デンカ(東京都)が青海工場(新潟県糸魚川市)でのセメント事業から2025年を目途に完全撤退
デンカ株式会社(東京都)は25日、同日開催した取締役会において、2025年上期を目途に石灰石の自社採掘およびセメント製造事業からの完全撤退を決議したと発表した。
デンカは1954年よりセメント事業に参入し、新潟県糸魚川市の青海工場にて、隣接する黒姫山の豊富な石灰石資源のうち、炭化カルシウム(カーバイド)向けに使用できない純度やサイズの石を有効活用し、セメントの製造・販売を行ってきた。また、カーバイドやクロロプレンゴムなどの工場内他製品の製造時に発生する副産物を、セメント原料に有効活用することで、独自のカーバイドチェーンを構築し、製品の競争力向上や工場のゼロエミッションを追求するとともに、社外の廃棄物受け入れによる地域社会の資源リサイクルにも貢献してきた。
しかし、近年ではデンカのセメント事業は、主要販売先の北信越地区をはじめ国内セメント需要が低調に推移しているとともに、老朽化した設備の更新やカーボンニュートラルに向けた大型投資が不可避という厳しい局面に立たされてる。そのため、経営計画「Denka Value-Up」において事業再構築が必要なコモディティー事業と位置付け、構造改革を検討してきたが、この度、デンカの単独運営による今後の事業維持・成長は困難との結論に至ったという。
デンカはセメント販売事業を、吸収分割の方法により、デンカの100%子会社として新たに設立する完全子会社に承継させた上で、その全株式を太平洋セメント株式会社(東京都)に譲渡することを決定し、同日付で太平洋セメントとの間で株式譲渡契約書を締結した。
太平洋セメントは、同社の100%子会社である明星セメント株式会社(新潟県糸魚川市)と協業し、デンカの石灰石採掘およびセメント製造事業撤退後、カーバイドチェーンにおける石灰石供給と副産物の有効活用を担っていく。
デンカは、以前から太平洋セメントおよび明星セメントと、黒姫山の石灰石鉱山の共同開発計画に取り組んでおり、その検討過程において双方の信頼関係が醸成されてきたという経緯もあり、本取引に合意した。
デンカは、経営計画「Denka Value-Up」におけるポートフォリオ変革の一環として、重点分野の「環境・エネルギー」「ヘルスケア」「高付加価値インフラ」へ経営資源を積極投入してきた。さらに今後は、2023年度から2030年度の次期経営計画を見据え、M&Aや設備能力増強投資、ならびに社会課題の解決を目的とした新規事業の早期創出などによる成長戦略を推進し、企業の持続的な成長を目指していく。