【道の駅特集】全国に誇る道の駅の歴史、道の駅発祥の地「道の駅 豊栄」(新潟市北区)【動画あり】
ドライブ中の休憩場所にとどまらず、地域の農産物直売所やレジャー施設などが入る複合施設も増え、観光スポットとしても多くの利用者が訪れる「道の駅」。2022年8月5日時点で、全国で1,198駅の登録があり、新潟県内においては、42駅が登録されている。
そんな中、「道の駅発祥の地」と書かれた石碑が建てられている場所が新潟県に存在する。新潟市北区の国道7号線(新新バイパス)に隣接する「道の駅 豊栄」だ。
県内の「道の駅」では最も古く、ドライバーの休息場所として長年愛されてきた「道の駅 豊栄」について、富樫豊駅長や施設スタッフなどに話を聞いた。
「道の駅発祥の地」たる所以
国が「道の駅」を制度として制定し、施行したのが1993年。この時、第1回の「道の駅」として全国で103駅が登録となり、「道の駅 豊栄」は、そのうちの1駅である。ではなぜ、「道の駅 豊栄」が、発祥の地として名乗っているのか。
実は、全国には他にも「道の駅」の構想となったと考えられている場所が複数あり、「発祥の地」としては、「所説ある」と言われている。
「道の駅 豊栄」は、「道の駅」制度が施行される5年前の1988年11月10日に、「豊栄パーキングエリア」としてオープンした。これは当時、日本で初めて一般国道に設置されたパーキングエリアだった。「道の駅」制定よりも古く、のちの「道の駅」としての機能を兼ねそなえた場所だったことから、「発祥の地」と名乗っていると考えられる。
「道の駅 豊栄」が隣接する国道7号線は、新潟市西区から新発田市までの区間約37キロメートルをつなぐ物流の大動脈であり、交通量は全国トップクラスだ。物流をささえるトラックドライバーなどの休憩所として、長年多くの人に利用されてきた「道の駅 豊栄」は、県内各地の道路状況が確認できる情報ターミナルのほか、売店、軽食堂、自動販売機コーナーを備える。
「道の駅 豊栄」の拠点性について、富樫駅長は、「山形方面や福島会津方面、そして北陸方面と、この場所はさまざまな道路の接点となる場所。休憩する場所が必要だということで、豊栄パーキングエリアが出来た。トラックドライバーなどがここで休憩したり、仮眠をとったりしてから、また目的地を目指して出発していく」と話す。
物流を担う人たちのほっと息をつくことができる場所として、長年多くのトラックドライバーなどに利用されてきた。
ビジネスマンや家族連れに愛される休憩施設として
「道の駅 豊栄」の特徴の一つは、老舗ならではのいい意味での「素朴さ」ではないだろうか。「軽食堂」や「売店」と書かれた看板に、昭和の空気感が漂う。軽食堂は、そば・うどん・カレー・ラーメンなど、パーキングエリアらしい定番メニューが並ぶ。メニューに派手さはないが、ここを利用するビジネスマンからは、「早くておいしい」と評判だ。
一方、売店には、地元農家が生産した農作物が並ぶ。梨や柿などの季節の果物のほか、収穫されたばかりというカブや大根など、新潟市北区で生産された農作物を中心に販売している。中でも人気なのが、北区の特産としてブランド化したさつまいも「しるきーも」だ。しっとりとした食感や濃厚で美味しい甘みが特徴で、売店のレジ横では、焼きたての「しるきーも」を販売している。県外から「しるきーも」を買い求めに足を運ぶリピーターもいるという。
また、「道の駅 豊栄」の施設の裏には、ダチョウ4羽が飼育されている「とよさかダチョウファーム」がある。このあたりでは珍しいダチョウの様子を見物に、家族連れや幼稚園の団体などが訪れて楽しんでいる。
この施設を運営している農事組合法人ファーム横土居(新潟市北区)の加藤國夫代表理事に、なぜダチョウを飼育しているのか伺った。加藤代表理事によると、以前この地域において、田んぼから大豆を栽培する農地転換を行ったという。大豆の生産において、出荷できない規格外の大豆が大量に出たことから、「捨ててしまう規格外の大豆を、何かに活かせないか」と考えた。そうしたところ他県で、ダチョウに大豆を食べさせているという情報を得て、「道の駅 豊栄」に、もっと多くの人が集まる一助になればと考え、ダチョウの飼育を始めたということだ。
ダチョウが産んだ卵は、「道の駅 豊栄」の売店で販売する。しかし、冬季はあまり卵を産まないそうで、店頭に並ぶ日は少ないという。春先から夏にかけて卵を多く生むようになり、多い日は1日4、5個が並ぶ日があるそうだ。なお、ダチョウの卵1個は、一般的な鶏の卵21個分の大きさがあり、3,000円から4,000円程度で販売する。
また、「道の駅 豊栄」の屋外施設には、約1万平方メートルの広さを持つ公園も整備されている。公園は小高い丘になっていて、「道の駅 豊栄」全体や、周辺の風景を見渡せる。遊歩道はバリアフリー化されているので、車椅子でも公園を楽しむことができる。晴れた日には、自然を感じながら、気分転換するのにはうってつけの場所である。
歴史を刻み続ける大動脈の「オアシス」
「道の駅」が制定される前から存在し、長年多くの人の憩いの場所として利用されてきた「道の駅 豊栄」。
新潟の物流を支えてきた「オアシス」といっても過言ではなく、新潟県の「道の駅」を語る上ではもちろん、日本の「道の駅」史においても重要で、特別な場所と言えるのではないだろうか。
長年多くの人を癒し愛され続けている「道の駅 豊栄」。国道7号線バイパスを走る車の流れと、めまぐるしく変化する「時代の流れ」を見守りながら、これからも「道の駅」の歴史を刻んでいく。
(文・撮影 中林憲司)
【関連記事】
【道の駅特集】過去に道の駅売り上げ日本一になった「道の駅あらい」 県内唯一の高速道路との連結、飲食店の多さが人気の秘密(2022年11月19日)