新潟県弥彦村で進む枝豆選果施設の計画
新潟県は近年、農業の高付加価値化に向けて園芸振興に注力している。この取り組みの一環として、農家の労力負担を図り作付面積の拡大を進めやすくしようと、枝豆選果場の整備が進められている。2020年には白根野菜流通センター(新潟市南区)内に選果場が開設。洗浄、冷却、脱水を行いながら、1時間で1,000キログラムの枝豆を出荷可能なものとそうでないものに選別でき、農業の省人化に多大な恩恵をもたらしている。
そして現在、2021年度の着工と晩生種枝豆でのテスト稼働を目指して計画が進められているのが、「弥彦むすめ」などの品種でも知られる枝豆の生産地・弥彦村の枝豆選果場である。
機械化による農家の負担軽減を
弥彦村の枝豆選果場は、村内の枝豆生産農家の利便性を考えJA弥彦村の井田倉庫に隣接する土地に建設される。敷地面積は白根の選果場と比較するとやや小さいが、2階建てになる予定であるという。
機能としては、収穫された枝豆の洗浄から色彩選別、商品として包装するまでの作業を行うほか、冷却水による品音管理が可能である。弥彦村内の枝豆農家は、自家用に栽培している家を含めて26件。枝豆の個人農家にとって重労働となる選別・包装作業を省くことで、栽培への注力が可能となるほか、従来各農家で独自に行っていた温度管理を画一化することで産地全体の品質を引き上げが見込まれる。
選果場で取り扱う枝豆は、6月中旬移行から収穫される「茶豆」系の品種と「さかな豆」のような晩生種である。弥彦村の特産品として知られる「弥彦むすめ」は、枝付きである点がブランドとして定着していることから選別作業の機械化は行わない。
しかし、早生種である「弥彦むすめ」は他品種と並行して栽培する農家が多く、「中生種・晩生種の選別作業機械化は、結果として多くの農家の負担の軽減になる」と弥彦村役場農業振興課の志賀史緒係長は話した。
機械化で変わっていく農業の体制
国や県では食用米からの転換を進めており、弥彦村でも枝豆の生産拡大には期待があると志賀係長は話す。しかし一方で、「元の生産量が多くないことや、農家の高齢化により、このままでは産地が無くなってしまうという懸念がある。そのためにも、重労働となる作業の機械化などの補助が必要だと考えている」(志賀係長)。
現在、弥彦村の枝豆栽培面積は約26ヘクタール。生産された枝豆は飲食店や旅館などへ直売される割合が多い。売り先が確定している一方で、小売の割合が低いことは販売量の拡大がしにくいことにも繋がる。また、2020年から続くコロナ禍による飲食店への影響など、直売は必ずしも安定しているわけではない。生産量拡大と共に、村のふるさと納税品に枝豆を追加するなど、特産品としてのアピールも課題になっていきそうだ。
機械化への投資には、農家からの理解も必要だったと志賀係長は振り返る。しかし近年は、若い農家や村外から新たに参入した農家の協力もあり、栽培の体制や売り先の意識の変化も見られるという。
村では選果場の稼働以後、収穫の機械化も検討している。志賀係長は「今後は、機械化をどう活かすかを考えることが重要だと思っている。ベテラン農家の経験を生かした栽培や、管理体制を確立することで、経験の少ない農家でも参入できるようにしていきたい」と展望を語る。農業の機械化は単なる省人化ではなく、ナレッジマネジメントのような新たな人が参加しやすい環境作りにも一役買っているようだ。(文:鈴木琢真)
【関連記事】
新潟県の花角英世知事が「しろね えだまめ選果施設」を視察(2020年7月27日)
連載 新潟の農業 活性化の処方箋は園芸にあり 第4回「生産者の機械化支援で大規模化を図るJA新潟みらい」(2020年2月23日)