新潟県村上市で「村上市・胎内市沖における洋上風力発電に関するフォーラム」が開催
新潟県は14日、村上市内で「村上市・胎内市沖における洋上風力発電に関するフォーラム」を開催した。
県では、村上市・胎内市沖における洋上風力発電の導入の可能性や課題について、「洋上風力発電導入研究会 村上市・胎内市沖地域部会」を設置して検討しており、その一環として地元の人々に洋上風力発電について広く知ってもらおうとフォーラム開催した。
フォーラムは3部構成で第1部では新潟県産業労働部産業振興課が、村上市・胎内市沖における洋上風力発電の検討について説明した。
それによると、風力発電は地球温暖化対策につながることに加え、地元経済へのメリットがあるという。具体的には、風力発電は、風車基礎、タワー、ブレードなどの発電設備の部品点数(約1〜2万点、※自動車の場合で約1〜3万点)が多く、関連産業への経済波及効果があるほか、メンテナンスや地元港湾の活用などが期待できる。また新たな税収も期待できるという。
こうした中、県では、村上市、胎内市、漁業関係者、海運業者、電力会社などで構成する「洋上風力発電導入研究会 村上市・胎内市沖地域部会」をこれまで3回開催。12月には第4回目を開催し、(再エネ海域利用法に基づく)導入促進エリアの検討を行うことになっている。
にいがた経済新聞編集部が今年9月に県に行った取材では、「安定的に提供するには地域住民や漁業関係者などに理解をしてもらう取り組みが必要だが、利害関係を調整したうえで、できるだけ早期に有望な区域への選定を目指している」と話していた。
有望な区域に選定された場合、協議会を設置し利害関係の調整を進め、促進区域の指定を目指す。さらに、その後、事業者の公募選定、事業者による環境アセスメントの実施、建設工事、運転開始と進んでいくことになる。なお一般的に有望な区域に選定されてから事業者の応募選定まで2年程度、事業者による環境アセスメントの実施から運転開始までは6〜8年程度かかる模様だ。
また景観調査も行っており、今回のフォーラムでは、フォトモンタージュも示された。
第2部は、東京工業大学 環境・社会理工学院准教授の錦澤滋雄氏が基調講演「風力発電事業における環境アセスメントと合意形成」を行った。
それによると、世界の再エネの導入は急激に拡大していて、2018年には1テラワット(原発およそ1,000基分)を突破したという。風力発電の占める割合も高くなっているが、日本ではまだ普及が進んでいないそうだ。中でも新潟県はポテンシャルの高さの割には導入が進んでいないことが紹介されていた。
ただ、風力発電は太陽光やバイオマス発電などに比べると、紛争の発生が多いという。特に野鳥(バードストライク)、騒音、自然保護、景観などの紛争が多いそうだ。
こうした中、紛争を回避しつつ合意形成するためには、「環境影響の低減(デメリットの最小化)」と「地域便益の創出(メリットの最大化)」をセットで考えることが合意形成では重要という。このうち、地域便益の創出では、売電収入の一部還元(売電収入の数%もしくは年定額を、地元の農林水産業、林道管理、地元の催事補助、温暖化対策、まちづくりなどに活用)など各地の事例を紹介していた。
なお第3部では、パネルディスカッション「洋上風力発電による環境や漁業への影響について~地域との共生を図るためには」が行われた。