「安吾として登場するってのは面白い」文豪ストレイドッグスの坂口安吾と新潟の作家・坂口安吾
「安吾 風の館」は、元は大正時代に第10代目新潟市長として柴崎雪次郎氏を迎えるにあたり建設された、歴代市長が居住・執務、そして重要な来賓を招く場として使用してきた公舎だ。現在は、新潟出身の作家・坂口安吾の記念館となっている。「安吾 風の館」は、坂口安吾の生まれ育った、新潟市中央区西大畑町にある。近くには、新潟市美術館(新潟市中央区)や、少し歩くと新潟県護国神社がある。新潟の文化面が強く出ている土地柄だ。
今回は、大人気作品「文豪ストレイドッグス」の登場人物として、「坂口安吾」というキャラクターが登場するのだが、当然本人ではないものの「安吾 風の館」としては、このキャラクターをどう思っているのか、またアニメの影響はあるのかなどを取材してきた。
「文豪ストレイドッグス(以下略 文スト)」は、昨年の秋に新潟市内で作品展が催されるなどの活動が行われた。文壇に上がった偉大な作家の名前を持つキャラクターが多数登場し、作中では小説の一節を使った描写など芸術的な演出がなされている。キャラクターのビジュアルも非常に人気のある作品で、全国的に多くのファンがいる。
坂口氏の実子であり、「安吾 風の館」の館長でもある、坂口綱男氏に文ストの反響を聞いてきた。坂口館長は、「(文ストの反響は)だいぶある。文ストから坂口安吾に興味を持って、イベントに来るってかたは多々いらっしゃる。特に女性のかたが多いですね」と所感を語ってくれた。続けて、文スト経由で坂口安吾に興味を持った人が居ることについては、「どんな形であろうと、(坂口安吾の作品を)読んでくれれば、とても嬉しいです。活字を読んで欲しいという気持ちはあるが、そうやって坂口安吾の存在が広がって行く事はとても喜ばしいことだと思う。(作品を視聴して)不思議な設定だなと思った。そこから人が流れてきて、安吾ファンとして定着してくれる子もいるっていうのは、驚きと喜びの両方がある」と述べた。
坂口館長はインタビューの中で、「作品っていうのはさ、坂口安吾を素材にして何かを表現するっていっても、表現者によってそれは全く変わっていくわけだから、こっちが好ましいとか好ましくないというのは別にして、作品ってのは1人歩きしていくわけだから、それを見ているのは面白いですよ」と語った。
ここ2年はコロナウイルスの影響で休止しているが、毎年、坂口安吾の命日である2月17日に、安吾ゆかりの地で坂口安吾に思いを馳せる催しが開催されている。年によって参加人数は違うが、だいたい約60人の安吾ファンが参加する。60人の中の10人くらいは、文ストから坂口安吾を知ったという参加者がいると坂口館長はいう。この話を聞いて筆者は現代にも、ちゃんと坂口安吾の息吹は生きていると感じた。
「どういう形にしろ安吾として登場するってのは面白いなって思う。昔から、安吾が漫画に出てくるってのはあったし、安吾の作品が漫画になるってのもあった。その中でも、文ストはちょっと異質だと思うけどね。キャラクターとして扱われてるからさ。何に興味を持って文ストを見ているのかはわからない。ただその中で、安吾に興味を持ってくれたら嬉しいと思う」と文ストに対しての坂口館長の気持ちを笑顔で語ってくれた。
文ストの作中では、キャラクターとしての「太宰治」、「織田作之助」、そして「坂口安吾」が「ルパン」というバーで酒を酌み交わすシーンがある。実際のエピソードをオマージュしたシーンで、実際に銀座の「ルパン」で酒を酌み交わしたというエピソードがある。フィクションではあるが、事実とリンクさせたシーンが挟み込まれているのも文ストの魅力だ。文ストのキャラクターに興味を持ったら実際にキャラクターのモデルとなった人物のゆかりの地を巡って思いを馳せてみるのも良いのではないかと筆者は奨める。
これからの「文豪ストレイドッグス」の展開と「安吾 風の館」に注目していきたいと思う。
(文・児玉賢太)