新潟県長岡市を中心に地方創生DXの「実装」に挑む、株式会社KUNO(東京都)の佐藤傑(さとうすぐる)代表取締役
地方自治体やIT関連企業などが連携して取り組む地方創生DX(デジタルトランスフォーメーション)。コロナ禍がもたらした人々の行動変化、加速する人口減少、少子高齢化問題など地方をとりまく課題の解決には、テクノロジーを活用したDX推進は必要不可欠だ。その一方で、実際地方へDXを浸透させることは、費用面や人材面などさまざまな「壁」が現れ、推進に苦慮する自治体は多いと聞く。
そんな中、新潟県長岡市で地方創生DX推進を精力的に行い、地域の課題解決や新たな価値創造を目指す株式会社KUNO(東京都)の活動が話題となっている。KUNOが手がける取組みやDX推進への思いについて、KUNOの佐藤傑(さとうすぐる)代表取締役に現状と今後の展開などを聞いた。
長岡の基盤を活かし、DX推進活動を本格化
1974年、新潟県長岡市生まれの佐藤傑代表取締役は、明治大学理工学部を中退後、フリーエンジニアとして活動を開始。2009年にはAndroid研究会「Kunoichi」の立ち上げや、アスカ・クリエイション株式会社(東京都)にて執行役員を歴任。その後数社を経て、2014年8月にKUNOを設立した。現在、コンサルティング業務、システムエンジニアリングサービス、受託開発などを手がけている。
佐藤代表は、2019年に新潟県下自治体と連携した「データ活用ワークショップ」を実施するなど、新潟県での地盤を築いてきた。2020年9月には新潟県長岡市内のオープンコラボスペース「NaDeC BASE」(新潟県長岡市)にKUNO長岡支店を開設。2021年5月には、経済産業省「J-Startupプログラム」の地域版である「J-Startup NIIGATA」の20社に選定された。
今年2月には新潟アルビレックスBBを運営する株式会社新潟プロバスケットボール(新潟県長岡市)と共同開発した「顔パス 入場管理システム」を導入。4月には株式会社アウトソーシングテクノロジー(東京都)と連携して取り組む新潟県内DX推進事業の発表など、長岡市を中心とした活動に注目を集めている。
全国水準のテクノロジーを新潟仕様にチューニングする
KUNOは新潟県内のDX推進において、自社サービスの提供にとどまらず、さまざまな企業や団体と協業するアプローチをとっている。
新潟アルビレックスBBが導入した「顔パス 入場管理システム」は、KUNOが東京の企業が開発した技術を選定し、新潟アルビレックスBB向けにチューニングを行った。
また、現在アウトソーシングテクノロジーと連携して取り組んでいるDX人材育成事業においても、同社が他県で行っているDX人材育成事業を、新潟の今の事情に合うように調整して、導入を進めているという。
佐藤代表は、「全国水準、世界水準のテクノロジーを僕らが目利きし、良さそうなものを新潟に持ってくる。それを新潟に合うように少しカスタマイズしたり、チューニングしたりして導入していくことで、DXを新潟に浸透させていくという動きをしている」と話す。
長岡の強みを活かす「DX人材育成」
「技術系の大学や高専があることが、長岡の強み」と佐藤代表は話す。長岡市には長岡技術科学大学や、長岡工業高等専門学校があり、県外や海外から人が集まっている。長岡には若い時からテクノロジーを学べる環境があり、県や長岡市もエンジニアが育つ環境づくりに力をいれている。
KUNOは学生を対象としたセミナーを開催するなどの交流する機会を持ち、DX人材の育成に取り組んでいる。
DX人材育成事業のベースとなるのは、KUNOが東京で行っていたGoogleクラウドのパートナー企業としての活動。Google社の技術をコアとした開発やコンサルティングを行う株式会社トップゲート(東京都)と業務提携を結び、Googleクラウドのエンジニアを長岡に育成する取組みを行っている。今後、Google社と連携したイベントを長岡で計画していることも明らかにした。
佐藤代表は、「(企業や団体と)どんどん協業して新潟に引っ張ってきたい。長岡にはまだDXの市場がない。市場を作らないと企業の誘致も進まない」と話す。DXの市場づくりから視野に入れ、DX人材育成やサテライトオフィスの誘致に取り組んでいる。
地方の課題がテクノロジーを輝かせる
KUNO佐藤代表は、世界水準のテクノロジーを目利きし、新潟の地域課題に合う形にチューニングして実装する。さらに、人材育成に力を入れDXの市場を活性化させて、持続可能なDX社会の実現を目指す。
佐藤代表は地方におけるDX推進を「ドラえもん」に例えて説明した。
「ドラえもんはどんなに良い道具を持っていても、課題を出してくれるのび太君の存在がいないと輝けない。テクノロジーによって課題を解決し、便利にするのは地方だと思っている。ドラえもんとのび太君のような関係性をつくって、課題を解決していくストーリーを、新潟でつくっていきたい」と語り、笑顔をみせた。
テクノロジーが詰まった“四次元ポケット”と、広いネットワークを持った佐藤代表が新潟の未来のために奔走する。
(文・中林憲司)
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