安禅寺で御開帳、新しい縁日文化を創造 「ねこにこマルシェ」「TERAフェス」など同時開催(新潟県長岡市)

安禅寺毘沙門堂のご開帳は、若い人たちで賑わう

今月19日、鮮やかな紅葉が広がる安禅寺(新潟県長岡市)境内では、毘沙門堂の御開帳に併せて、「ねこにこマルシェ」が開催された。同マルシェは、「怪我なく、仲良く、楽しく」を合い言葉に県内各地にゲリラ的に開催されるマルシェイベントである。今回は、寺院の境内を使って開催されたため、“お寺と猫と私・・・”という副題がつけられた。城跡や本堂では、12店舗の物販ブースやワークショップ、4台のキッチンカーが所狭しと並んでいた。また、音楽イベント“TERAフェスin安禅寺”も同時開催され、参道は多くの子どもたちや動物連れ、高齢者などの参拝客の姿で賑わった。

今回のイベントを企画したのは「蔵王堂城史跡をまもる会」(福田弘会長)と有志からなる「ねこにこマルシェ実行委員会」である。「蔵王堂城史跡をまもる会」は、蔵王堂城の史跡と安禅寺の保存維持を目的に10年以上前から活動している。普段は、史跡や境内周辺の草刈り・除雪作業などを行いながら、毘沙門堂の御開帳などを定期的に行っている。ボランティアガイドを通して、史跡や同寺の素晴らしさを市内外の人たちにPRしている。

一方、「ねこにこマルシェ実行委員会」は、新型ウィルス禍によって、イベント出店の機会が少なくなっていた人たちの活動の場を作る目的で、2年ほど前から活動している。安禅寺や史跡の活用を通して、さらに多くの人々に同地の魅力を知ってもらいたいという「蔵王堂城史跡をまもる会」の考えと、「出店する場所を作りたい」という「ねこにこマルシェ実行委員会」の考えが一致し、今回の企画が実現に至った。

同寺での開催としては2回目である今回は、ステージパフォーマンスにも力を入れようと、長岡市内でBloom Box Dance Studioを主宰している佐藤訓大さんと、新潟県内を中心にHeartful Musicなどの音楽イベントを主宰している八木友樹さんの協力を得て、“TERAフェスin安禅寺”も同時開催した。午前中は、もりきゅあ、わたなべ矢的、石内裕之などのアーティストによる音楽ライヴ、午後からは同ダンススタジオに通うキッズダンサーたちによるダンスパフォーマンスが披露された。午前中のライヴの様子はインターネット配信を通して世界中に伝えられた。

本堂手前ではBloom Box Dance Studioのキッズダンサーたちによるパフォーマンスが披露された

おもちゃなどの雑貨の販売とクリスマスツリー作りのワークショップをしていた中村友絵さん(40代)は、「お天気にも恵まれて、景色もすごく良い。お寺での出店は今回が初めてだが、このような歴史あるお寺で出店させてもらって良かった」と出店できる喜びを実感しているようだった。

イベントに参加した70代女性は、久しぶりに同寺を訪れたという。「かつて安禅寺にも浦瀬の裸祭りのようなお祭りがあった。今日の賑わいをみて昔のことを思い出した」と懐かしそうに語った。

東京都、千葉県、神奈川県といった県外からも参加があった。マルシェの企画をした「蔵王堂城史跡をまもる会」会長の福田弘さん(75歳)は、「御開帳とイベントを一緒にやると、人の流れが違う。まずこの場所を多くの人に知っていただくことが重要。今日は賑やかな様子でうれしい限り」と満足そうな様子である。

「ねこにこマルシェ実行委員会」事務局は、「これまで、新型ウィルス禍でも加茂市の古民家で実験的にマルシェを企画・運営し、今回歴史的にも素晴らしい価値を持つお寺境内でのマルシェイベントの実現に至った。我々の関係者は、物販関係者だけではなく、アーティストやデザイナー、地域史研究者など多様な経歴を持つ人材に溢れている。今後もこれまでと同様、要望があれば会の持つ様々なネットワークを駆使し、県内各地に未来志向型の新しい“縁日文化”を創造していく」と、コメントを寄せている。「今後も安禅寺では、年2回程度のペースでマルシェを続けたい」と括った。ご開帳は19日、20日の2日間に渡って行われた。

かつて地方寺院には、仏教の教えとともに最先端の文化をその土地に根付かせるという役割が期待されていた。動画などの配信サービスが発達した現代では、地方寺院で誕生した文化でさえ、全世界に発信していくことが可能になる。安禅寺を中心に、蔵王から世界へと、新しい縁日の文化が広っていく。若い人たちの新しい発想を“強み”に持つ安禅寺の御開帳に、これからもますます目が離せない。

本堂で熱唱するもりきゅあさん

イベントの成功を喜ぶ出店関係者一同(ねこにこマルシェ実行委員会提供)

(文・撮影 湯本泰隆)

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