【トップインタビュー】コロナ(新潟県三条市)新社長の大桃満氏が語る「コロナの未来」
暖房機器や空調・家電機器、住宅設備機器などの製造販売を手がける株式会社コロナは今年4月、新社長に大桃満(おおもも・みつる)氏が就任した。大桃社長は、コロナ一筋32年。時代と共に変化してきた顧客ニーズや、日々進化する技術革新と向き合い、コロナと共に歩んできた。就任から半年の大桃社長に、コロナの現状や今後の経営戦略について話を聞いた。
脱炭素社会への姿勢を示していく
——今年5月に発表した中期経営戦略では、ビジョンの柱のひとつに「脱炭素社会への貢献」を掲げている理由をお聞かせください。
石油燃焼機器を扱っている当社としては、石油を使う時代がまだつづいて欲しいという想いはあるものの、脱炭素社会への世の中の流れには、社内外で会社の将来に不安を感じていると思います。
当社としては、不安を払拭するためにも全てのステークホルダーの皆さんに、今後の事業・経営の方向性を発信しなくてはならない。それが必要な時期だと判断しました。
——脱炭素社会の実現に向けて、どのような取り組みをしていきますか。
今までは、環境配慮型の製品を開発し、市場に出してきました。一番いい例が自然冷媒(CO2)を活用した給湯機「エコキュート」です。そのような環境配慮型製品を出してきているが、それだけでいいのか、と。事業活動全体で当社が進む道を決めなければいけないという事で、新たな中期経営戦略でも脱炭素社会への貢献に向けた各施策を掲げました。
ただし、開発する製品が3年から5年後に様変わりするわけではありません。当社は石油を使う暖房製品や電気を使うエアコン、またはヒートポンプの給湯機など様々なエネルギー源に対応した製品を扱っており、昨年は他社と共同で電気とガスのハイブリッド冷暖房・給湯システムも開発しました。
今回の中期経営戦略では、こういったエネルギーのハイブリッド的な製品や、代替エネルギーなどを研究し、探索することが中心になります。
——製品開発以外でも脱炭素への取り組みをお考えですか。
事業活動全体でどこまでCO2を削減できるかという事が重要だと思っています。それは、自社のCO2排出量だけではなく、部材の調達からお客様に届けるところまで、サプライチェーン全体のCO2排出量、さらに、製品使用時のCO2排出量まで対象としていきます。
現在は調査をしている段階ですが、調査が終わったら、目標設定や課題解決に向けた方向性について検討を進めていきます。
——現在は石油を使った製品を多く製造されていますが、再生可能エネルギーについてはどうお考えですか。
大気中の熱を利用する「ヒートポンプ」を活用した商品としてエコキュートなどがありますが、そういった技術の分野を広げていかなければならないと思っています。
エコキュートは、当社が2001年に世界で初めて発売してから20年あまりが経ち、市場は買い替えの時期に入っています。また、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及拡大もエコキュートの販売を後押ししています。
当社では入浴時のみまもり機能やスマートフォンのアプリとの連動など、お客様のニーズに合わせた機能を強化しており、今後も省エネ性や機能性に優れた最上位機種を中心に、販売拡大を進めていきます。
ただ一方で、石油を使う製品はすぐには無くならないと思っています。
災害が多い日本では、いつ停電になるかわからないですよね。3.11東日本大震災の時などもそうだったのですが、電気を使わない石油ストーブが非常に役立ちました。
また、寒冷地での暖房においては、確かにエアコンの性能は良くなっていますが、暖かさや速暖性においては石油暖房機には敵わない。そういうことから、石油製品は一定程度残りつづけるだろうと思います。
「楽」から「楽しい」へ、そして「屋内」から「屋外」へ
——アウトドア用品を扱う「キャプテンスタッグ」とコラボレーションした製品を発売されましたが、その経緯をお聞かせください。
中期経営戦略にも謳っているのですが、これまでの暮らしを「楽」にするものから、「楽しさ」の提供を追求していこうと掲げました。それにプラスして、「屋内から屋外へ」というのもキーワードにしており、キャプテンスタッグさんとともに同社製の限定テント内で使用できる石油ストーブと石油コンロを開発するに至りました。
——今後も屋外に目を向けた商品開発や、コラボレーションに力を入れていく方針ですか。
今後もキャプテンスタッグさんをはじめ他社とのコラボレーションなども行いながら、外での快適さも追求していきます。
電気が無い環境では、当社の強みである石油製品がやはり活きます。
公式オンラインストア限定で低出力のポータブル電源でも使用できる石油ファンヒーターを今年発売しました。試験的な販売だったのですが、反響がすごく、発売当日に完売となりました。ポータブル電源を活用した中での災害への備えなどの需要が高まっていると感じました。
今回はキャプテンスタッグさんとのコラボレーションでしたが、「屋外へ」というテーマを掲げており、コラボ先の拡大は今後も進めていきたいと思います。
「快適をつくる会社」としてのブランド構築
——コロナのブランディング戦略はどのような取り組みを行っていますか。
今までは、「暖房のコロナ」というイメージを皆さんが持っておられたかと思います。これからは、「快適を創造するコロナ」というイメージを持っていただくためのブランディングを2019年から開始しました。
ブランドスローガンでも、「つぎの快適をつくろう。」と掲げていますが、今、一生懸命、社内外に浸透を図っているところです。
その1つの施策としては、俳優の福本莉子さんを起用したエアコン「ReLaLa」(リララ)のCMです。今までは製品を主体としたCMでしたが、「快適さ」を打ち出したブランドイメージのためのコーポレートCM的な要素を含めています。
これまでの製品オンリーのCMではなく、家族が快適に暮らしているシーンを表現し、快適をつくる会社としてのブランド構築を進めています。
「明るい未来を示す」想い
——この度の中期経営戦略では、投資計画が前期間から大きく増加しましたが、その背景をお聞かせください。
1つは脱炭素社会の実現に向け、新技術や代替エネルギーの研究、中期経営戦略と連動した新商品開発のための研究開発費のアップです。
2つ目は、製造設備における自動化や合理化の設備を導入することによって、労働人口の減少などで人員が減っても対応できる体制づくりを図っていきます。
そして3つ目は、DX化です。IT技術を駆使し、管理間接部門を含め業務の効率化を進め、人員減少にも対応していきます。とくにIT投資の予算については、大きな投資計画になっています。
——5年後には創業90周年を迎えますが、未来の方向性をどのようにステークホルダーに対して示していきますか。
90年、その先の100年に向けては、当社の明るい未来をまず社員に示さなくてはいけません。脱炭素社会の実現に向けて、当社の方向性をもっと具体化していきたいです。
石油を熱源にした商品で生きてきた当社が、「今後どんな会社を目指すのか」を伝えることで、社員をはじめとしたステークホルダーに対して安心感を与えることが必要だと思っています。
当社の将来性や魅力をまずは社内の皆さんに示し、それを外に発信するということがテーマとなってくるでしょう。
(文・撮影 中林憲司)
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