第15回居酒屋甲子園全国大会が新潟県民会館(新潟市中央区)で開催、全国大会に勝ち進んだ猛者が新潟で覇を競う
第15回居酒屋甲子園全国大会が16日、新潟県民会館(新潟市中央区)で開催され、全国各地の地区大会を勝ち進んだ5店舗が一堂に介し、「店の強み」や「地域を元気にする取り組み」を壇上で熱く語った。当日は多くの観客が観戦し、会場内は熱気で溢れた。
居酒屋甲子園は同名のNPO法人が2006年から開催するイベントで、外食業界に働く従業員のやりがいを育てることや、他店の事例を通して学びを共有することなどを目的としている。
居酒屋甲子園史上最多の2644店舗が参加した今大会は、地域から「日本を世界を元気にする」目的のもと全国12地区に分けて予選を開催し、8月に開催された地区大会を勝ち進んだ5店舗が登壇し、それぞれの店舗の威信をかけたプレゼンテーションが観客に披露された。
全国大会に勝ち進んだ5店舗のプレゼンが始まる前に、居酒屋甲子園の第7回大会より発足した店長認定制度。第15回大会では、店長認定制度で認定された108人の店長の中から、志があり成果を残せる店長として代表2名の店長の取組事例を取り上げた。
栃木県「えんてんか 栃木店」早乙女祐平店長
最高のチームを維持し続けるために行う、フィーリングや所作などをチェックする独特な採用面接の方法の説明や真空調理機の活用による月10日間ほど、大学生中心のアルバイトスタッフのみの営業の紹介などが発表された。
独特な採用面接を実施している早乙女店長にチームワークについて話を聞くと、「言い方は悪いですが」と前置きし、「妥協で採用してしまった人がいると、チーム全体が崩れて、仕事が楽しくなくなった経験がある。だから、絶対に妥協で採用しないようにした結果、心地が良いメンバーが集まってくれている」と語った。
千葉県「稲毛海岸北口の串屋横丁」渡辺真一店長
店舗会員アプリを活用した「えこひいき」施策と呼ばれる常連客定着への取り組みの説明や常連客を飽きさせないための様々な取り組み説明。特に目を引いたのが「常連客を名前で呼ぶ」という常連客との心の距離を意識した取り組み。店舗では100人以上の常連客の名前を呼べるスタッフもいるという。
渡辺店長に居酒屋甲子園について話を聞くと、「本当に人との向き合い方も変わったし、自分自身、仕事のやり方も変わったので、今後もずっと関わっていきたい」と話した。
選出された優秀店長の取り組み発表とスピーチが終わると、いよいよ地区大会を勝ち抜いた代表5組のプレゼンが開催された。各々の店舗が考えたアピール方法で、自店での取り組みや想いを発表する。その後、来場者により「最も学びと気づきのある店舗」へ投票が行われ、最優秀店舗が決定する。
関東第1地区代表 東京都「meet meats 5バル 神保町店」
意欲的かつロジカルな業態改善によって、2019年との比較で売上高117%、利益率200%を達成。また、安心・お得・驚き・発見・贅沢という5項目の要素から各料理のテーマを決める「ファイブエレメンツ開発シート」や、料理の価格帯のバランスを分析する「価格バランスシート」などの導入により、メニュー全体の価値を最大限に高めた。同時に、効率的な食材活用やオペレーションも工夫することで生産性を向上させた。
業務改善を通して、「私たちが挑戦することをやめさえしなければ、やり方は無限にある」という考えに基づき、女性が働きやすい環境を整備し、飲食店の人材不足を克服するという目標も掲げている。
東北地区代表 宮城県「石巻狐崎漁港 晴れの日」
