生産技術伝来の感謝と収穫の喜びを神に伝える金峰神社の王神祭、厳かに執行される

地元では「蔵王さま」の愛称で慕われている金峯神社

地元では「蔵王さま」との愛称で呼び親しまれている金峯神社(長岡市西蔵王2)で5日、稲作、漁業、酒造を地域に伝えた神への感謝と収穫の喜びを伝える「王神祭」が厳かに執行された。

通常、同祭は毎年11月5日に行われるが、新型ウィルス禍に見舞われた2020年、2021年は、ウィルスによる感染症拡大の防止の観点から、同祭儀の執行を神社関係者のみとし、参列者を募らなかった。今年は、十分な感染症対策を行い、限られた関係者のみを招待しての開催である。同祭儀には、同神社の氏子などを中心におよそ50名が参列した。

祭儀の一部である「年魚行事」では、禰宜が火箸二本と包丁とを用いて、直接手を触れることなく雌鮭を捌き、鳥居の形に整えて神前に供えるといったもので、平安時代から伝わる「庖丁儀式」の影響もみることができる珍しいものである。

もともと、同祭は近隣の100近かった村々を4つにわけ、それぞれの地域から“頭人”と呼ばれる祭祀者を選び、選ばれた頭人が3年間の祭祀を行うというものだった。頭人に選ばれることは大変名誉なことであるとされた一方で、祭儀の経済的負担は大きく、一度頭人に選ばれた家は潰れてしまうこともあったという。それが明治維新以降、様々な変遷を得て、現在の形式に落ち着いた。古くからの形式が残る祭儀として、新潟県の無形民俗文化財にも登録されている。「年魚行事」の後は、祝詞の奉上、末広舞の奉納、示鏡行事などが行われた。

祭儀を執行した禰宜の桃生鎮雄さん(51歳)は、久しぶりの参列者を交えての開催になったことに喜びを感じている「私たちは神様と人々の中取り持ち役。人の祈りや感謝の間に立っている。ご参列される方の祈りや願いを伝えるための存在だと思っているので、参列される方がいたほうが、お祭りが成立する。(そのような意味で)意義があると感じる」と語った。

例年、祭儀のあとは直会が執行されることになっているが、本年は直会を執行せず、祭儀の後はそのまま散会となった。参列者たちは、新型ウィルス禍の早期収束と来年以降の平常通り開催をそれぞれに願いながら、おのおの帰路についた。

手を一切触れずに鉄箸と包丁だけで鮭を捌く。相当な技術を要する

参列者に祭儀が滞りなく終了したことを伝える桃生鎮雄さん

鳥居形に捌かれた鮭

(文・写真 湯本泰隆)

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