新潟市の明倫短大で拉致被害者の曽我ひとみさんが学生達へ講演
新潟県が大学生へ向けて行う拉致問題啓発セミナー
新潟県は7日、新潟市の明倫短期大学にて「拉致問題啓発セミナー」を開催した。セミナーでは県の取り組みの説明や、拉致問題啓発アニメ「めぐみ」が上映されたほか、拉致被害者で2002年に帰国した曽我ひとみさんが登壇し、大学生へ語りかけた。
日本政府ではこれまで17人を拉致被害者として認定している。このうち、横田めぐみさん、蓮池薫さん、蓮池祐木子さん、曽我ひとみさん、曽我ミヨシさんの5人が新潟県に関係しており、蓮池夫妻と曽我ひとみさん以外は未だ帰国が果たせていない。さらに、県では北朝鮮による拉致が疑われる特定失踪者を6人確認している。
こうしたことから、県では2年前から大学生などを対象とした拉致問題セミナーを行っており、今回は明倫短期大学(新潟市西区)にて開催された。セミナーの前半では2008年に製作された拉致問題啓発アニメ「めぐみ」が上映され、横田めぐみさんの両親、滋さん早紀江さんの活動が紹介され、後半には実際に拉致を経験し、2002年に帰国した曽我ひとみさんが登壇した。
拉致被害者の曽我ひとみさんが語る当時の北朝鮮
曽我ひとみさんは、拉致された当時の北朝鮮での生活や、未だ帰国できていない母・ミヨシさん、拉致問題解決に尽力し今年亡くなった横田滋さんとの思い出などを語った。特に、今回の会場となった明倫短期大学は歯科技工士や歯科衛生士の育成を行っていることから、「現地で娘を歯科医へ連れて行った際、麻酔処置の不手際で長時間昏睡することとなったことから娘が歯医者へトラウマを持つことになった。みなさんは子供を治療する際は優しくしてあげてください」と学生達へ語りかけるとともに、当時の北朝鮮の過酷な生活環境についても紹介した。
北朝鮮工作員の行為と劣悪な生活環境を語る一方で、現地で生活する人々との交流の思い出にも言及し、「工作員のような人たち以外は、本当にごくごく普通の人たちであったことをどうか覚えておいてください」と話した。
曽我さんは現在の拉致問題に関し、「昭和に起きた拉致事件が、平成、令和に渡って解決しておらず、家族を奪還するため前線に立っていた親世代は高齢化している。世代を跨いだことになる拉致問題の風化が危惧される。現在のコロナ禍がチャンスとも言われるが、あまりに常軌を逸し、他国を敵視した行動をするあの国で(拉致被害者を)放っておくこともできない。母がどうしているのか知りたい」と語った。
そして学生達へ「どんな小さなことでもいいです。どこかで署名活動をしていたら一筆書いてください。または、今日の話を知人、友人に話してください。解決のために奔走する家族がいることを知って、一人でも多くの日本人を取り戻すため、力を貸してください」と呼びかけ、公演後には署名のリストに学生の列ができた。