【特集】一正蒲鉾株式会社のキノコ事業など新潟関連企業の隠れた事業などを探る
一正蒲鉾株式会社(新潟市東区)のキノコ事業、株式会社コロナ(新潟県三条))の健康器具、デンカ株式会社(東京都)の電力発電……。企業の一般的イメージとは異なる事業や取り組みをしている新潟県内関連企業がいくつかある。新潟関連の企業の隠れた事業などを探った。
実はマイタケの売り上げがキノコ業界3位の一正蒲鉾株式会社
国内キノコ業界では、株式会社雪国まいたけ(新潟県南魚沼市)とホクト株式会社(長野県長野市)の知名度が圧倒的だが、実は水産練製品大手の一正蒲鉾株式会社もマイタケを生産・販売しており、その売り上げは前述2社に次いで業界3位を誇る。
一正蒲鉾のキノコ事業のきっかけは1996年、先代社長の野崎正平氏が一時的に伸び悩んだ水産練製品事業に並ぶもう1つの柱を模索するなか、当時の健康ブームもありキノコ栽培に着目したことに始まる。
一正蒲鉾では、マイタケを一般向けにはパック販売と箱詰めでの販売をしているが、その端材として出る一部は加工・業務用に販売しているほか、自社サプリメントの原料にも利用している。また、2022年4月には新品種であるクリーム色のマイタケ「希なり」を販売開始するなど、現在も新たな商品開発と顧客の開拓に挑む。
一正蒲鉾キノコ事業の今後について、雪国まいたけとホクトという2大企業が君臨する中で「量的に増やしていくことはないと思う」とESG推進部の小森道夫部長は話す。生産量や価格よりも、キノコの持つ機能性にスポットを当てる。
「『希なり』は色以上により高いビタミンD含有量などといった機能性が特徴。人々の豊かな生活、人生の質の向上には絶対的に貢献できると考え、会社としても熱い期待をもって進めている」(小森部長)。
「水と空気」の得意領域を独自の開発力で拡大、美容・健康器具を展開する株式会社コロナ
暖房機器や空調、住宅設備機器などの製造・販売を手がける株式会社コロナは、意外にも美容・健康機器の製品も展開している。
美容・健康器具の展開は、コロナの主軸事業である暖房、空調、住宅設備(給湯)が全て「水と空気」に関係しているところに関係する。「水と空気」に関する新たな領域として、「アクアエア事業」をスタートさせたことがきっかけという。
コロナは2008年に「アクアエア事業」初の製品として、マイナスイオン発生技術を活用したナノミストサウナ「ナノリッチ」を発売。その後、2011年に家庭用加湿器の美容健康機器「ナノリフレ」、2012年には業務用の多機能加湿装置「ナノフィール」を発売した。家庭用機器のみならず、介護福祉施設、スポーツ施設、教育施設、オフィスなど幅広いシーンで活用できる製品を展開し利用されている。
コロナが開発する美容・健康器具の特徴は、独自に開発した世界初の「マイナスイオン発生技術」を用いている点だ。「マイナスイオン発生技術」とは、回転する金属網に水を衝突させる方式により、水分100%のマイナスイオンである「ナノミスト」を発生させる技術で、一般的なスチーム式加湿とは異なり、水ぬれ感のない加湿を実現する。
今後の美容・健康器具の展開についてコロナは、「ナノフィールについては、空気環境への衛生意識に対する関心の高まりを踏まえ、介護福祉施設などで一層の販売拡大を図りたいと考えている」とコメントした。
水力発電を中心とする再生可能エネルギーの拡大を目指すデンカ株式会社
一方、デンカ株式会社はカーボンニュートラルの達成を目指し、水力発電による工場などへの電力供給を行っている。
クリーンエネルギーの歴史は、約100年前に遡る。1921年、最初の自家用水力発電所となる小滝川発電所から青海工場へ電力を供給したのがはじまりだ。その後、各所に水力発電所を建設し、現在は北陸電力株式会社とデンカの共同出資である黒部川電力株式会社の建設したものを含め、17か所の水力発電所が稼働している。最近では、2021年1月に新青海川発電所が、そして最も新しいのが2022年4月に運転を開始した新姫川第六発電所。今後もカーボンニュートラルの実現に向けて、太陽光発電も含めた再生可能エネルギーの拡大に取り組んでいくという。
デンカは、社会や生態系が将来にわたり存続可能な環境を維持するために、2050年度までにカーボンニュートラルの達成などを目指しているという。その実現に向けた1つの取組みが、水力発電を中心とする再生可能エネルギーの拡大だ。
化学工業製品の製造には安定した電力の確保と効率的な利用が重要で、先人から引き継ぐ水力発電の取り組みは、デンカを支える貴重な経営基盤になっているという。また、水力発電は、地球温暖化対策として期待される再生可能エネルギーを生み出す大切な経営資源でもあり、デンカの強みである再生可能エネルギーを活かし、カーボンニュートラルの実現を目指していく考えだという。
一正蒲鉾とコロナは、健康志向の高まりを受けての新規事業への進出と言える。関連事業が実はその業界上位にあったりするなど、企業の違った側面が見えてくる。将来的には大きな事業の柱に成長する可能性もあり、今後も注目していきたい。