業経済委員会でも「バイオマス発電を検討している企業が、新潟東港のゴルフ場で今、あるわけですが、そこを借りるか買収して、その半分の用地を使って、 1,000億円の投資をして、ロシアからチップ材を輸入して60万キロワットの木質バイオマス発電をやりたいと」という話が出ていた。また過去の県議会でも本来の目的である企業誘致に利用すべきとの意見が幾度となく出されている土地だ。

一方、イーレックスはホームページ上で、最大級のバイオマス発電所の営業運転を2025年度中に開始することを目指していると、発表している。関係者の話によると、これが新潟東港のバイオマス発電所である可能性が高いという。

同社による今回の建設による設備投資額は約1,000億円を見込んでいるという。なお、イーレックスの本名均社長は新潟市出身で、新潟市とは大きなつながりがある。

別の地元関係者は、「同社のバイオマス発電は木材を使用したもので、年間120万トンの木材が必要とされる見通しで、同社ではロシアから燃料である木材チップを輸入する計画。木材チップが定期的に運搬されれば、懸案のロシア極東・新潟間の横断定期航路が実現することになる」と話す。

この建設計画が実現すれば、新潟市がまさに環日本海の拠点となるといえそうだ。

なお、すでに新潟東港周辺には、株式会社バイオパワーステーション新潟のバイオマス発電所、合同会社新潟島見ソーラーパークのメガソーラー「新潟海辺の森ソーラーパーク」(総出力14メガワット強)、青木環境事業株式会社の産業廃棄物発電施設、フォークリフト用水素ステーションなどがある。さらに少し離れるが、新発田市から胎内市の海岸線沿いには、日立ウィンドパワー株式会社やJEN胎内ウィンドファーム株式会社などの風力発電機がずらりと並ぶ。

イーレックスの進出は、東港周辺のエネルギー拠点としての注目をさらに集めそうと言える。

(この特集は「エネルギー王国新潟」と題し、県内のエネルギー施設の動向を上、中、下の3回で掲載します)

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新潟港(東港区)臨港道路西埋立島見線道路が近く完成(2019年3月3日)
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新潟県新発田市、胎内市の海岸線に並ぶ風力発電機(2020年6月27日)
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青木環境事業の産業廃棄物発電施設

胎内市の海岸沿いに並ぶ風力発電

 

(文・梅川康輝)

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