コロナ、物価高、円安はリユース業界にプラス?——時代の流れに乗り事業拡大に邁進する株式会社ハードオフコーポレーション(新潟県新発田市)
長引くコロナ禍、世界的な物価高騰、加速する円安——。トリプルパンチと言われるほど厳しい要素が重なっている日本において、生活に苦しむ消費者は少なくない。また、新潟県内の企業においては、コロナ関連の破たんが2022年7月までに50件に上ったほか、原材料や燃料費の高騰によるコスト増など、厳しい状況が続いている。
このような中、トリプルパンチをもろともせず堅調な業績を上げている会社が、リユース事業を全国展開する株式会社ハードオフコーポレーション(新潟県新発田市)だ。リユース業界においては、現在の社会情勢はプラスに作用しているのか? ハードオフコーポレーションの長橋健専務取締役に話を聞いた。
目次
◎コロナによる巣ごもり需要だけではない「世の中の流れ」
◎メルカリによるリユース市場拡大とエコ意識の高まり
◎海外店舗1,000店を目指すネクストステージへ
コロナによる巣ごもり需要だけではない「世の中の流れ」
ハードオフグループ全体としては、新型コロナウイルス感染により行動制限が広まった2020年のコロナ第一波が襲った4月と5月に売上が落ちたものの、6月以降はほぼ前年並みの売上に回復した。コロナ1年目の2021年3月度決算は、売上が前年比9.9%増の212億7,000万円、経常利益は前年比8.6%減の8憶8,600万円となった。
長橋専務は、「(2020年の)4月と5月は落ち込んだが、その後巣ごもり需要があり、(既存店売上高前年比は)年間トータルで微減に抑えることができた」と話す。
コロナ2年目の2021年は、売上は前年同月比を上回る月が多く、2022年3月期決算では売上高は245億700万円(前年比15.2%増)、経常利益は16憶6,800万円(前年比88.2%増)と、大幅な増収増益となった。
一見、コロナによる巣ごもり需要による好影響と思われるが、長橋専務はそれだけではないと話す。
「本やゲームソフトに関しては、コロナ1年目は確かに巣ごもり需要の影響があった。しかし、それ以外の分野においても好調であり、トータルで見たら極端に(巣ごもり需要の)影響を受けているわけではない。世の中の流れでリユース文化が広まってきたことが影響している」(長橋専務)と分析する。
メルカリによるリユース市場拡大とSDGsによるエコ意識の高まり
リユース文化が広まった要因の一つに、株式会社メルカリ(東京都)が運営するフリマアプリ「メルカリ」の登場がある。2013年に登場したメルカリは、個人が気軽に商品を売買できることから、年々利用者が増加。メルカリにより日本全体に中古品を売ったり買ったりする文化が浸透した。
その一方で、実店舗を持たないメルカリの登場は、ハードオフコーポレーションにとって脅威ではなかったのだろうか。
聞けばメルカリのサービスが広まってきた2016年ころから、ネットで売買する顧客が増えたことで、実店舗を持つリユース業界全体の売上が低迷したという。ハードオフコーポレーションにおいても例外ではなく、一時期現場は混乱した。
そんな苦しい時期を乗り越えて実店舗経営を地道に継続してきたことが、近年ようやく実を結んできたと長橋専務は話す。
「メルカリによってリユースの文化を、若者中心に広げてくれた。メルカリを使ってすごく良かったが、たくさん売ろうと思ったら面倒と感じる人などが、リアル店舗を持つ私たちに目を向けた。一時メルカリに流れた人の中でも、実店舗だと簡単に売ることができるという便利さを再認識してもらえた。今はメルカリによるマイナス影響はほぼなく、逆にリユース市場を広げてくれたことに感謝している」(長橋専務)と語った。
また、2015年に国連総会で採択された持続可能な開発目標「SDGs」により、エコ意識への高まりが広がってきていることも、リユース業界に及ぼす影響が大きい。
全国では、ハードオフコーポレーション以外でも、実店舗を持つリユース事業者が多く参入してきており、リユース市場には追い風が吹いている。
海外店舗1,000を目指すネクストステージへ
物価の高騰で原材料高に苦しむ業界が多い中、一般の人がいらなくなったものを自社の基準で買い取るリユース業界への影響は少ない。また、輸入もない為、直接的な円安の影響も受けることはない。
長橋専務は、「インフレによって、安いものを買っていらない物を売るという、生活防衛意識が高まっている。他業界にとっては厳しい外部環境でも、足元ではプラスに働いている」と話す。
また、ハードオフコーポレーションは海外においても店舗を出店し、現在、台湾、アメリカ、タイ、カンボジアで直営店5店、フランチャイズ店7店を展開している。その中でも、台湾とアメリカへの進出は、リユース文化の広まりの可能性を特に感じているという。
「アジアの中でも台湾は親日国ということで、とてもやりやすい。業績は好調で黒字となっており、3店舗目の出店も決まった」(長橋専務)と明かした。
さらにアメリカでの出店について長橋専務は、「アメリカでもリユース事業を行う会社はたくさんあるが、寄付で集めたものを販売する形態をとっている。不用品は寄付するのが当たり前という文化のアメリカで、1品ずつしっかり値段をつけて買い取る日本のようなスタイルはあまりない。とても喜ばれており、手ごたえを感じている」と話し、今後の可能性への期待を示した。
ハードオフコーポレーションは6月22日に開催した定時株主総会において、グループ店舗数の中長期目標を示した。
それによると、2022年6月22日現在で915店舗のところ、2025年3月期決算までに1,000店舗突破の目標を掲げた。また、長期目標としては、国内に2,000店舗、海外に1,000店舗の出店を目指すとした。つまり、国内では現在の2倍以上に店舗数を拡大し、さらに海外展開に力を入れ、海外の店舗数をグループ全体の3分の1にまで引き上げる計画だ。
時代の流れに乗り、かつ、厳しい外部環境をプラスにして邁進するハードオフコーポレーション。これからの展開に注目したい。
(文・撮影 中林憲司)
【関連サイト】
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