「第6回食の新潟国際賞」の大賞は、中村哲氏、ペシャワール会、PMS(平和医療団・日本)が受賞
(公財)食の新潟国際賞財団は24日、食の分野で世界において多大なる貢献を行った人や活動を顕彰する「佐野藤三郎記念 第6回食の新潟国際賞」表彰式・受賞記念講演会が新潟市中央区で開催した。
中村哲氏、ペシャワール会、PMS(平和医療団・日本)が「大賞」を受賞し、食の新潟国際賞財団の池田弘理事長から、中村哲氏の長女の中村秋子氏、ペシャワール会会長の村上優氏に、表彰状、佐渡出身で文化庁長官の宮田亮平氏が制作したトロフィー、賞金(1,000万円)の目録が贈られた。
ペシャワール会前現地代表で、PMS(平和医療団・日本)総院長だった中村哲氏は福岡市出身の脳神経内科を専門とする医師。
1984年にパキスタンの北西辺境州(現パクトウンクワ州)の州都ペシャワールのミッション病院ハンセン病棟に赴任した。ペシャワールはアフガニスタン国境にあり、アフガニスタンからの難民が多く、難民診療のため1986年にジャパン・アフガン・メディカルサービス(のちのPMS)を開設。また2000年、アフガニスタンを襲った未曾有の大干ばつ対策として、飲料・灌漑用の井戸掘削を開始し、2008年までに1,600本の飲料用井戸、13基の灌漑用井戸を掘削した。
さらに2003年には、大河川の区ナール川から取水し用水路を建設することを決定。2010年3月、全長約25キロメートル(現在は27キロメートル)のマルワリード用水路を開通するなどした。この結果、2019年末には、1万6,500ヘクタールの灌漑を可能にし、約65万人の生存を保証したという。
だが、昨年12月4日、アフガニスタンの東部ナンガルハル州の州都ジャラーラーバードにおいて車で移動中に銃撃を受け、殉死した。享年73歳。
一方、食の新潟国際賞は、現在の「食の新潟」を築いた先人の情熱を継承し、新潟を世界に発信するため、県内産学官民の有志により2009年に設立された。食と農業の持続可能な世界を目指し、世界において食と農業分野での問題解決と発展に貢献した個人や団体を隔年おきに顕彰している。食と農業分野を対象とした国際賞は、食の新潟国際賞が国内唯一の賞という。賞には大賞のほか、「佐野藤三郎特別賞」、「21世紀希望賞」、「地域未来賞」(今回から新設)があり、今回、米粉パンの製造技術を開発し一般消費者の米粉・ホームベーカリー機器を実用化した矢野裕之氏などが受賞した。
賞の冠となっている佐野藤三郎氏は、新潟県の土地改良事業の功労者。1923年に現在の東区の小作農家に生まれ、1955年(昭和30年)に32歳の若さで亀田郷土地改良区理事長に就任。以来、「地図にない湖」とも表現され、農家の人々は水に腰までつかりながら田植えや刈り入れの作業を行っていた亀田郷一帯の乾田化、乾田化後の農業技術の確立に尽力した。
その後、1978年、亀田郷農民友好訪中団として北京に滞在していたとき、王震副総理(当時)から中国の三江平原の土地改良に手を貸してほしいとの依頼を受けた。依頼を受けたのは日中国交回復から7年後で、経済支援スキームはなかったが、佐野氏は日本政府に働きかけ竜頭橋ダム建設への30億円の円借款供与を引き出したという。
そして1988年に工事は始まり2002年に供用開始され、その後、灌漑面積は広がり豊かな農地への変貌を遂げた。