新潟市内で「コロナ危機下における学校教育」セミナーが開催

講演を行う上松恵理子氏

新潟県地域情報推進協議会(ICTえちご応援隊)は23日、新潟駅前マルタケビルにて、コロナ厳戒下の学校教育に関するセミナーを開催した。セミナーはコロナウイルスによる教育への影響に対し、ICT教育の利活用という教育のあり方を考察することを趣旨としている。

セミナーは二部構成で、第一部はICT教育の第一人者である、武蔵野学院大学・武蔵野短期大学国際コミュニケーション学部准教授の上松恵理子氏による基調講演、第二部は教育関係者らによるパネルディスカッションを行った。

冒頭挨拶で新潟県地域情報推進協議会会長の石井伸行氏は、「昨今のコロナ禍によって日本の教育のあり方が揺らいでいる。今一度ICT教育の理解を深め、現代の教育について考えていきたい。後々『コロナ世代』という言葉が悪い意味で使われないような未来を目指したい」と話した。

第一部では上松恵理子氏による「コロナ危機下でのICT教育」をテーマにした講演が行われ、上松氏は海外視察の経験を元に、教育におけるICT活用事例をレクチャーした。

初めに上松氏は「成績」という概念について言及。「今までの成績というのが、どういった基準でつけられていたのか振り返って欲しい。確かにもしかすると、パソコンばかり見ていると、従来までの暗記中心の成績は下がるかもしれない。しかしながら情報の活用能力という、これまで学校教育では使ってこなかった能力が高まっていくと思う」と話した。

続けて、「例えば今まで評価の対象だった『音楽の授業でリコーダーを間違いなく吹く』というスキルはロボットでも同じ事ができる。そうではなく人間にしかできない事を考えた上で、今後子供たちに必要なスキルを問い直す時期なのではないかと思う」と語った。

さらに上松氏は、コロナ禍における日本と海外の教育について、「海外ではICT利用が非常に進んでいる一方、日本は先進国の中でも、教育におけるIT利活用の水準は最下位となっている。実際に海外の高校では1人一台のPCを持っているのが当たり前になっている。またコロナ禍における教育という分野では、ICT教育が進んでいる海外の学校では、スムーズに自宅教育に移行できており、『休校』という概念が存在しない国も少なくない。しかし、ICT教育が進んでいない日本は感染拡大防止のため、休校という対応を取らざるを得なく、そういった意味でもICT教育の推進は急務だと言える」とICT教育の重要性を説いた。

ほかにも、各国でICT教育に用いられるツールの説明や、ICT教育が進む国における親世代の意識、海外教師(学校)の働き方や取り組み法など、約60分に渡ってICT教育に関する講説を行った。

パネルディスカッションの様子

第二部では、学校教育やICT教育における有識者達によるパネルディスカッションが催された。新潟市障がい者ITサポートセンター顧問の林豊彦氏は、「私はもう10年以上も数々の障がい児たちの教育を、ITの利活用にて支えてきたが、日本のICT教育に関して言えば、現場だけでなく専門のコーディネーター達と一緒に進めていかないとかなり難しいのではないかと思う」と教育現場におけるIT活用に関する情報の不足感などを訴えた。

新潟県教育庁義教育課指導主事の神子尚彦氏は、新潟県におけるICT整備状況について、「新潟県内では全ての市町村が国の補助金を活用し、高速通信ネットワークの整備と、1人一台端末の実現に向けた端末の配備を進めている。また、学習用に授業動画の作成もしており、1,300本以上の動画がYoutube上で限定公開されている」とICT教育実現に向けた現状を話した。

それ以外にもパネラー達から、実際に1人一台端末をいち早く実践した学校の様子や、小学校で行ったオンライン授業の感触、ふれあいの大切さなど、多岐に渡った意見交換が行われた。

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