三井物産を退社し新潟にUターンし新潟今昔写真やコンサル会社を立ち上げた 中央ビルディングの富山聡仁代表取締役
「ありがとう万代口駅舎惜別プロモーション」。新潟駅前の万代広場整備に伴い、まもなく駅舎の撤去工事が本格的に始まることを受け、新潟市とJR東日本が今年9月から行なっている一連のイベントだ。新潟駅思い出写真展のほか、イベントなどが随時開催されている。
この写真展の監修に協力したのは、一般社団法人新潟今昔写真(新潟市中央区)。代表理事の富山聡仁さん(40)は、2015年新潟にUターンし、現在、新潟今昔写真代表理事に加え、不動産管理を手がける中央ビルディング株式会社(新潟市中央区)、コンサルティング会社の株式会社NEPPU JAPAN(新潟市中央区)の代表取締役なども務めている。
富山さんは1980年生まれで新潟市の出身。早稲田大学を卒業後、三井物産株式会社に入社。経理業務に2年間携わった後、鉄鋼部門で事業投資や海外輸出の業務に従事した。また2012年4月から14年3月まで財務省関税局に出向し、課長補佐としてODAの業務などにも携わった。「仕事では大変な思いもしたが、その国の発展の礎にもなる仕事であり、海外の方々に喜んでもらえたときには嬉しかった」(富山さん)と振り返る。
ただ、「仕事で大変な思いをするなら、もっと身近な人や場所のために頑張ってみたい」(同)と考えるようになり2015年に新潟にUターン。中央ビルディングに入社する一方、自身の経歴や関心事を活用し、新潟の活性化に貢献する活動も始めた。
数字から企業の課題を分析してコンサルティング
その一つが、2016年1月に設立したコンサルティング会社のNEPPU JAPANだ。「東京で学んできたこと(経理など)を地元に還元したい。(新潟経済を担う)地元企業を支援することで還元できるのではないか」という思いで設立した会社だ。三井物産での経験、新潟に帰って来る前に通っていた実践的なMBA(経営学修士)の「グロービス経営大学院」で習得したことを生かし、建設関連、個人飲食店、農家など様々な企業・事業主のコンサルティングを行なっている。
具体的には、管理会計(※)で、商品の売れ筋・死に筋・利幅などを測定し、経営の改善をサポートしている。「数字から見えてくる課題解決を経営者などと一緒に考えています。『この商品は売れているが利幅が少ない。もう少し価格を上げてみましょう』『この商品は死に筋商品だから減らしましょう』などといった具合です」と富山さんは話す。さらに続けて「管理会計ができていない中小企業は多く、もったいないと感じています」と感想を語っていた。なお企業と直接契約でコンサルティングを行うだけでなく、商工会や中小企業庁などの派遣制度を使ってコンサルティングを受けることもできるとそうだ。
(※)会社が内部で管理を行うための会計。経営者などは管理会計上の会計情報をもとにして、経営意思決定を行ったり、原価低減や業績改善のための施策を講じたりする。
写真を通じて新潟を知る
2016年6月には新潟今昔写真も立ち上げた(社団法人登記は2019年3月)。「写真は子供の頃に『新潟わが青春の街角』(昭和28年5月8日から昭和45年11月18日までの99点の白黒写真集)を見るのが好きでした。本を見て、(中央ビルディングを経営していた)祖父母や両親が、どんな思いで街で暮らし、仕事を通じて街の発展を支えてきたのかを想像していました」(同)。
こうした写真好きが高じて、昔の新潟市の写真を集めて活用する「新潟今昔写真」の活動を始めた。開始当初は、昔の古町の写真を持ちながら、その撮影場所を撮り歩くイベントを団体独自で行っていたが、次第に企業とタイアップするようになり、新潟三越、新潟伊勢丹、サントピアワールドなどと共同で、古い写真をもとに、その撮影場所の“今”を撮り歩くイベントも開催している。
収集した写真の点数は数千点。その一部は、新潟今昔写真のSNSやスマホアプリで見ることができるほか、商用やホームページ掲載用などに写真を貸し出すサービスも行っている(1枚3,000円から見積)。「SNSに掲載している写真だけでなく、『こんな写真ありますか?』という問い合わせがあれば、そのニーズに近い写真を貸し出すことも行っています」(同)。
「写真を見て若い世代の人たちに昔の新潟を知ってもらいたいと考えています。また、不動産という仕事柄、(ディベロッパーには)新潟の歴史を知ってもらい、その歴史を踏まえた上で、古い建物をリノベーションしたり、再開発ビルのデザインに歴史を感じさせる意匠を取り込んだりするなど再開発を行っていただければ、新潟特有の歴史を生かしたいい街になっていくだろうと思います」(同)。