コジマタケヒロのアルビ日記2022 Vo.12トーマス・デン 「ワタシハトーマスデス」
僕が初めてゲーム形式の練習で彼のプレーを目にしたのは、7月12日。6対6のミニゲームだった。後方に陣取って、左右にパスをさばく。スッと上がったかと思えば、ズドンと鋭いシュートを決めてみせた。二度見するくらいの、それは、それは強烈な音。
「2週間くらい前からフルメニューを消化できるようになりました。けがの痛みもないし、積極的に、精力的にプレーできています。今のコンディションは70%といったところ。90%まで早く上げてチームの勝利に貢献できるようになりたいです。センターバックというポジションですが、上がっていくのは好きなので、ファイナルサードに行ってシュートも打っていきたいです。オプションとしてできる右サイドバックでの出場であれば、より攻撃的にプレーできると思いますよ」。
人懐っこい笑顔で取材に応えてくれたのが、背番号3、トーマス・デン選手だ。早く試合で見たい。どんな選手なのか、もっと知りたい。そんな思いから、翌週19日も話を聞くことにした。
「浦和にいた昨季、オリンピック期間中も含めて、ズームで日本語の勉強をしました。忙しい時期でしたが、チームメイトとスムーズにコミュニケーションを取れるようになるために頑張りました。日本語での自己紹介もできますよ。『ワタシハトーマスデス』(笑)」。
表情は先週よりも明るく、笑顔も多い。好きな日本食は、蕎麦と焼き肉。家では自炊をしていて、得意料理はバターチキンカレー。高木善朗選手と千葉和彦選手、イッペイ・シノヅカ選手にアレクサンドレ・ゲデス選手、ロッカーが隣の舞行龍ジェームズ選手とは英語でよく話していること。そのほかの選手とは、頑張って日本語でコミュニケーションを取っていること。終始笑顔で話した最後にこんなことを教えてくれた。
「7月24日の日曜日にトレーニングマッチの予定があります。そこに出場して、試合感を取り戻して、公式戦に備えたいと考えています」。
こう話してくれた週に行われた第28節・岡山戦(H/●2-3)で舞行龍選手がイエローカードをもらってしまった。結果、累積警告により、30日に行われる、第29節・長崎戦には出場できなくなった。同じくセンターバックの千葉選手もここ数試合、メンバーから外れている。田上大地選手と早川史哉選手がセンターバックとして出場したとしても、控えとなる3人目のセンターバックが現状見当たらない。否が応でもトーマス選手が!そんな気持ちから26日にも話を聞くことにした。
「チームにアクシデントがあって、残念ですが、トレーニングマッチはなくなったんです。けがを治す関係で、長い間、実戦形式から遠ざかっているので、まずはトレーニングマッチで試合勘を取り戻したいというのが希望でした。しかし、試合に出る、出ないは監督が決めること。行けと言われたら、そのときは……」。
同日、松橋力蔵監督はトーマス選手について、こう話した。
「正直、コンディションは万全とは言えません。でも、様子を見るとか言っていられる状況じゃないですし、トミー自身もそのことはよく分かっていると思います。試合の前日まで、いろいろと試して、判断してみたいと思います」。
チームが苦しいこの状況で、いよいよ秘密兵器がベールを脱ぐのか。あぁ、土曜日が待ち遠しい。