連載⑤ 流通最前線「熾烈な競争を繰り広げるドラッグストア業界」(上)

熾烈な競争を繰り広げているドラッグストア業界

ドラッグストア業界は群雄割拠の状態から今やウエルシアホールディングス、ツルハHD、コスモス薬品、さらに今年10月1日にマツモトキヨシホHDとココカラファインが経営統合し発足する「マツキヨココカラ&カンパニー」が熾烈な競争を繰り広げている。この業界上位は、ほぼこの大手4社を軸に集約されてきていると言ってもいいほど、今後4社のうちどこが抜け出してくるかが業界の焦点となっている。

「ドラッグストア業界は今後10兆円どころか20兆円や30兆円の市場規模になる可能性がある」。ドラッグストアの業界団体である日本チェーンドラッグストア協会の池野隆光会長は今後の業界の先行きに自信を示す。それもそのはず、ドラッグストア業界はコンビニ業界などが停滞しているなかで成長が顕著だからだ。日本チェーンドラッグストア協会によると19年のドラッグストアの売上高は7兆6859億円で前年比5・7%増となった。20年はマスク需要もありさらに高い伸びだったとみられ成長が鈍化しないのだ。

ドラッグストア業界の店舗数は現在、約2万店。7兆6000億円の売上高規模でこの店舗数であることから池野会長が示す市場規模が20兆円という市場になるためには「食品スーパーやホームセンターの商材を取り込む」とみられ、コンビニから顧客がドラッグストアに流入することも含まれているのだろう。業界の売上高が20兆円ともなれば店舗数も現在の倍以上、5万店という店舗数が現実味を帯びてくる。5万店といえばコンビニエンスストアの市場規模と同程度。つまり、今後ドラッグストアの店舗はコンビニの店舗数が減らない限り1店当たりの商圏人口の規模は小さくならざるを得ない。

「次はコンビニとドラッグストアの小商圏で争いが激化する」(コンビニチェーン幹部)という声も強くなっている。ファミリーマートやローソンの首脳がすでにドラッグストアとの競争も激化していると認めるように、コンビニ業界全体の売上高はコロナの感染拡大が確認されて以降、落ち込んでいる。

日本フランチャイズチェーン協会が発表している毎月のコンビニ既存店売上高統計によれば昨年3月から今年1月まで11か月連続で減少した。これに対し大手ドラッグストアの売上高はコロナ禍以降、絶好調だ。ウエルシアHD、ツルハHD、さらにコスモス薬品の上位3社の売上高は昨年10月は19年10月の消費税引き上げによる反動で落ち込んだり低迷したりしたが、それ以外、一貫した伸びが続いている。

まさにコンビニの落ち込みとそれに連動するようなドラッグストアの伸び率は両者が相関関係にあり同じ商圏内で競合していることを示している。ファストフードなど即座に食べられる商品以外なら、ほとんど揃うドラッグストアにコンビニのお客が流れる構図だ。

もちろん、ドラッグストアは加工食品などを客寄せに安く販売しており食品の次いで一般用医薬品や化粧品という粗利益率の高い商品を購入してもらうというビジネスモデルのため他業態に比べて競争力は高い。食品スーパーやコンビニがドラッグストアに対抗して主力の食品の価格を安く売っても有利に運べないからだ。小商圏での王者はこれまでコンビニと決まっていたが、そんな業界の構図も怪しくなっているのだ。

「業界はだいたい3―4社に集約される」。現在業界2位のツルハHDの鶴羽順社長はこう話した。ドラッグストアは食品スーパー、コンビニを撃破し、近未来の小商圏の王者に君臨することになるのか――。

 

流通最前線「熾烈な競争を繰り広げているドラッグストア業界」(下)に続く。

 

流通ジャーナリスト 青山隆
流通専門誌、大手新聞社記者を経て、流通ジャーナリストとして活動中。青山隆はペンネーム。

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