【特集】新潟食品業界のキラーコンテンツ?代替食品市場参入の動き(下)——「きのこが持つポテンシャルを活かす」株式会社雪国まいたけ(新潟県南魚沼市)が代替たんぱく質などの事業化を目指す新規事業課を創設

(画像提供 株式会社雪国まいたけ)

きのこ製造販売メーカーとして国内トップクラスの生産体制を誇る株式会社雪国まいたけ(新潟県南魚沼市)はこのほど、「新規事業課」の設立を発表した。新規事業課で新たに取り組む事業は、「新たな代替たんぱく質」「加工食品」「茸関連」の3つの分野において製品開発を推進していく。

新規事業課の立ち上げについて、雪国まいたけ常務執行役員経営企画本部の櫻井威典(さくらいたけのり)本部長と、生産本部研究開発部で上席研究員兼新規事業課の加藤真晴(かとうまさはる)課長に話を聞いた。

 

海外市場を視野に入れたビジネスモデルに変えるため「4年間の基盤づくり」をスタート

昨年の11月に発表した中期経営計画の基本方針では「国内きのこ市場の更なる需要創造、及びグローバル展開するプレミアムきのこ総合メーカーへの進化」を掲げた。新たな事業領域の拡大においては海外市場への参入を視野に入れ、これまでのビジネスモデルを約4年間で変えるための基盤づくりを行うため、新たな分野での新事業を模索し始めた。

櫻井本部長は、「いろいろな可能性が見えてきた中で、代替たんぱく質、加工食品、茸関連の3つの分野に絞られた。新規事業を進める上では、核となる部署があった方がより早く他部署とも連携しながら推進できるということで『新規事業課』を創設した」と設立の経緯を話した。

また、きのこ由来の代替製品開発については、2020年9月の上場前から投資家からの関心が高く、待望する声があったという。

 

きのこ由来たんぱく質の強みは「豊富な食物繊維」

たんぱく質を多く含む食材というと、一般的には鶏肉や豚肉などの畜肉類や大豆などの豆類が挙げられるが、きのこ由来のたんぱく質は、それらとは一線を画す大きな特徴がある。それは、たんぱく質あたり食物繊維が豊富に含まれているという点だ。

たんぱく質あたりの栄養素について加藤課長は、「牛、豚、鶏などの畜肉は、脂質を多く含んでいる。一方で大豆などの豆類は、脂質は少ないが糖質が多い。それに対し、きのこのたんぱく質は脂質・糖質ともに少なく、一方で食物繊維がとても多い。たんぱく質あたりの食物繊維が多いということ、健康増進への価値が高い」と話す。

加藤課長は、高齢化が進み医療費が増えていく現状に加え、コロナの影響などで健康意識が高まっている昨今の日本において、健康価値が高い食物繊維を多く含むキノコ由来のたんぱく質に、よりニーズが集まるのではないかと期待を寄せている。

株式会社雪国まいたけ(新潟県南魚沼市)の生産本部研究開発部で上席研究員兼新規事業課の加藤真晴(かとうまさはる)課長

 

きのこが持つポテンシャルを引きだし、事業を多様化させていく

きのこ由来の代替たんぱく質製品の開発状況について、現段階では詳細な公表は行っていないが、試作段階まで進んでいる製品もあるという。

新規事業課の今後の展望や期待について櫻井本部長は、「きのこはいろいろなものに使えるという事が分かってきた。きのこが持っているポテンシャルを最大限引き出せるような展開を4年間でしていきたい。その次は、撒いた種を大きくさせて、事業を多様化させていく。ただし根っこは、『きのこ由来』というところにある」と話した。

加藤課長は、「きのこについて調べれば調べるほど、健康に良いことが分かってきた。多くの人に食べて欲しいが、その機会が少ない現状がある。きのこを食べていただく為の選択の機会を提供できればと思っている」と語った。

続けて加藤課長は、「新しい事業をつくることは苦労があると思うが、そこでこそ人は伸びると思っている。研究開発としては、めげることなく球を投げ続け、面白いと思ってやっていくことが大事だと思う」と話し、新規事業への思いを話した。

株式会社雪国まいたけ(新潟県南魚沼市)

今後雪国まいたけは、代替たんぱく質食品開発のほか、きのこを使った非食品系の製品開発も検討していくという。世界的に求められるSDGsへの取組みや、サステナブル社会の実現に向け、きのこ由来製品は大きな役割を担う可能性がある。

国内きのこ業界をリードする雪国まいたけの新規事業の動きは、今後ますます注目を集めそうだ。

(文・撮影 中林憲司)

【関連サイト】
株式会社雪国まいたけ(ホームページ)

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