【特集】上古商店街&沼垂テラス、新潟市のリノベーション商店街(上)

沼垂テラス商店街

リノベーション前までの歴史

新潟市の上古町商店街沼垂市場通りはともに、地域の歴史と住民に育まれてきた場所であったが、20世紀後半、地域住民の高齢化や大型商業施設の進出、都市機能が新潟駅周辺や万代エリアへ集中したことによって、衰退の道を辿っていた。しかし近年、この2つの商店街は地域住民の手によって蘇り、他の地域の商店街から復活のモデルとして注目されている。2回に渡り、この上古町商店街と沼垂テラス商店街を比較しながら見ていこう。今回は主に、商店街が生まれ、そして復活するまでの歴史に注目した。

各商店街については、上古町商店街振興組合理事長で「hickory03travelers」代表の迫一成氏と、沼垂テラス商店街の管理・運営を行う株式会社テラスオフィス専務取締役の高岡はつえ氏に話を聞いた。

古町は江戸時代以降には湊町、歓楽街として栄え、古町芸妓などの文化も生まれた。水質悪化により昭和39年、特徴的だった堀は全て埋め立てられ現在の西堀通などに変化したが、一方でこうした道路があらかじめ整備されていたことで隣接する商店街が残ることができたとも言える。

沼垂は新潟島ができるはるか以前、7世紀の文献にその地名の由来が求められるほどに歴史の長い土地である。酒や味噌を北前船で出荷したことから今代司酒造や峰村醸造のような蔵元も多い。現在の沼垂テラス商店街のある場所は堀を埋め立てた場所であり、かつては 「沼垂市場通り」や「寺町市場通り」と呼ばれ、地域住民や周辺の工場、旧沼垂駅へ向かう人々で賑わった。

 

地域住民による復活を遂げた商店街

上古町商店街のリノベーションが始まったのは2004年、当時の商店街の経営者たちが組合化した当初の目的は、アーケードの老朽化を修繕するためだった。国や新潟県、新潟市、商工会議所からの補助金を得るため「上古町まちづくり推進協議会」が有志によって結成され、数年間かけて勉強会やコンセプトの練り直しが行われていった。そうしたソフト事業への取り組みへの評価から、修繕費用や車歩道の整備の大部分を補助金で賄うことができたという。そのため、2008年にアーケード修繕と歩道の整備が終了した現在も、組合費や維持管理費などが近隣と比較して安価になっている。また迫氏は「それまで1番町から4番町の人たちが集まって話をするという機会はあまりなかった。2004年以降、“上古町”として動き始めてからは商店同士の交流が増えた」と話す。

上古町商店街振興組合理事長で「hickory03travelers」代表の迫一成氏

JR越後線の白山駅や新潟市庁舎、さらに信濃川を挟んで万代エリアがあるという立地条件でありながら、事業にかかるコストが少ないというメリットは、新潟市での起業を考える人々を惹きつけている。現在、1年間での新規出店は約5件で、組合に参加している店舗と家屋は合計で93件。入れ替わりもあるものの、空き店舗の数は非常に少なくなってきている。出店される業種は飲食店から雑貨屋、ゲストハウスなど多岐にわたるが、特に若い経営者による古着屋やアパレルショップが目を引く。上古町商店街全体としての誘致活動などは行っていないが、新潟市内の店舗から独立しようと考えている人が、出店のしやすさや成功事例が有ることに注目し相談に来ることもあると迫氏は語る。

沼垂テラス商店街のスタートは2010年。長屋正面に店を構える「大佐渡たむら」の料理人、田村寛氏が、寂れていく同地域に変化を起こすため、「Ruruck Kitchen」を開業したことに始まる。続けて2011年、オリジナルメイド家具、染め織り布、コーヒーの店「ISANA」がオープン。創業者の夫婦はともに新潟大学の出身で、この沼垂独特の雰囲気に惹かれたという。さらにその翌年、陶芸工房兼教室の「青人窯」が開く。リノベーション最初期はこの3店舗が中心となり活性化に努め、2015年4月、長屋の28店舗が揃い沼垂市場通りから「沼垂テラス商店街」への変化を遂げた。

株式会社テラスオフィス専務取締役の高岡はつえ氏

沼垂テラスは2020年9月現在、特徴的な長屋23店舗と周辺の5店舗で構成されている。長屋エリアの店舗は全て埋まっており、新たな出店は周辺の空き家や空き店舗を「サテライト店舗」としてリノベーションして行われる。出店のペースは1年に1店舗ほど。出店者は地元沼垂や新潟市内からの人が多いが、上記の「ISANA」店主夫婦のように県外出身者もいる。上古町と同様に誘致などは行っていないが、出店のコストが抑えられる点と、成功事例があり、起業家同士のコミュニケーションが取れる環境があるという点が出店者に評価されているようだ。

上古町と比較した際の沼垂テラスの特徴として、株式会社テラスオフィスが商店街を管理している点が挙げられる。テラスオフィスの立ち上げは2014年。最初に新店舗を出店した田村氏が代表を務めている。当初の市場店舗は組合によって管理されていたが、組合員が高齢化していたことや、組合規約による出店制限が課されていたことから、管理・運営と新規出店が難しい状況にあった。テラスオフィスはこの状況打破のため市場を全て買取り、一帯を統一したコンセプト・デザインのもとに再開発するプロジェクトを立ち上げたのである。沼垂テラスが持つ独特の雰囲気や景観が保たれ、積極的にイベントが開催されているのは、このテラスオフィスの活動によるところが大きい。

次回は、両商店街のコンセプトと力を入れる活動について取り上げる。

上古町商店街

 

沼垂テラス商店街

 

【関連リンク】
上古町商店街 webサイト
http://www.kamifuru.info/

沼垂テラス webサイト
https://nuttari.jp/

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