コジマタケヒロのアルビ日記2022 Vo.14高木善朗「スタジアムを一体に」
敵地で行われた第33節・岩手戦。61分、伊藤涼太郎選手が自陣からカウンターを仕掛けてペナルティーエリア手前までドリブルでボールを運ぶ。左には松田詠太郎選手が、右には高木善朗選手がスプリント。相手ディフェンダーを引きつけた伊藤選手がラストパスを出したのは、高木選手。そのパスを右足でダイレクトシュート。この試合の勝利を決定づける2点目となった。
「ここだ!っていうタイミングでスプリント力を出せるようになったのは、自分の中で成長だと思います。パスが来た瞬間、ファーサイドに打とうということは意識しました。もし溢れるようなことがあっても、逆サイドにいた(松田)詠太郎が詰められるだろうと思ったので。でも、打った瞬間、入ったという確信がありましたね。僕にしては珍しいスライディングシュート、よく頑張って走ったなって、自分で自分を褒めてあげたいです(笑)」。
第33節終了時点で、7得点、5アシスト。開幕当初は、同じポジションを主戦場とする伊藤選手と代わる代わる試合に出場することもあったが、本間至恩選手が移籍後、伊藤選手と共存。伊藤選手が左サイド、高木選手がトップ下に入り、それぞれが攻撃のタクトを振る。高木・伊藤ラインは間違いなく、今季の新潟が誇る武器の一つ。相手チームにとっては脅威でしかない存在となっている。
そんな今季も残り試合も9試合となった。
「(シーズン途中で失速した)去年がありますから、今年はここまで来ても何も変わらず、緊張感を持って練習や試合に臨めています。去年からつながっているというか、去年の経験を糧に、今季は戦えています。去年、悔しい思いをしたメンバーが今季多くチームに残ったので、今季は非常に気持ちのしまったチームになっていると思います。自分が新潟に来てから5年間、サポーターの方々も本当に悔しい思いをしていると思うので、今年は笑って終われるシーズンにしたいです」。
高木選手が新潟にやってきたのは2018年のこと。J2に降格したチームを1年でJ1に上げるための最重要ファクターとして、東京Vから完全移籍で新潟へ加入した。
「新潟のサポーターの声援を初めてホームで聞いたのは、ホーム開幕戦となる第2節・松本山雅戦(第2節/△1―1)でした。2万2,000人を超える人たちが来場し、本当に力になる声援で、僕らをサポートしてくれたのを今でも鮮明に覚えています。東京Vのときは、いいところ、5,000人くらいの来場者。その迫力の違いに『これがプロスポーツ選手の醍醐味かって感動をかみ締めました。自分のチャントを作っていただき、聞かせてもらったときもそうでしたが、やっぱりスタジアムにサポーターの声援があるっていうのはいいですよね」。
チームは優勝争いの真っ最中、シーズン終盤に差し掛かった今、チームは大きな決断をした。新型ウイルス禍で禁止していた声出し応援を、一部エリアに限り、解除。9月10日、第35節の琉球戦以降、すべてのホームゲームで選手とサポーターが一体となり、戦うことを許可した。
「スタジアムが一体となるような戦い方をしたいと思います。同時に、若い選手やまだ新潟の応援をホームで聞いたことのない選手たちに、アルビレックス新潟のすごさを早く体感させたいって。僕たちには、誇りに思えるサポーターたちがいるってことを再確認できるから」。
サポーターの声援に応えるプレー、得点という結果は、あと何回見られそうですか?そんなことを聞いてみた。
「ホーム戦で3回は絶対にサポーターを沸かせますよ、ゴールという結果で。10得点以上という個人成績を残して、来季につなげます」。
こう答えた高木選手の表情は、精悍で凛々しく、頼もしさすら感じさせた。