地域の人々に愛され続ける特別な存在を目指すという企業理念のもと、会社に埋もれていた取り組みである、誰にとっての「特別な存在」になるべきかをまとめた「コンセプトシート」に、そのための手段を明確にする「マンダラシート」を始め、「リーダー評価シート」や「アルバイト評価シート」などを深堀し、「凡事徹底による基本への立ち返り」で、コロナ前売上対比130%を達成した。
九州第2地区代表 鹿児島県「TAGIRUBA ライカ店」
「問題が起こったことが問題ではなく、問題をどう捉えるかが問題である」という言葉と真摯に向き合い、「生産者とお客様を繋ぐ虹の架け橋になる」というミッションを果たすために、新たなビジネスモデルの構築に挑戦した。
コロナ禍で変化した顧客のニーズに合わせるために、ランチ・せんべろ・ディナー・テイクアウトの四毛作業態として営業し、2022年3月、4月、5月の平均月商は8坪で532万円、坪月商にして66.5万円という大繁盛を実現した。
北陸甲信越地区代表 山梨県「魚屋ちから」
「山梨で一番豪快な魚屋」がコンセプトの店舗。20万人以下の地方都市で街1番の繁盛店を作り、「とりあえず、あそこらへんに行こう」と言わせる街づくりを実践する。
1万円を超える高級店でもなければ、大手チェーン店のような低価格店でもない居酒屋を、「一番中途半端で一番楽しい価格帯」とポジティブに捉え、「客単価3,800円から4,500円のプロ」でありたいという。居酒屋という
どこよりも新鮮な刺身を提供することをコンセプトに、提供スピードの改善、仕組みの簡略化といったメニューの構成とオペレーションを意識し、20坪で月売り1,000万円を超える実績と人時売上高7,000円以上という高い生産性を誇る。
九州第1地区代表 福岡県「博多ほたる西中州本店」
「愛とありがとう」を理念にし、「飲食業を子供達の夢になる志事(しごと)にする」という明確なヴィジョンを掲げる。
人財育成では、「技術」だけでなく「人間性」の向上も大切にしている。「愛の反対は無関心、ありがとうの反対は当たり前。だから、周りの人に関心を持ち、すべてのことを当たり前と思わず感謝できる人財を育成する」ことに注力している。
「ほたる的欲求を満たす」取り組みでは、SNSに投稿したいという利用客のニーズに応えるため、「映える」メニューも積極的に開発。実際に予約数も増加したという。
人間力から生まれる技術力や経営力の向上により、利用客からの信頼も勝ち取り、コロナ前利益率対比180%を達成した。
全国大会に出場した5店舗全てのプレゼンを観客は見届けると、30分ほど時間を過ごし、会場の外に設置してある投票箱へと歩を進めた。
第15回居酒屋甲子園全国大会の最優秀店舗は、北陸甲信越地区代表「魚屋ちから」に決定
受賞した「魚屋ちから」には、NPO法人居酒屋甲子園の山崎 聡理事長から表彰状贈呈が行われた。続いて、記念盾、優勝旗の贈呈も行われ、会場内は大きな拍手に包まれた。
最優秀店舗に輝いた「魚屋ちから」代表の塩沢大輔氏は、「僕が居酒屋甲子園に出会ったのは18歳の高校生の時。それから、「てっぺん」という居酒屋に出会って人生が変わった。それから順調に進んでいたが、3年前に心が何回も折れた。その時、父から「理念を大切にしろ」と教わった。改めて、人生観を考えた。もっと居酒屋を勉強して、もっとお客さんがものすごく酔っ払える、そんな空間を作るプロ集団でありたい」と語った。
大会終了後のインタビューでは、「山梨って、『陸の孤島』といわれるような、空港がなくて、港がなくて、新幹線がなくて、交通の便が悪い場所。でも、そんな街が好き。もし、全国のお客さんが「魚屋ちから」の名前を知ってもらって、山梨県に来てもらうことがあるのなら、すごくコアで良い店がたくさんあるので、そこを紹介させてほしい」と地元愛を見せ、呼び掛けた。