【妻有新聞】「シリーズ連載 明日へ」 大学生3人起業、合同会社「森の三方よし」 津南中等卒業生 地元に本社、森林保全で「スギアロマ」商品化
「新たな森林サイクルを生み出し、故郷に貢献したい」。10代の大学生女性3人が、学生起業した。合同会社森の三方よし。登記地は3人の母校がある津南町に置いた。共同代表は、藤野美咲さん(18、慶応義塾大総合政策学部1、津南町出身)、小西愛咲さん(19、筑波大医学群医学類1、十日町市出身)、鈴木慧美さん(東北大理学部生物学科1、同)。県立津南中等教育学校の探究学習『津南 妻有学』でチームを組んだ3人だ。第一弾事業にスギの葉を使ったアロマオイルを生産、津南町のふるさと納税返礼品にしようと動いている。学生起業者3人が、一歩踏み出した。
「森よし、私たちよし、ふるさとよし」。この理念がスタートライン。町内の杉林が多い風景に違和感を覚えたのが始まり。使い時を迎えた杉が使われずそのまま残り、花粉症の原因にもなっている状況を知る。そこで使い時を迎えた杉を伐採しアロマオイルや学校の備品を作り、代わりに広葉樹を植樹。植樹は地元小学生に協力してもらい森に愛着を持つ契機にし将来の広葉樹活用に繋げる森林サイクルを考案。広葉樹植樹による景観整備、さらに街中でのクマ出没も減らせると考えた。
近江商人の活動理念「買い手よし、売り手よし、世間よし」をイメージし、探究学習チーム名「森の三方よし」が生まれた。3人の提案に関心を持ち、町森林組合も協力。6学年時にニュー・グリーンピア津南で植樹を実施。妻有学提案の実践は初。これまで使われなかった間伐材のスギの葉を原料にアロマオイルも試験製作。同津南で20本限定販売したところ完売。手応えを感じ、学生起業を意識し始めた。「卒業しばらばらになっても、この3人ならずっと続けて活動できると確信がありました」。
3人の受験が終わった今年3月から会社設立に向け準備開始。4月からそれぞれ大学へ進み住む場所は離れたが、毎週1回のオンラインミーティングを継続。スギの伐採・商品販売・広葉樹の植樹を会社の三本柱に据え、まずはスギアロマオイル生産販売から始めることなど、事業計画を詰める。8月31日に「合同会社森の三方よし」を設立。「自分たちの会社ができたことで、モチベーションが上がりました。覚悟も生まれ、やるぞと気運が盛り上がっています」。
掲げる企業理念は、「町を彩る、未来へつなぐ」。込めた意味は「スギを切り津南の景観を良くしようと言うのが出発点。木は育つまで何年もかかるもので、過去から未来に繋がるサイクルを作り広めたいという思いを込めています」。ホームページを自作し、SNS・インスタグラムで発信も開始している。公式ロゴマークに「△」が三つ並ぶのは、「三」に縁があると感じているから。共同代表は三人、伐採・植林・アロマオイルの三事業、そして「三方よし」。
先月29日、町と町森林組合が連携し行った植樹祭で久しぶりに直接顔を合わせた3人。文化心理学研究に関心を持ち学んでいる藤野さんは「この植樹祭の契機に私たちの提案があったのは嬉しい。植樹は20~30年以上後に繋がる時間がかかるもの。今はまだ力はないですが、津南町によい未来が続くよう会社としても頑張りたい」。形成外科医となるため医療の道を歩む小西さんは「3人ともこれから学業が忙しくなりますが、週1回のオンラインミーティングは絶対続け、私たちの事業と理念に賛同してくれる人が増えるようにしたい」。遺伝子研究に関心を持つ鈴木さんは「会社経営にも興味が増しています。自分たちが起業の当事者になる経験はなかなかありません。さらにこれから踏み出すことは楽しみが多いです」。未来に繋がる森林サイクル構築へ、夢が膨らむ。
【妻有新聞 2022(令和4)年11月19日号】