【再掲載】今太閤・田中角栄元首相を生んだ保守王国の新潟県はなぜ野党が強くなったのか?

自民党新潟県連

かつて、日本列島改造論を提唱し、コンピューター付きブルドーザー、今太閤と呼ばれた田中角栄元首相。新潟県が生んだ唯一の宰相だ。その後、新潟県は保守王国と呼ばれ、大臣も数多く輩出した。しかし、先の衆院選では立憲民主党が4勝2敗となるなど、近年の国政選挙では立憲民主党の勢いが勝っている。政党支持率では、いまだ他を圧倒する自民党がなぜ新潟県では劣勢なのか。しかも市議、県議レベルでは自民党が強いにもかかわらずである。この特集では、なぜ新潟県は立憲民主党が強くなったのかを分析する。

 

なぜ新潟県は立憲民主党が強くなったのか

県内の自民党関係者は「小沢一郎衆院議員が自民党を出て、野党に行ったことが大きい。今では小沢氏は自民党を潰すためのキーパーソンの1人になっているが、田中眞紀子元衆院議員や森裕子前参院議員などの保守系の人たちが野党になったことで、保守の票が流れた」と分析する。

これは県内では、風間直樹元参院議員、菊田真紀子衆院議員、森裕子元参院議員らが該当する。本来が保守だったが、革新になったケースだ。確かに保守の票が流れていると見て取れる。

自民党関係者は、「参議院が2議席の時は与野党で分け合っていたが、1議席になった時にどちらか勝つかというようになった。野党は政党ではなく、個人で戦っている。対して、自民党は『候補者のことはよく分からないが、自民党だから投票する』という人が多い。いわば、自民党という党に支援者が付いているのだ」と話す。

さらに、「野党が強いのではなく、自民党がしっかりしていないから勝てないのだと思う。『この先生を応援したい、この先生を何とか国会に上げたい』という候補者がいれば新潟も強くなりますよ。どこまでいっても接戦をしている候補者では支援者は離れていく。目に見える仕事をしているとか、候補者に魅力があれば勝てるようになる」と語る。

 

「ドブ板選挙をして市民の声を聞かなければならない」

最後に自民党関係者は、「自民党議員は、いわゆるドブ板選挙をして市民の声を聞かなければならない。有権者を1軒1軒回って、『最近どうですか』と聞いてあげるだけでも、『こんなに庶民的にわたしたちの声を聞いてくれるようになった』というふうになる」と話す。

一方で、あるメディア関係者は、「自民党から大臣が出ていないのは、国会議員が育たないからだ」と語る。なぜなら、失言などのいわゆる「自爆」が多いからだ。具体的には、金子恵美氏の夫の不倫問題、泉田裕彦氏の裏金告発問題などだ。

また、あるメディア関係者は「県議会議員は議員個人のファンがおり、支持者は与野党入り乱れている。そのため、県議会で自民党議員が多くても、国政レベルでそのまま自民党支持に繋がるかというとそうとは言い切れない」と指摘する。

ある新潟県の県議は「新潟県は日教組が強いことが野党の強い要因だ」と指摘していたが、元作新学院大学教授の片岡豊氏は「そもそも日教組自体が1995年の段階で、文部省との協調路線に転換しており、かつての日教組ではない」と話す。

2016年の参院選。新潟選挙区では、森裕子氏が初めての野党共闘で自民党の中原八一氏(現新潟市長)と対決して森氏が勝利した。のちにこの野党共闘体制は「新潟方式」と呼ばれ、全国へ波及した。

片岡氏は「2016年の無所属で出た森氏の勝利は上越市で約8,000の差をつけたことが大きい。全県で約2,000票差だった。これまでの選挙結果を見て野党共闘の形で一本化すれば勝てるという計算はあったが、上越市で勝てたのは、そもそも3.11以降、反原発に関して社共両党と労働組合・市民運動との共闘の流れがあり、それなりの市民と野党の共闘の土台があったからだ。2016年の森選挙から昨年の衆院選まではずっと、上越市では市民と野党の共闘態勢が奏功して勝ってきた」と話す。

しかし、一方で、県知事選と参院選では野党候補は敗北。知事選では野党候補が訴えた原発問題が争点にならなかった結果、トリプルスコアに近い票差で現職が再選した。続く、参院選も立憲民主党の森裕子氏が自民党の新人、小林一大(かずひろ)氏に敗北した。

「要するに県知事選に引き続いての参院選で当然運動疲れがあり、市民・野党共闘の形はできていても、運動の熱量としては上がらない。一方で、今回は立憲民主党の現職としての選挙で、立憲民主党県連の共闘体制づくりの不備も重なった。さらに、6年前の選挙と比較してみれば、その時には市民と野党共闘の新鮮さや、シールズなど反戦争法への新たな運動の盛り上がりもあって関わる人々の熱量も上がるけれども、6年たてば活動家の高齢化など様々な運動内の変化もある。森氏の敗退は、相手の問題ではなく、市民・野党共闘の側に戦略ができていなかったということが要因にある。日頃からの市民・野党共闘が何より大切」と片岡氏は話す。

 

「新潟の野党が強いというのは幻想ですね」

片岡氏はズバリこう言った。「新潟の野党が強いというのは幻想ですね」。自民党関係者ではなく、野党支援者からのこの言葉は重いといえるだろう。

「米山隆一氏が勝ったのは、自民党が分裂したからで、一本化されていれば勝てないでしょう。6区(130票差で高鳥修一氏に梅谷守氏が勝利)も含めてみんなギリギリのところだ。大勝ではない」と話す。

また、片岡氏はこう警鐘を鳴らす。

「多くの有権者が政治に対する期待を持たなくなっている。有権者自身が政治に見向きもしなくなればなるほど、自公にとっては有利になる。学校教育の中で主権者教育が全くと言っていいほど取り組まれていない。旧統一教会問題が浮上してくる中で、安倍政治の本質がいよいよ目に見えてきた今こそ、国民主権が何かをそれこそ小学生から教えなければならない」と語る。

話は2006年の教育基本法にまで改正に及んだ。時は第1次安倍政権である。

「教育基本法を変えてから、かれこれ20年近い。今の教育基本法下で育ってきた若い有権者がこれからどんどん増える。そうなれば、ますます政治への関心は薄れていくことを危惧する。そもそも自由民主党という政党ができたときの党是は、自主憲法制定と教育基本法の『改正』だった。教育基本法と憲法は、戦後民主主義の両輪。そのうちの片方が2006年で潰れているわけだ」と語る。

 

「一番の解決方法は投票率を上げるべく主権者意識を高めること」

「一番の解決方法は投票率を上げるべく主権者意識を高めること」という片岡氏。自民党が弱いとか、立憲民主党が強いとかなどと言っている場合ではない。政治への関心をどう呼び起こすか。活動家の高齢化や若年層を中心とした「政治離れ」をどう食い止められるかが、一番の課題と言えるかもしれない。そのためには、もっと魅力的な政治家が出てくることを期待したい。

新潟の野党が強いのは幻想か

こんな記事も

 

── にいがた経済新聞アプリ 配信中 ──

にいがた経済新聞は、気になった記事を登録できるお気に入り機能や、速報などの重要な記事を見逃さないプッシュ通知機能がついた専用アプリでもご覧いただけます。 読者の皆様により快適にご利用いただけるよう、今後も随時改善を行っていく予定です。

↓アプリのダウンロードは下のリンクから!↓