五十嵐コンピュータープレス(新潟市西蒲区)が通知と遠隔操作機能を備えた宅配ボックスを発売
現代の生活スタイルに合致した新たな宅配ボックス
ネット通販の利用者や共働き世帯の増加、さらに今年は新型コロナウイルス感染予防対策として接触を減らすことができることから、宅配ボックスの需要が全国的に高まっている。そのような中、株式会社五十嵐コンピュータープレス(新潟市西蒲区)はスマートフォンのアプリ(スマホアプリ)を用いて遠隔操作できる宅配ボックス「IBOX」を開発し、販売に力を入れはじめている。
「IBOX」は、Wi-Fiとスマホアプリを使い利用者へ配達の通知を届けることが可能な宅配ボックス。荷物が配達された際、配達員は「IBOX」に荷物を入れた後、配送伝票を「IBOX」に差し込んで捺印することで鍵がかかる仕組みとなっている。スマホアプリで遠隔操作で解錠も可能なため、すでに荷物が入り施錠されている場合には、配達員が利用者へ連絡することで解錠することも可能である。価格は7万8,000円、選択できるカラーは「ガンメタ」「ブルー」「アイボリー」「ブラウン」の4色。
また、通知先は5人まで登録可能であり、荷物到着後に一定時間が経過しても取り出されていない場合は登録者や近親者へ再度通知が送られる仕組みのため、離れて住む高齢者の安否確認機能としても期待される。
「IBOX」へ繋がる精密板金の技術
五十嵐コンピュータープレスは1980年創業。創業当初はカセットデッキの型などの製造をしていたが、後に金型部門や溶接部門を開設、現在までに、アーケードゲームの筐体や歯科医で用いられる唾液吸引機など、様々な金属製品の設計から組み立てまでを自社内で対応できる生産ラインを確立している。さらに2019年10月には、洗浄、塗装、乾燥まで全行程を自動化した粉体塗装工場を新設。金属加工の最終工程である塗装を自社内で対応することで、さらなる品質と生産性の向上を狙う。
こうした金属加工と電子機器組み立てのノウハウを生かして開発されたのが「IBOX」である。開発のきっかけは2018年、大手電機メーカーからOEMで宅配ボックスの製造を依頼されたことだったが、当時は複数社が競合していたため辞退したという。しかし、自社の技術を活かす機会を諦めきれず、独自に商品開発を始めたと販売部の磯部晴和部長は話す。
開発へ乗り出したものの、単なる宅配ボックスの筐体では一日の長がある既存商品や大手企業の製品との価格競争に身を投じることとなってしまう。他商品と差別化できるオリジナリティを探っていた際、五十嵐彰代表取締役会長が発案したのが通信機能であり、奇しくも発売が今年の新型コロナウイルスと重なり、接触機会の軽減というメリットも注目されることとなった。
BtoCの新事業を新たな柱に
磯部部長は「今の集合住宅業界では、Wi-Fi環境、浴室乾燥機、宅配ボックスの3点が人気物件の要素となっている」と話す。現代はネット通販の拡大に反して生活スタイルは多様化しており、配達時間に都合を合わせなくても受け取り可能な宅配ボックスの需要は全国的に高くなっているようだ。さらに再配達の手間を軽減することは、利用者だけでなく運送業者の側から見ても多大な恩恵をもたらすとも考えられる。
そのため、五十嵐コンピュータープレスでは現在、県内住宅メーカーへの販売を中心に展開している。Wi-Fi環境があれば通信可能で、なおかつ電源は乾電池を使用していることから設置コストが低いことも強みの一つだ。また、取引先からの注文に合わせて塗装の変更や、壁への埋め込み用に両側に扉を設けるなど、カスタムにも力を入れている。こうした点は、設計から塗装まで自社内で対応可能な設備と、他の大企業にはできないフットワークの軽さを併せ持つ五十嵐コンピュータプレスならではと言える。
「IBOX」は今年7月から販売を開始しているが、今後もさらに改良を加えていく予定だという。直近では、アプリ側へアップデートを行い、遠隔で宅配業者へ集荷依頼をすることができるシステムを開発中である。
磯部部長は「これまではBtoBやOEMで商品を製造することは多かったが、今回の宅配ボックスは自社オリジナルの製品。目指すところはこの商品が弊社の柱の一つまで成長してくれること」と話した。現代のニーズを上手く反映したこの商品と事業が、企業の中でどのように成長していくのか注目だ。
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