【特集】「米の可能性を創造する」、新潟県内米菓メーカーの新たな動き
米どころ新潟は米菓メーカーが多くあり、全国的にも知名度が高い。経済産業省が公表している都道府県別の米菓製造業における出荷額では、新潟県は2,151億円で全国1位。それに続くのは埼玉県で207億円と、2位と10倍以上の差をつけトップを走っているのが新潟県の米菓メーカーだ。(2019年の統計資料より)
米菓メーカーを取り巻く環境は、燃料費や原材料の高騰や人材不足などの厳しい状況の一方で、新潟県内の米菓メーカーが相次いで新しい取り組みに乗り出している。県内米菓メーカーの米を活かした新事業や新商品開発の動きを追った。
新潟県産米でつくる米粉麺専門店「たねや」を相次ぎ出店、阿部幸製菓株式会社(新潟県小千谷市)
人気商品「かきたね」や「柿の種オイル漬け」などを製造する阿部幸製菓株式会社(新潟県小千谷市)は、米粉麺を提供する米粉麺専門店「新潟うどん たねや」を相次ぎ出店した。
今年1月、小千谷市総合産業会館サンプラザ内にて1号店の出店を皮切りに、4月には道の駅ながおか花火館にて2店舗目を出店。5月には、新潟市中央区の万代シルバーホテルにグランドオープンしたBANDAI FOOD HALLにて、3店舗目の出店を果たした。わずか5ヶ月の期間で3店舗を出店したことが話題となっている。
なぜ米菓メーカーが米粉麺専門店の展開をするに至ったのか。そのきっかけは、ベトナムで75年続くフォー専門店「PHO’MINH(フォーミン)」との出会いだったという。フォーミンが提供するフォーの美味しさに感動した阿部幸製菓の阿部幸明専務取締役が、「こんな美味しいフォーを日本でも提供したい」と考え、その熱い想いがオーナーに通じ、2020年12月に世界2号店となる「PHO’MINH下北沢店」(東京都)をオープンさせた。
その後阿部幸製菓は、PHO’MINH下北沢店で培った技術を活かして、新潟県産の米で米粉麺を作れないかと発案。試行錯誤の末、100パーセント新潟県産の米粉で作る稲庭風の細麺のうどんが完成し、米粉麺専門店「新潟うどん たねや」の展開に動き出した。
阿部専務取締役は、「日本の食料自給率の低さやコメ離れが進む中、新たな日本の食文化の一つとして米粉麺を広げていきたい。全国を見ても、お米の麺専門店は珍しいと思う。『新潟うどん たねや』を通じで、米粉麺のすばらしさを伝えていきたい」と話した。
「BEIKA Lab」本格稼働から1年、多様化するニーズへの挑戦。岩塚製菓株式会社(新潟県長岡市)
今年で創業75周年を迎える岩塚製菓株式会社(新潟県長岡市)は、昨年に新工場「BEIKA Lab(ベイカラボ)」を設立し、4月から本格稼働を開始した。おせんべいやおかきなどの一般的な「米菓」にとどまらない「米の可能性」を追求した新ジャンルの商品開発に取り組んでいる。
現在までに「BEIKA Lab」で開発されたのは、米粉クッキーの「スノーカ」、ぬれたおかきをチョコでコーティングした「チョコロモ」、まるでグミのような食感をもつ「ちびぬれおかき」の3商品。すべて国産米粉を原料にしており、これまでの米菓の概念を超える商品を誕生させた。「BEIKA Lab」で開発した商品は、販売数量や期間を限定した試験販売とし、顧客の声や反応を見ていきながら今後の商品展開を検討していくという。
これまでの米菓の枠にとらわれず、米の新たな可能性の創造に挑戦する背景には、多様化している顧客のニーズをとらえて商品を届けていきたいという思いがある。
岩塚製菓はこのほどファンサイトを立ち上げ、フォロワーから商品について意見を聞く顧客参加型のWEB会議を開催した。参加者から上がった意見を実際に取り入れ、約半年後に商品リニューアルを行うなどの取り組みを行っている。
顧客のニーズをとらえ商品開発に活かす取り組みについて、岩塚製菓ソーシャルコミュニケーション室の中静幸徳室長は、「WEB環境が整ってきたことにより、固定のエリアだけではなく、色々な地域で生活している人たちとコミュニケーションがとれるようになった。また、コロナ禍による生活シーンの変化により、購買スタイルも変わった。データだけではなく、生の声を聞いてニーズをとらえていきたい。先行きが不透明な時は、お客様の声を聞くのが一番」と話した。
輸入小麦の価格が高騰し米粉への注目が集まる中、米どころ新潟が誇る米菓メーカーは、米の新しい価値創造を目指し挑戦を重ねている。日本の「食」を取り巻く環境が厳しい状況の今こそ、「米の新しい価値」が新潟から生まれ、全国や世界に広まることに期待したい。
(文・中林憲司)
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