【連載】長岡が世界へ誇る養鯉業(上)  玉サバ、世界を駆け巡る(株式会社 錦鯉新潟ダイレクト)

容器の中では大量の玉サバが元気に泳いでいた

コロコロと丸く玉のようなかわいらしい体型と、優雅な1枚の尾ひれが特徴的な玉サバは、錦鯉の産地である長岡市発祥の地金魚である。通常、鯉と金魚の混泳は難しいとされているが、「錦鯉にも負けない品種をつくる」という気概のもと、40年程前から品種の改良が進められている。もともとは、玉サバの前身であるサバ尾といわれる長手体型を持つ品種から、徐々に現在のような丸い体型を持つ品種に改良されてきた。寒さに強い庄内金魚と琉金とをかけあわせて作られた品種なので、錦鯉と混泳させることはもちろん、冬でも屋外で飼育ができる。まさに雪国での飼育に適している。

株式会社錦鯉新潟ダイレクト(長岡市)に勤める岡田政樹さんは、10年前から、前任者から引き継ぐ形で玉サバの飼育に従事している。6年間、地道に玉サバの品種改良を重ねてきた。ようやくがっちりとした体格の玉サバが生産できるようになってきたという。岡田さんが生産した玉サバは、北海道から沖縄までの国内のみならず、海外へも出荷されている。近年は、タイ、ベトナムといった東南アジアでの需要が高まっている。出荷される玉サバは、体型や模様、紅の質など、個体の個性によって値付けされ、卸業者や各愛好家の元へと出荷される。

岡田さんによると、玉サバを養殖していく上で大切な要素の一つが「季節感」であるという。春は産卵の時期、そして気温が暖かくなってくれば魚が成長する時期となる。また、秋になって水温が下がってくれば魚は冬眠しようとして餌を大量に食べて脂肪を蓄えようとする。「春・夏・秋・冬という季節感のなかで魚を作ることによって、1年中暖かい気候の地域で育つ魚よりも紅や白地などの色がしまってくる。金魚も季節感を感じないと体を作っていくのが難しい」のだという。

もちろん、生き物相手の商売である。全てを自分でコントロールできない部分もある。去年うまくいったやり方が今年も成功するとは限らない。土砂崩れなどで飼育池が潰れてしまうことや、雨によって池の水質がかわってしまうこともある。「ある程度のグレード以上のものを作るには、自然の変化に合わせて臨機応変に魚を作っていく対応力が大切」と語った。

2022年3月には、長岡市内の生産者や流通業者らで構成された「県玉サバ振興会」が発足した。長岡発の玉サバは、ますます世界中のファンを魅了する。

長年玉サバと向き合ってきた岡田さん。玉サバを育てることのやりがいと大変さについて話してもらった

ハウス内の玉サバたち

玉サバを養殖しているハウス。この場所で育った玉サバたちがやがて世界中に出荷される。

(文・撮影 湯本泰隆)

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