【連載】越後探訪1 新潟市秋葉区の石油の里と紅葉の名所
文化を感じ、落ち着いた休日を過ごす
10月31日土曜日午前8時、外の気温は14度を指している。朝の空気がひんやりして気持ちいい。深呼吸すると、冷たく澄んだ空気が胸いっぱいに流れ込んでくる。まもなく冬の訪れる晩秋。私が最も愛する季節、「文化の秋」だ。
文化とは年中私たちの側にあるものだが、なぜ秋という季節だけがそう呼ばれるようになったのか。諸説あるが、「秋は夜が長いので、明かりをつけて読書をするのに適している」という、中国の漢詩が起源だといわれている。これを漢文の素養のある夏目漱石ら近代文学の作家が取り上げることによって、大正時代には、読書の秋、芸術の秋といった概念が広まっていったそうだ。
文化は読書だけでない。食文化、歴史文化、四季を楽しむことも日本の趣ある文化の一つ。文化的活動とは「知的好奇心を満たすこと」にあると私は考える。そこで今回は、「知的好奇心をくすぐる大人の文化的休日」をテーマにおすすめのスポットを紹介する。
私が知らなかっただけで、新潟には興味深い場所がたくさんある。今回は新潟市秋葉区にあるスポットだ。
リニューアルオープンした「石油の世界館」
かつて旧新津市(現在の秋葉区)は日本一石油の町として栄えた歴史があり、石油の世界館周辺は今なお、当時の文化の面影が保存されている。
「石油の世界観」は、当時の秋葉区における石油文化だけでなく、石油の世界館として、石油にまつわる様々な展示物が展覧されている観光施設だ。この施設は、サウジアラビア国営石油会社の寄付により10月25日にリニューアルオープンしたばかりである。スクリーンに映し出される新たな映像資料などを更新した。入場料は無料である。
噂に違わぬ良い施設だ。今まで気にしたこともなかった石油の情報がどんどんと頭の中に流れ込む。リニューアルされた映像資料では、新津油田の歴史と、その発展を支えた「中野家」の歴史について深く知ることができた。同時に石油自体についての展示品や解説も数多くされており、「新津油田」と「石油」について余すところなく学ぶができた。
「近代エネルギー産業に大きく貢献した地域が新潟市秋葉区(旧新津市)にはあった」。新潟県に住みながらこの事実を知らないで過ごすのはあまりにも勿体ない。
秋しか見れない「石油王の館(中野邸記念館)」
石油の世界館から、数メートルのところに「石油王の館(中野邸記念館)」がある。先に少し触れた、日本の石油王とも呼ばれた「中野勘一」の邸宅が記念館となっているのだ。
この施設は、「中野家邸宅」とその庭園である「泉恵園(せんけいえん)」にわかれている。どちらも見所が多いので別々で紹介する。
門を潜った瞬間に明治時代の香りが漂う。囲いにより外界から遮断されているため、一層のこと現代とは違った空気感を感じるのだろう。
庭の紅葉はわずかに色づき始め、確かな秋の訪れを感じる。
邸宅内は埃っぽい懐かしい匂いがする。先客がいるのだろう。二階から響くギシギシとした足音もまた趣がある。縁側には座布団が並べられ、ゆっくりとくつろぎながら中庭を眺めることもできる。
多くの銘品や、文化的資料としての展示室など、見所はたくさんあるが、個人的には『日本らしい落ち着きのある空間』と『景色、景観』を五感で楽しむ事が醍醐味であると感じた。
ここには人それぞれの楽しみ方がある。
日本一の紅葉の名所とも噂される「泉恵園(せんけいえん)」
新潟県内屈指の紅葉の名所である「泉恵園」。「日本一の紅葉の名所」と太鼓判を押す人も少なくない。
スタッフは「ここには約2,000本の紅葉があり、ここまで本数が多いのはかなり珍しいことです。また、真っ赤なモミジ自体が珍しく、ここまで見事に紅く染まった紅葉を観ることができるのはとても凄いことだと思います。」と語る。
続けて、「ここは山地庭園なので土地に起伏があります。平坦な場所で見る紅葉も美しいのですが、それだと何故かのっべりとした印象になってしまう。起伏があることで、途端に景色に表情がつき、格段に雰囲気が良くなる。ここの紅葉が日本一だと噂されるのはこういったところにも起因しています。園内の『もみじ池』周辺でみる紅葉は全国でも一、二位を争うほどの絶品な景観です」と語っていた。
