【独自】2022年4月に発足したJA新潟かがやき、下越南地域の強みは園芸と販売所
全国的に農業協同組合(JA)の合併が進んでいる。金融関連事業の利益減少や、農家の減少とともに組合員減っていく組合員など課題が山積する中で、合併による経営基盤の強化を狙う。新潟県内では、直近9月に中越地域のJA越後さんとう、JAにいがた南蒲、JA越後ながおか、JA柏崎が合併予備契約を結び、2023年にも県内最大規模のJAとして再出発するほか、上越地域でも合併に向けた協議が進む。
そんな中、近年の県内大規模合併の先駆けとなったのが2022年4月に発足した「JA新潟かがやき」だ。新潟県下越南地区のJA新潟みらい、JA新津さつき、JAささかみ、JA越後中央、JA北蒲みなみが合わさり、その規模は正組合員数2万9,732人、准組合員数は3万136人(2022年7月現在)にのぼる。
今回はJA新潟かがやきの伊藤能徳会長に、管内の農業の特徴や県農業の現状と課題などについて聞いた。
園芸と販売所に強みを持つ下越南地域
JA新潟かがやきは、市町村で言えば新潟市の一部、阿賀野市、五泉市、燕市、阿賀町、弥彦村にまたがり、そこで作られる農産物は実に多彩だ。例えば沿岸部の新潟市西区や西蒲区ではスイカが高い利益を上げており、ハウス団地や選果場も整備されている。また、茶豆で有名な旧黒埼町(新潟市西区)をはじめ、南区や弥彦村、阿賀野市笹神など枝豆の産地を多く抱える。蒲原平野では当然米づくりも盛んではあるが、こうした園芸作物の多様さと生産者の多さ、そして「販売所の多さが最大の強み」だという。
伊藤会長は話す。「園芸作物の割合がこれほど多いのは県内で唯一新潟かがやきだけ。いかにこの販売事業を落とさず伸ばしていけるか。(合併により)ある程度の経営体力があれば、直売所や大型ファーマーズマーケット、選果場などさまざまな施設整備ができる」。
新潟県の農業を支えているのは米であり、またそのブランド維持は重要である。しかし米の需要が大きく下落し、国際情勢を受けて肥料などの値上がりも追い討ちをかける今、それを補う園芸作物への転換は急務だ。しかしこの分野において新潟県は他県に遅れをとっている。
そんな中伊藤会長は「次年度以降の課題は出口戦略。作る側も大事だが、売り先の確保も重要」だと話す。販売所の多い新潟かがやきの強みが生きる。一方で県外への出荷は、スイカなどの特殊な売り方をする農作物以外は生産数が少なく、他県に押されている品も多いのが現状だ。新潟の農業が「稼げる農業」になるためには、生産拡大と効率化、そして適切に売ることが重要だ。
また同じ品目でも、例えば枝豆であれば「くろさき茶豆」や「さつき茶豆」など、新潟かがやき管内・新潟県内でブランドが乱立していることも県外出荷を狙う上ではネックになる。「統一したブランドで売り出せればとも思うが……。農家の皆さんがそれぞれ頑張ってきたブランドがあって、それは大切にしないといけない」(伊藤会長)。それぞれが県内でネームバリューがあり、また栽培方法と売り方も異なる。今後の売り先確保へ向けて、県全体で調整していかなくてはいけない課題の一つだ。
一体感を持った組織に
合併元となった5JAはそれぞれ特色も違えば積み重ねてきた歴史も違う。「例えばJAささかみは阿賀野市になる前から存在していて、有機肥料などの取り組みも独自でやってきた。それぞれのやってきた努力を生かしていかなくてはいけない」(伊藤会長)。合併によって得たスケールメリットを発揮するためには組織の団結が欠かせない。同時に、合併前のそれぞれが培ってきたノウハウや人材の共有・活用も必須になってくる。
また前段の話にも関わるが、直売所同士の連携も深め、例えば中山間部で採れた山菜と新潟市の市街地などで販売できるようにするなどしていきたいと伊藤会長は話す。
感染症禍の影響で職員や組合員の集会がなかなか思うようにできなかったところもあったという。しかし、発足からはまだ半年、本格的な始動はこれから。そんな中で、伊藤会長はモットーは「一味同心」だ。「かがやきの職員と組合員、生産組織や青年部や女性部などで、はやく一体感を持てるようにしたい。そしてみなさんから『できてよかった』と言えるような組織づくりをしていく」。
米価の下落や人手不足……農業を巡る環境は依然として厳しい。「稼げる農業」を実現し就農者を増やすためにも、組織内と組合員、さらに自治体や行政とも団結が不可欠だ。これから本格化する新潟かがやきの動きに期待したい。
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(文・撮影 鈴木琢真)