【特集】大手米菓メーカーでは唯一!? 国産米100%の米菓づくりを実現させている理由——岩塚製菓株式会社(新潟県長岡市)
米どころ新潟は、全国に流通する米菓メーカーが多数。売上高においては、全国ランキングの上位を新潟県の米菓メーカーが占めている。それらの米菓メーカーの知名度の高さは、米どころ新潟らしい特色の一つといえる一方で、多くの米菓メーカーは、製造コストなどの観点から原材料に「外国産米」を多く使用している現状があると聞く。
そんな中、国産米100%の米菓づくりにこだわる会社が、今年で創業75周年の岩塚製菓株式会社(新潟県長岡市)だ。なぜ、大手米菓メーカーの中では唯一といっていい国産米100%の製造を実現しているのだろうか?
岩塚製菓ソーシャルコミュニケーション室の中静幸徳(ゆきのり)室長に話を聞いた。
米菓の価格競争が激化「コメの風味が感じられない商品が出回っていた」
岩塚製菓が国産米100%に向けて、本格的に取り組み始めたのは2011年の6月からだったという。当時の主力商品32品目を国産米のみでの製造に切り替え、それから約3年後の2014年10月には、全商品を国産米100%での製造とし、現在まで継続している。
岩塚製菓が国産米への移行に取組み始めた時期、米菓業界に大きな変革があった。それが、2010年10月1日より施行された「米トレーサビリティ法」だ。生産から販売(提供)までの各段階を通じて、取引などの記録の作成や保存が義務付けられたことに加え、米の産地情報を取引先や消費者に伝達することが義務付けられた。この法律の施行により、米菓のパッケージには、米の産地が表示されることとなった。
しかし中静室長は、「(国産米100%への移行について)米トレーサビリティ法はきっかけの一つに過ぎない」と話す。
「たしかに米トレーサビリティ法のタイミングではあったが、当時の米菓市場は、価格競争の真っただ中で、安価で販売される場面 が多くなっていた。それによって製造コストを削っていかなければならなくなり、外国の米にシフトしていく傾向が業界であった。しかし、米の風味を感じられなくなるため、味付け重視になってしまう。(原材料が)米でなくてもいいような商品が多く出回った」と中静室長は話す。
価格競争の激化によって、米の品質が落ち、味付けでカバーする傾向が強くなってきたことで、中静室長は「米菓とスナックの区別がつかなくなってきた」と感じていたという。
国産米を使用する比率がもともと高かった岩塚製菓だが、米の風味がしっかり感じられる美味しい米菓を提供する為、国産米100%にする決断に至った。
「原料より良いものは出来ない」創業者の信念を守るための自助努力
岩塚製菓は国産米100%に切り替える以前から、国産米の比率は高かったという。それには、 創業者の平石金次郎氏と槇計作氏の信念を受け継ぐ会社の姿勢に現れている。
中静室長は、「創業者の言葉で、 『農産物の加工品は、原料より良いものはできない。だから、よい原料を使用しなくてはならない』というものがある。この信念のもと会社を興し、現在でも社員が受け継いでいる。これからも会社の文化として守っていきたい」と話した。
しかし現実的には、国産米を100%使用することで、当然製造コストは高くなる。美味しい米菓を作ることと、企業活動として利益を上げることを両立する為に行っていることは、たゆまぬ自助努力の継続だ。
「外国の米の方が間違いなく安く仕入れることができる。国産米のみで製造することで、他社より製造コストは高いと思うが、大きな製造ラインを持つ主力商品を中心に、生産効率を高めるように努力している」(中静室長)
岩塚製菓は、製造コストの増加をある程度許容しつつ、生産効率を高めるための改善を常に行うことで、国産米100%の生産体制を維持。創業以来培ってきた文化の継承 と、企業活動としての利益追求を両立している。
国産米でつくる米菓のおいしさをどう伝えていくか?
岩塚製菓は、国産米100%の米菓についての消費者への認知が低いと認識している。そのため、国産米を使った米菓のおいしさを、消費者へどのように伝えていくかが課題だという。
中静室長は、「消費者への意識調査を行うと、購買動機においては原料への関心を示す人が多くいる。しかし関心がある人でも、パッケージ裏面の原材料表示を見て判断することは、なかなか難しい。今後も小売業者様の賛同をいただきながら、『国産米米菓コーナー』などを作るなどをして、お客様が商品を選ぶときに買い求めやすい売り場の提案などを行っていきたい」と話す。
また最近では、オンラインイベントを行い、消費者の声を直接聞く機会を積極的に作っている。少子化による家族構成の変化、コロナなどによる生活スタイルの変化など、時代の変化にあった新たな商品づくりにも果敢に挑戦している。
原料にこだわる創業からのスタイルを守り、かつ、時代のニーズをとらえながら挑戦を続ける岩塚製菓。新潟が誇る米菓メーカーとして、更なる躍進に期待が高まる。
(文・撮影 中林憲司)
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