コジマタケヒロのアルビ日記2022 Vo.15 秋山裕紀「積み重ねてきた自信」

秋山裕紀選手 ©ALBIREX NIIGATA

22年9月21日、聖籠町のクラブハウス

チームは、第37節のホーム・水戸戦(◯2-0)を終えたばかり。この試合で負傷した高木善朗選手の診断結果は、公開練習前に発表された。

右膝前十字靭帯損傷。

18年に新潟に加入し、大黒柱として、チームを支えてきた選手だけにこの診断結果を聞いたときに、大きな衝撃が胸に走った。

「今日の練習前にリキさん(松橋力蔵監督)が『一人ひとりではなく、チーム全員でヨシの想いを背負って、残りの5試合を戦おう』と話をしてくれました。もちろん、自分のために、という前提はあります。しかし、ヨシ君に捧げるためのプレー、結果を残りの5試合で自分自身に求めていきたいと思っています」と話してくれたのは、秋山裕紀選手。

沼津、鹿児島と育成型期限付き移籍を経験。今季プロ4年目のシーズンを送る背番号6。

「今季は、試合に出場するごとに『自分だってできる』という自信を積み重ねられています。ピッチに立つ上で、最も大事なのは、自信。これが自分の持ち味を引き出せるか否かに直結していると実感しています」

今季序盤はコンディションが上がらず、試合に出場する機会はほとんどなかった。新型ウイルスの影響で試合に出場できない選手が続出。ボランチ不在という声が上がった際、それまでボランチとは無縁と思われた星雄次選手がボランチ起用されたことで悔しい思いも経験した。

「自分以外の選手が僕の主戦場で試合に出場するのは、やはり悔しいです。でも、ほかの選手にない特徴を僕も持っています。その特徴を出せるように、自分にフォーカスをあてながら練習することで、いざ出番が回ってきたとき、いいパフォーマンスが披露できるようになったと思います」

後半戦になって試合機会が増えた。徐々にスタメンに名を連ねる機会も増えてきた。

「すべての試合が僕の自信につながっています。でも最も自信になったのは、アウェイの甲府戦(第36節/A○2-1)。自分の良さがあまり出せず、チームとしても流れがあまりよくない中で、89分まで出場してチームは勝ち切れた。あの流れであれば、ヤン(高宇洋)をもっと早く試合(89分に秋山と交代出場)に出して、守備寄りにした方がよかったという声もあったと思います。あれだけ相手にボールをもたれ、自分たちのサッカーができない中ですからね。でも、その中で、僕の課題である守備をきちんとし、相手の思うようにやらせなかった。あの試合は、今後の僕のサッカー人生の中でも非常に大きい1試合だったと思います」

この試合だけではなく、今季、秋山選手には鬼気迫るものがあるように思えてならない。持ち前のパス精度に加えて、一対一の守備が強くなった印象だ。

「僕は高校からプロになりました。あれから4年です。来シーズンには、同じ年齢、大卒でプロのステージにやってくる選手がいます。この4年間、大学でプレーしていたのか、はたまたプロでプレーしていたのか。僕にはプロという厳しい環境でやってきた自負がありますし、その差を見せないといけないと思っています。だから、この1年は、これまでの3年間よりも、非常に重い。責任感なども非常に高まっています。ピッチに立っている以上、年齢は関係ありませんから、チームを自分が引っ張るくらいの気持ちで戦っています。そして、今季はここまでいい結果を残し、昇格、優勝争いをしています。この貴重な時間を緊張感持って、というよりは楽しみたいと個人的には思っています。今年の新潟は、楽しんでプレーすることが選手の良さに直結しているから。責任感を持ちつつ、楽しんでプレーすることがチームの目標を成し遂げることにつながると思っていますよ」

こう話してくれてから、4日後。ホームの大宮戦(第38節/○1-0)で、チームに勝利を呼び込む決勝点。新潟での初得点を記録した秋山選手。

ゴール前でボールを受けた鈴木孝司選手が崩れ、ボールがこぼれたところに走り込んできた秋山選手が落ち着いてシュート。松橋監督いわく「高木の魂が乗り移っていた」というボールがこぼれてきたのは、この試合攻守に渡り、存在感を示していた背番号6の目の前だった。

試合後、報道陣に囲まれ、質問に受け答えしながら見せた、秋山選手らしい笑顔。そして時折覗く誇らしい表情が印象的だった。

 

◎アルビライター コジマタケヒロ

練習、ホーム戦を中心に日々取材を続ける、アルビレックス新潟の番記者。また、タウン情報誌の編集長を務めていた際に、新潟県内の全日本酒蔵をひとりで取材。4冊の日本酒本を出した、にいがた日本酒伝道師という一面も。(JSA認定)サケ・エキスパート

 

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