新潟市北区の「鳥安」が50周年を機に相次ぎ新商品、「熟カラ」商品開発、卓上焼き鳥機レンタルサービスでウイズコロナ時代に挑む
伝統の味を生かして骨なしから揚げ「熟カラ」をテイクアウトで提供
有限会社山田が運営する新潟市北区の鳥安が、創業50周年をきっかけに新規事業を相次いで打ち出している。新型コロナウイルスの影響でゼロベースの戦略が迫られるなか、ピンチをチャンスに、将来に向けて飛躍としたい考えだ。
鳥安は1971年創業のから揚げ・焼き鳥の専門店。まだ家庭には冷蔵庫がない高度成長に沸く時代に、ビールと揚げ物・焼き鳥という庶民のご馳走を提供し、長く地元に愛されてきた。
から揚げはこれまで、一般的な小さなから揚げではなく、新潟名物の半身揚げにこだわって差別化してきた。ただ、コロナウイルスの影響で来店客は減少。一方でテイクアウトの需要は高まり、売上高の2割程度を占めるまで増えてきた。今後も重要さが増していくことが予想される。世間でも大手企業がから揚げ専門店を出店するなど、唐揚げブームが到来している。「50年間から揚げを作り続けてきた我々が取り組まないでどうするのか」(鳥安を経営する有限会社山田の山田秀行代表取締役)と導入を決意。試行錯誤を重ねて「熟カラ」を2月19日から開始した。
既存の大手外食店との差別化は①安心・安全な国産鶏肉を使用②特製醤油味の漬けだれに24時間漬け込み③50年間継ぎ足しの「旨たれ」だ。最近の若年層は骨つきの食材を敬遠するため、骨なしとした。また近年の低脂肪高たんぱくを指向する傾向に対応するため、もも肉のほかにむね肉もラインナップに加えた。
想定する顧客は近年急増した店舗近隣の新潟医療福祉大学の学生だ。4月から新入生が入学し、日常的な食事需要も多くなる時期だ。栄養価が偏りがちな既製総菜や大手外食店の食事だけでなく「地元の飲食店の手作りの料理で健康的な学生生活を送ってもらいたい」とアピール。時期を見て学割の導入も予定している。現状はテイクアウトのみとするが、将来的には店内での提供も検討する。
「卓上焼き鳥機」の無料レンタルサービスも開始
さらに、2月19日からは新たに「卓上焼き鳥機」の無料レンタルサービスも開始。これまでも日常的にテイクアウトの焼き鳥の注文はあったものの、持ち帰って食べる頃には冷めてしまい、電子レンジなどで温めなおしてもお店の味を再現できないという課題があった。テイクアウトの需要が高まるなかで燕三条のメーカーが作っている焼き鳥機を取り寄せたところ、焼きたての状態に近い状態で提供できることがわかった。子どもがいる家庭では、食事のイベントとしても楽しむことができる。飲食店にとってはスーパーやコンビニエンスストアも競合となるが、山田代表取締役は「近所の人に喜んでもらうには、温かいものを熱々の状態で食べてもらうことが差別化になる」と話す。SNSなどで発信し、早速反響もあった。
新型コロナウイルスの感染拡大を契機に今までの飲食業界の常識・やり方がリセットされることになった。山田代表取締役は「我々のような中小企業にとって現在の社会状況はチャンス。大手企業も含め同業他社が事業縮小を進める今のうちにアフターコロナの経済活動に戻る時のためにプラスアルファの施策を積極的に打ち出していきたい」と話す。
50周年の節目の今年、鳥安ではニューノーマルに対応した店舗改装を実施する。今回の新商品の反響を見ながら今後は「から揚げ・焼き鳥」に特化した店舗展開も視野に入れており、同社が運営するイタリアンレストラン「ノラ・クチーナ」ブランドとともにパッケージとしての出店も検討中である。
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