歴史的資産を活かした新拠点、新潟県佐渡市相川地区にまちづくり交流施設が7月に誕生

佐渡金山をはじめ、多くの史跡や歴史的建造物がある新潟県佐渡市の相川地区で、来訪者や地元住民のための交流滞在施設がまもなく完成する。場所は人気観光スポットで国の史跡である「北沢浮遊選鉱場」近くだ。

佐渡市が倉庫だった市有物件を改修し整備するもので、カフェや観光案内のほか移住者向け案内などの機能を有し、佐渡島内外の人が交流できる場所としての準備を進めている。

佐渡市のまちづくり拠点整備活用事業、まちづくり団体株式会社相川車座(新潟県佐渡市)が委託を受け着工

佐渡市が取り組む「まちづくり拠点整備活用事業」の一環で行うもので、施設の運営は相川地区でまちづくり活動を行う株式会社相川車座(新潟県佐渡市)に委託。外階段の整備など、一部は相川車座の自己資金を投入して進めている。1階は相川車座の活動拠点として観光案内や移住者支援などを行う窓口などを設置、2階には観光客や地元住民が滞在できるカフェを開設する。

2階のカフェ開設にあたっては、相川車座が、佐渡市で「Ryokan浦島」や「交流センター白雲台(市指定管理施設)」などを経営する(有)浦島(新潟県佐渡市窪田)に委託。店名を「北沢Terrace(テラス)」と名付け、北沢浮遊選鉱場跡の景観を楽しみながら滞在できるカフェとして、7月のオープンに向けて準備している。

 

「佐渡の未来を明るく照らす場所に」、有限会社浦島の間島万起人(まじままきと)氏

「北沢Terrace」オープンに向け、話をしてくれたのは有限会社浦島の間島万起人(まじままきと)氏。「北沢Terrace」のコンセプトについて間島氏は、「北沢浮遊選鉱場を照らし、相川や佐渡の未来を明るく照らしていけるような存在を目指したい」と話す。

北沢Terraceの特徴について間島氏は、「(店内から)北沢浮遊選鉱場の眺めは一つの特徴だが、『北沢Terrace』の名のとおり、周辺の芝生広場一帯をテラス代わりとして、天気が良いときはビアガーデンなども行いたい。また、子ども連れ大歓迎で、お子様も楽しめるようなスペースを造りあげていきたい。『Terrace』にかけ北沢のまちを照らして、ゆくゆくは佐渡の全体的な地域活性化につなげていければ」と話し、イメージを膨らませる。

また、カフェの出店を決断した理由について間島氏は、「ありがたい事に相川地域に住む方々の中には、浦島を利用していただける方が多く、その方たちから『北沢浮遊選鉱場跡の場所が活かされず勿体ない。できるなら浦島でカフェをやって欲しい』という切な要望があったので手を挙げさせていただいた」と出店の経緯を明かした。

間島氏は、「相川の地域の方たちも家族連れで利用できるような場所にしたい。観光客はもちろんだが、地元の人達に親しまれるような店舗にしていきたい」と話し、「まずは地元の方に喜んで欲しい」という気持ちを語った。

「北沢Terrace」は7月12日からプレオープンし、23日よりグランドオープンする。床面積は約49平方メートルで、座席数は20席。営業時間は11時30分から21時まで(ラストオーダーは20時)を予定している。(プレオープン中は時短営業の予定)

北沢Terraceの店内からは、国の史跡「北沢浮遊選鉱場を望める

北沢Terrace店内の照明器具には、佐渡の伝統工芸「無名異焼(むみょういやき)」を使用している

浦島観光(新潟県佐渡市)の間島万起人(まじままきと)氏

 

「佐渡島内外の人の交流の場にしたい」相川車座の岩崎元吉士(いわさきあきよし)代表

「北沢Terrace」と並行し、1階は相川車座のまちづくり活動拠点「KITAZAWA KICHI」(愛称キタキチ)の整備を進めている。相川車座の事務所のほか、観光案内所やコワーキングスペース、移住希望者などへの案内窓口を設けて島内外の人の「交流の場」としての活用を予定しているという。

相川車座の岩崎元吉士(いわさきあきよし)代表に「キタキチ」の機能について話を聞いた。岩崎氏は、「佐渡相川に興味がある人の駆け込み寺のような場所にしたい。たとえば、仕事を紹介したり、住む場所を探したりと、とにかく色々なことに興味がある人がここに来てくれれば地域にいる人とつなぐという役割を機能させたい」と話す。

相川車座は活動のスローガンに「人と人をつなぐ、人と地域をつなぐ」を掲げている。活動拠点が新たにできることで、よりスローガンを実現化できると期待を膨らませる。キタキチができることは観光客や移住者のみならず、地域の人にとってもメリットがあると考えているという。

岩崎氏は、「住民の人に対しては相川車座を身近に感じてもらいたいし、島外の観光客などには、より相川に興味をもってもらい好きになってもらうきっかけになって欲しい」と語った。

岩崎氏と同じく相川車座で活動し、施設の改修で設計や施工を担当している株式会社共立テクノ(新潟県佐渡市)の境伸幸建築課長は、「工事をしている間の数か月間、北沢浮遊選鉱場にいつも人が訪れていて絶えることがなかった。それを見て可能性が高い場所だなという事を実感した」と話す。

その一方で、地元の人はほとんど訪れていないという事もわかったという。境課長は、「この施設ができることによって、観光客プラス、地元の人が訪れて関わり、人のつながりができることが一番の可能性」と語った。

現在佐渡島は世界遺産登録についてとかく注目される。しかし、まちづくり会社「相川車座」は、外に対してばかり目を向けるのではなく、長期的な視点で地域との調和を図りながら丁寧に進めているという印象だ。新たに誕生するまちづくり交流施設「北沢Terrace」と「キタキチ」により、さらに力強く推進していくことを期待したい。

株式会社相川車座(新潟県佐渡市)の岩崎元吉士(いわさきあきよし)代表

株式会社共立テクノ(新潟県佐渡市)の境伸幸建築課長

北沢浮遊選鉱場(新潟県佐渡市)

(文・撮影 中林憲司)

 

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