120年の相撲部歴史上初の女子部員誕生、新潟県立海洋高校1年の入江夏希さん

入江夏希さんと海洋高校相撲部員

新潟県内の高校生では、ただ1人の女子高生が新潟県糸魚川市にいる。それは、全国大会常連の名門相撲部の部員であるということだ。マネージャーではない。その女性、新潟県立海洋高校相撲部の入江夏希さん(1年)は地元糸魚川市出身で、約120年の歴史がある海洋高校相撲部史上初の女子部員だ。全国大会での活躍を目指し、日々練習に汗を流している入江さんに相撲を好きになった理由や今後の目標などを聞いた。

入江さんは、保育園のころに相撲大会があり、それ以来相撲が好きになったという。小学1年生のころから女子大会に出場して優勝していた。小学6年生になると、女子で相撲を取る人がいなくなり、男子と対戦したが、男子が十数人いたうち2位になったこともある。

「相撲が好きな母親の影響で、家では大相撲の放送がいつもテレビで流れていたので、幼いころから自然と相撲が好きになった。大相撲では大関・正代関のファン。すべて好きだが、特にあのやる気のなさそうなところがいい。技術は誰にも負けないので、横綱になってほしい」と笑う。

市立糸魚川中学校時代は陸上部と水泳部に入部した。高校入学は、ほかの県外出身の男子部員は推薦入学が多いが、最初から海洋高校相撲部に入部するつもりで、一般入試で入学した。両親は最初反対だったが、「私は何も言っていないが、親が『自分の道は自分で決めなさい』」と言われ、入部が許された。

「相撲が楽しく、練習についていくのが面白い」という入江さん。土曜日、日曜日に小学生が来る際に男子小学生と組むことはあるが、部活では男子部員とは組むことはない。キャプテンの石本龍士(りゅうじ)選手の胸を借りて、前に押し込む練習が主だ。午後16時半から18時まで、月曜日から日曜日のほぼ休みなく練習し、ゴールデンウイークもすべて練習だったという。県外出身の部員が多いため、休みはまとめてとるという。

入江さんは身長170センチと体格にも恵まれている。「軽量級、中量級、重量級に分かれているが、女子の全国大会に出場して軽量級で優勝したい。大学でも女子相撲が強いところで続けたい」と話した。

海洋高校相撲部の田海(とうみ)哲也総監督は「メンタルの部分で一番大切な『相撲が好き』という部分が才能だと思う。最初は親も大反対で、私も反対だったのが、やってみると男子の練習についてくるし、自主的に朝早く登校し、道場の掃除や朝の自主練習にも出ている。入江は本当に一生懸命で前向きだ。私は子供がいないが、神様が娘を授けてくれたという気持ちで見ている。女子の全国大会は高校、大学、社会人が一緒になる。上位は体ができていて、アスリート的な人が多い。入江は身体能力も学習能力も高いので、ゆくゆくは全国大会でも上位を目指したい。また、その上に世界大会もあるので、目標を高く持たせたい」と話した。

ちなみに、いまだに東京都両国にある国技館の土俵には女性は上がれない。実際、小学生のわんぱく相撲の男子大会は国技館で行われるが、女子は東京都大田区体育館などで行われるという。また、海洋高校は前身の県立能生水産高校時代は途中まで男子校だった。市外県外から生徒が集まる海洋高校相撲部の出身者には、現在大相撲の幕下に位置する王輝などプロ力士も多い。海洋高校相撲部の道場に女子が入ったことについて、自身も能生水産高校相撲部出身である田海総監督は「新しいページが始まった」と語る。

田海総監督は「入江は男の子に生まれてきた方が良かったのではないか」と笑うが、確かに入江さんは将来、大器になりそうな雰囲気を持っている。全国大会で輝く日もそう遠くないかもしれない。

男子部員を相手に練習に励む

まわし姿の入江さん

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(文・梅川康輝)

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