今回伺った時は、モミジ色づきも控えめであった。これはこれで「小さな秋」を感じることができ、とても愛らしい景色なのだが、一番の見頃は11月11日から15日の間だという。
泉恵園は土地が広く、紅葉の見所が段階的に訪れる。今週あたりから、山あいから徐々に色づき始め、園内の表情も日に日に変わっていく。それ故に比較的長期間に渡って紅葉を楽しめるのも泉恵園の特徴だ。時期をずらして訪れ、どの表情が好きか考えてみるのも、一つの楽しみ方かもしれない。
「日本一」とも言われる紅葉を、是非皆さんにも体験してほしい。私も、見頃になったらもう一度訪れようと思う。
登山客の憩いの場「里山ビジターセンター」
辺りを見回すと、やけに登山の格好をした観光客が多い。どうやらここには、文化館だけでなく、登山コースもあるようだ。
しきりに登山客が入っていく施設がある。「里山ビジターセンター」だ。今日は登山の予定はないが、折角なので職員さんに施設や、おすすめコースについてのお話を聞いてみることにした。
ざっくりと施設周辺の事を教えて欲しいと話しかけると、優しそうな女性スタッフが対応してくれた。「ここ『里山ビジターセンター』は登山客の案内所、休憩所のような施設です。登山案内やお知らせ、更衣室やトイレもあり、みんなが気軽に利用できます。お土産コーナーもあります。」と、丁寧に教えてくれた。
おすすめのコースを尋ねると、「この付近には菩提寺山、高立山、護摩堂山の三山あり、ここからの出発者は菩提寺山を登られる方が多いです。菩提寺山はいくつかのルートがあり、初心者から上級者まで、いろいろな方に愛される山です。初めてここらへんの山に登られる方は菩提寺山からがよいのではないでしょうか。今種来週と紅葉の見頃になりますし良かったら是非、登ってみてください」と、これまた丁寧に説明してくれた。
行楽の秋。登山なんて今までは考えたこともなかった。BBQは好きだが、他のアウトドアはめっきりだ。そろそろ大人なアウトドア「登山」を初めてみる頃合いなのかもしれない。
秋葉区は魅力あふれる文化の土地
秋葉区は魅力あふれる文化の街だった。今回紹介した場所以外にも、近くには県立植物園、新津美術館、弥生の丘展示館等、これまた好奇心をくすぐる多数の施設が点在する。秋葉区を余す事なくとことん楽しみたいなら泊まりがけの方が良いのかもしれない。近くには温泉もある。
秋葉区で行ってみたい場所はたくさんあるが、今日はもう日が暮れた。今回の休日も大満足だ。
石油の世界館
○料金 無料
○開館時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)
○休館日 毎週水曜日 ※祝日の場合はその翌日
ただし5月、11月は無休 年末年始(12/28~1/3まで)
○所在地 新潟市秋葉区金津1172-1
中野邸記念館
○料金 1000円 ※高校生以下無料
○開館期間 9/1~11/30
○開館時間
・9/1~10月最終火曜日 9:30~16:30
※泉恵園は入園が15:30まで、閉園が16:00
※記念館は入館が16:00まで、閉館が16:30
・10月最終水曜~11/30 9:00~17:00
※泉恵園は入園が16:00まで、閉園が16:30
※記念館は入館が16:30まで、閉館が17:00
○所在地 新潟市秋葉区金津598
里山ビジターセンター(石油の里公園)
○料金 無料(里山ビジターセンター及び古代館)
○開館時間 9:00~17:00
○休館日 毎週水曜日(水曜日が祝日の場合はその翌日。ただし、5月・11月は無休)と12月28日から1月3日
○里山ガイド
毎週土曜日と日曜日(12月から2月までの間は毎週土曜日のみ)に、秋葉里山ガイドの会の会員が里山ビジターセンターの館内や周辺を案内しています。
冬期間を除き土曜日の午前10時から1時間半程度でミニトレッキングをおこなっています。
その際のガイドは無料です。お気軽にご利用ください。
秋葉区と共催する「里山魅力体験」事業や、各種講習会を実施しています。
秋葉里山ガイドの会が実施する活動やトレッキングの予定については、秋葉里山手帖Web、里山ビジターセンターFacebookページでもご案内しています。
○所在地 新潟市秋葉区金津1193番地