日本文学を研究し、平和を愛した「日本人」ドナルド・キーン氏の記念館「ドナルド・キーン・センター柏崎」
2019年2月24日に逝去したドナルド・キーン氏の記念館「ドナルド・キーン・センター柏崎」が新潟県柏崎市にある。
キーン氏の逝去後、「ドナルド・キーン・センター柏崎」は2020年4月1日にリニューアルしたが、新型コロナウイルス感染症の関係で実際のリニューアルオープンは6月10日に延期となった。
キーン氏は世界に日本文学や日本文化を伝える発信者であり、ニューヨークの書斎がその発信基地だった。2011年3月11日の東日本大震災を機に、キーン氏は被災地で懸命に生きる人たちを見て、日本人になりたいと日本国籍取得の決意を表明した。
ドンルド・キーン・センター柏崎を運営する公益財団法人ブルボン吉田記念財団の佐藤仁理事事務局長は「しかしそれはイコール、今まであったニューヨークの拠点がなくなるということになり、それでそれ自体を私どもが引き受けようということで、そこにあった内容を全部こちらに移築し、復元しました。書斎を中心にキーン先生の業績や人となり、あるいは平和に対する思いを伝える施設となっています」と話す。
また、佐藤理事事務局長は、「やはり日本の昔からの日本文学の良さ、それともう一つ大事なのは、太平洋戦争をひとつの契機としたキーン先生の平和に対する思いを感じてもらいたい。特に今はウクライナの問題などがあるので、平和に対する思いが特に大事なことなのかなと思っています」と語った。
会場にいた係員の女性は「キーン先生は太平洋戦争の時、『源氏物語』に美を求めた。私はボランティアをしていたので、キーン先生に会えたが、普通では会える人ではない」と話していた。
一方、12月25日まで生誕100年記念企画展「写真で綴るドナルド・キーンのあゆみ」を開催している。企画展では、「無二の親友」だったという作家、三島由紀夫氏と談笑する写真など様々な日本人作家との交流がうかがえる。なお、12月26日から3月31日までは冬季休館となる。
キーン氏は、1922年アメリカ・ニューヨーク生まれの日本文学研究者、文芸評論家、コロンビア大学名誉教授。2002年に文化功労者、2008年に文化勲章を受章。2012年3月、帰化申請が受理され、日本人となった。日本国籍取得後の正式名はキーン・ドナルド。2019年2月逝去、享年96歳。
主な著書として、「日本文学の歴史」全18巻や「明治天皇」などが多数ある。
(文・撮影 梅川康輝)