コジマタケヒロのアルビ日記2022 Vo.17松橋力蔵

「あそこで写真を撮ろう」

今季が開幕してまもない3月、あるラジオ番組に呼んでいただいた。アルビの番記者、そんな紹介だったこともあり、リスナーの方から事前に質問が寄せられていた。その中からいくつかの質問にその場で答える、そんな段取りになっていた。

「少し意地悪な質問も来ているのですが……、どうしますか?」
事前の打ち合わせで、パーソナリティさんが気を遣ってくれた。
「いや、いいですよ。きっと気になるのでしょうから答えますよ」
そんなやりとりの後、本番を迎えた。
「松橋監督で大丈夫だと思いますか?」

チームは出だしから勝利に見放されていた、当時はそんな時期。やきもきする気持ちも十分に分かる。だけど、毎週クラブハウスで話を聞かせてもらっていた自分からすると、正直、少しムッとした質問だった。松橋監督の強い信念もそれに共鳴している選手たちも目にしていたからだ。

「強いと思いますよ、今季のチーム。監督も選手もスタッフの皆さんも、昨年に輪をかけて、みんな同じ方向を向いているように感じますから」

あれから半年以上が経った。
昇格が決まった後、10月11日の公開練習後、松橋力蔵監督にこんなことを聞いてみた。

「3万3,000人が集まるスタンドをピッチから見るとどんな景色に映るんですか?」
「いや、本当にすごいですよ。これまでの試合では、入場制限がこれまでよりも厳しく、うっすらと(席と席の)間が空いているように見えたのですが、ほとんど見えなかったのが印象的でした。今シーズンの頭に彼ら(選手たち)に『(今季)何をしたい?』『どうしたい?』といったところを問いました。そのときに見せた写真がスタンドをバックに関係者みんながそろって撮った集合写真でした。バックスタンドに空席が目立つ集合写真を見せながら『このチームは4万人が常に入るようなチームだが、残念ながら今はこういうふうになってしまった。だからこそ、もう一回満員にして、それをバックに写真を撮ろう。じゃあ、満員にできて、写真を撮れるのってどういう意味なのか、考えてみてくれ。どういう光景?どういう状況?俺はそれをやりたいんだ』と。3万3,000のスタンドを見たときは、まさにこれ!試合前だけど、今、写真を撮りたい。そんなふうに思えた光景でした」

「では、あの日(10月8日)の写真で、一つ夢がかなったということですか?」

「あの写真も素晴らしいものでした。でも、本来はチームに関わってくださった皆さん、家族もそうですし、クラブで働いてくださっている多くのスタッフ、これまで関わってくださった方々……。言い出したら、収拾がつかなくなってしまうのですが、本当にできるだけ多くの方々とそういう写真を撮りたいと思っています。それがスタートでやったミーティングのミッションを完成させることになるのかなと。最終節、サポーターの方々が埋
め尽くした満員のスタジアムで、本当にみんなとそういう写真が撮りたいです」

チームは昇格に加え、優勝も決め、この上ない結果を残している。
残るは、おそらく定数いっぱい、超満員になるであろう、ホームでの試合のみとなった。
松橋監督が、チームみんなが、想い続けた光景。
多くのサポーターと一緒の写真。
あぁ明日、10.23が楽しみだ。

◎アルビライター コジマタケヒロ

練習、ホーム戦を中心に日々取材を続ける、アルビレックス新潟の番記者。また、タウン情報誌の編集長を務めていた際に、新潟県内の全日本酒蔵をひとりで取材。4冊の日本酒本を出した、にいがた日本酒伝道師という一面も。(JSA認定)サケ・エキスパート

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