【特集】「エネルギー王国新潟」(下)新潟東港周辺のエネルギー会社
この特集の(上)で、新潟東港周辺に発電施設が集積していることを紹介したが、新潟東港周辺には、それ以外にもエネルギー関連企業が多い。具体的には、米国の大手証券会社、ゴールドマンサックス系列のジャパンリニューアブルエナジー株式会社、米国副大統領がCEOを勤めたこともあるグローバルエネルギー会社・ハリバートン、国内企業の石油資源開発株式会社などだ。
ジャパンリニューアブルエナジー株式会社(東京都)は、新潟市が志向のほど近くで、約1,600万キロワット(4,400世帯)のメガソーラー「海辺の森ソーラーパーク」を運営している。
土地は新潟県の県有地で、平成26年6月に賃貸借契約を行って、もともと雑木林だったところを整備し、メガソーラーを設置した。共同運営している株式会社キタック(新潟市中央区)取締役の関谷一善環境技術センター長は、「ソーラー発電は広さで発電量が決まってしまうので、遊休地が多い新潟県は展開しやすいのではないか」と話し、続けて「意外に新潟市は日照時間が長いことも理由だろう」と語っていた。
雪が落下しやすいようソーラーパネルには20度の傾きをつけている。関谷環境技術センター長は、「資源エネルギー庁では、新潟県は20から30度の傾きが効率がよいのではないかと言っている」と解説する。
米国本社の多国籍企業であるハリバートンは、新潟市北区にハリバートン・オーバーシーズ・リミテッド新潟ベースという日本国内唯一の事務所を構えている。今回米国が取材窓口ということで取材はしなかったが、関係者によると、同社の主要営業部門は石油と天然ガスの探査及び生産設備を製造することだといい、石油を掘削するために井戸を掘るための道具を取り扱っているという。
一方で、石油資源開発は、東港付近に東新潟ガス田(=記事トップの写真。新潟鉱場、新潟鉱場K基地、新潟鉱場N基地がある)を有する。
石油資源開発は、新潟県長岡事務所があり、同事務所が管轄する5つの油ガス田が、天然ガス、原油ともに全国ベースの生産量で約30%を占めるなど存在感がある。同社の2019年の年間生産量を見ると、天然ガスは6億立米(りゅうべい、立米とは体積を表す単位)。全国の年間生産量では25憶立米で、石油資源開発の長岡事務所管轄では新潟県の33%、全国の26%を占めていることになる。
その大半は、新潟県小千谷市の片貝ガス田で生産しており、次いで東新潟ガス田となっている。生産量を1日平均にすると、約90万世帯分となり、これは新潟県の世帯数に匹敵する数字だ。
また、新潟県内における石油資源開発の2019年原油の年間生産量は17万キロリットルで、新潟県の48%、全国ベースの33%を占めている。その過半は、胎内市沖にあり、現存する国内唯一の海底油田・岩船沖油ガス田で生産している。年間生産量は1日当たりでは500キロリットルで、ドラム缶換算でいうと2,500本分ということになる。
石油資源開発長岡事業所の南波智総務部長は「東新潟ガス田は昭和34年から生産を行っており、生産開始からすでに60年が経過しているが、貴重な国内資源として1日でも長く生産できるように管理していきたい」と話す。
石油資源開発では、新潟県内を含む国内の石油・天然ガス生産量は生産による減退があるものの、今後の生産量の維持と増加を目指した検討や対策を進めているとしている。現段階では新潟県内での新規開拓はないというが、既存の油ガス田での生産量拡大を目指すという。
また、全社的には2020年に福島県で天然ガス火力発電所の運転を開始したほか、北海道苫小牧市にメガソーラーを設置するなど再生可能エネルギーへの展開にも着手している。
今回の特集では、3回にわたり、新潟東港周辺を中心としたエネルギー関連企業を取り上げた。特集では掲載しなかったが、新潟県阿賀野市や柏崎市が地域エネルギー会社の設立に向けて動き出している(記事)。大規模災害などで「エネルギーの地産地消」の重要性が再認識されている中、今後も新潟県のエネルギー産業の動向に注目していきたい。
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(文・梅川康輝)