東京商工リサーチ新潟支店が2022年度の業績⾒通しについてインターネット調査を実施
東京商工リサーチ新潟支店はこのほど、2022年度の業績⾒通しについてインターネット調査を実施した。この調査は、10月3⽇から12⽇にインターネットによるアンケート調査を実施し、有効回答139社を集計・分析した。なお、資本⾦1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
「今年度(2022年度)の業績見通し(売上高)は、次のうちどれですか?(択一回答)」との質問については、2022年度の売上高について、「増収見通し」は41.7%(139社中58社)で、全国の36.3%を5.4ポイント上回った。また、「前年度並み」は32.3%(45社)、「減収見通し」は25.9%(36社)で、全国とほぼ同じ割合となった。
「増収見通し」の産業別では、最も構成比が高かったのは不動産業の100%、次いで、情報通信業の57.1%、製造業の48.0%となった。一方、「減収見通し」では、農・林・漁・鉱業の100%が最も高く、次いで、小売業と金融・保険業の50%となった。
『Q1で「増収見通し」と回答した方に伺います。「増収」見込みの理由は何ですか?(複数回答)』との質問では、「販売数量の増加」が最も多いQ1で、「増収見通し」と回答した企業のうち、56社から回答を得た。
最多は、「既存の製品・サービスの販売数量の増加」の42社だった。以下、「販売単価の引き上げ(値上げ)」の34社、「新しい製品・サービスの販売開始」の13社と続く。
一方、「他社事業の承継、M&A」はゼロとなったほか、「事業拠点の増加」・「新事業の開始」といった積極的な投資による増収見通しも少数であった。その他の主な回答は「コロナ感染の状況が変わってきておりその影響によるもの」、「新規販売先獲得」などとなった。
「Q3.今年度(2022年度)の業績見通し(経常利益ベース)は、次のうちどれですか?(択一回答)」との質問では、経常利益の見通しは、「増益」が25.1%(139社中35社)で全国の26.7%を下回った。
「前年度並み」は34.5%(48社)、「減益」は40.2%(56社)となった。全国調査と比べて「増益」・「前年度並み」が少ない分、「減益」が4割を超え、採算面の悪化を予想している企業の割合が高かった。
産業別では、「増益見通し」で最も構成比が高かったのが情報通信業の57.1%、次いで、小売業、不動産業、運輸業の50.0%となった。「減益見通し」では、農・林・漁・鉱業が減収見通しと同様100%、次いで、小売業、金融・保険業の50%となった。
「Q4.Q3で「減益」と回答された方に伺います。「減益」見込みの理由は何ですか?(複数回答)」との質問では、最多は、「原材料価格の高騰」で、新潟県は87.2%(55社中、48社)に達し、全国の77.3%(1,815社中1,404社)を大きく上回った。次いで、「電気料金の高騰」が30社、「原油(ガソリン等製品含む)価格の高騰」・「人件費の引き上げ」がそれぞれ25社、「円安の進行」が15社だった。
その他の主な回答としては、「豪雨による被災で生産農作物に甚大な被害を受けた」、「半導体不足に伴う商品未入荷→売上延期」などだった。
一方、東京商工リサーチ新潟支店は、結論として以下のようにまとめている。
「増収見通し」の企業は41.7%で、「減収見通し」の25.9%を上回った。ただし、仕入価格の上昇によって販売価格を引き上げたことが売上増の要因となっている面もあり、これが「増益見通し」の25.1%に対して「減益見通し」40.2%の差に繋がっている。
政府は首相を本部長とする物価・賃金・生活総合対策本部の設置を6月21日、閣議決定した。全国約1,600の業界団体に価格転嫁への積極的な対応を要請し、下請事業者15万社へのフォローアップ調査を開始するなど、対策を急いでいる。ただ、今回のアンケート調査ではコロナ禍で、エネルギー価格の高騰、ウクライナ情勢に急速な円安が複合的に重なり、中小企業が「値上げ」や「価格転嫁」が難しい実態を反映したものとなった。
こうした厳しい経営環境を背景に、新規事業の開始やM&A、設備投資などが業績に影響したという回答は低水準だった。長引くコロナ禍で財務体力が低下し、これから成長に向けた積極的な先行投資を実施できないことも浮き彫りにしている。
全国の企業倒産が4月から6か月連続で増加するなか、「値上げ」や「価格転嫁」への取り組みが遅れた企業の息切れが本格化することも危惧される。