分かっているようで分かっていない? 消雪パイプと地盤沈下の関係
新潟県内は2020年末からの降雪により大雪の被害が相次いでいるが、こうした雪国に欠かせない存在が消雪パイプだ。消雪パイプは昭和30年代、長岡市の民間企業により開発されたことに始まり、現在では県内のみならず積雪の被害を受ける全国の道路を支えている。
しかしその一方で、今冬は上越地域にて消雪パイプの多用による地盤沈下警報が出たことも記憶に新しい。一体、地盤沈下はどのようなメカニズムで発生するのか? そもそも、消雪パイプの水はどこから来て、どこへ向かうのだろうか?
消雪パイプの仕組み
消雪パイプに用いられる水は、基本的には地下の砂・砂利の層から組み上げられている。具体的な仕組みを説明すると、まず地下深くまで井戸が掘られ、その砂・砂利の地層に接する部分の側面を網目状の壁にすることで地下水を取り込む仕組みになっている。そうして井戸へ取り込んだ水を、近隣各地の消雪パイプへ配水しているのである。
なぜ砂・砂利の層からのみ水を取り込んでいるのだろうか。その理由は単純で、粘土や泥の層から水を取ってしまうと、水分が抜けた分地層が収縮してしまうからだ。
しかし、砂・砂利層の水が枯渇した場合、周りの層から水分が染み込み、結果的に粘土層なども水分が奪われ、地層は縮んでしまう。これが、消雪パイプによる地盤沈下のメカニズムだ。
膨大な水に支えられた融雪システム
「1回融雪に使った水や融雪水は地面に還っていかないの?」と考える読者もいるかもしれない。しかし、こうした水は排水溝へ流れそのまま川、海へ排水される。例えば、上越地域で用いられる地下水は主に妙高などから流れてきているもので、地下水の補給は海から雲、そして雨へ…と自然の循環に任せる他はない。
今冬、上越では早々に地盤沈下警報が発令されたが、これは大雪によるものだけではない。ここ数年が記録的な小雪で雪解け水も大幅に減少したことや、昨年は台風などによる降雨が少なかったことも大きく影響しているのだ。
「1度地盤沈下が起きた場合、復旧は非常に難しい」と長岡地域振興局、地域整備部維持管理課の担当者は話す。道路の舗装や住宅などの重みによって、「常に絞られた状態の雑巾」のように縮んだ粘土層は水分を取り込みづらくなっているのだ。基本的には長期間をかけて吸水していくのを待つ他に解消法は無いという。
消雪パイプは、平均的に1平米あたり1分間0.25リットルの水を使用する。1車線3メートル、2車線で6メートルの平均的な道路だとすると、1.5リットルの計算だ。つまり、1つの消雪パイプは1分間でやや大きめのペットボトル1本分の水を使用しているのだ。
冬の道路事情は、膨大な水分に支えられている。そのため、長岡地域振興局の担当者は「水の出しっ放しを止めるなど、普段から家庭での節水にも気を配ってほしい」と注意を促していた。(文:鈴木琢真)