新潟県長岡市立阪之上小学校が英語劇「米百俵」 マスク装着のなか、素晴らしい演技を披露

救援米を求める藩士達に落ち着くように諭す虎三郎

11月25日、流暢な英語の台詞がリリックホール シアター(新潟県長岡市寺島町)内に響き渡った。長岡市立阪之上小学校(小海伸幸校長)6年生「みらい学年」57名の児童による英語劇「米百俵」の上演である。

同劇は、戊辰戦争で敗れ、困窮した長岡藩に救援米として届いた百俵のコメをめぐるエピソードを英語劇としたもので、同校創立の由来でもある。児童たちは6年間かけて、長岡の自然や歴史、文化、そして米百俵の精神を学び、その集大成として、卒業前に英語劇として発表する。2004年の同校創立130周年のときに初めて発表されてから、今年で19回目を迎える。小林虎三郎の視点を中心に、河井継之助、三島億二郎などとの交友関係、戊辰戦争前後などの様子を描きながら、全4場面から成っている。山本有三氏が戯曲化した同名の作品の影響を受けながら、随所に児童達の学習成果が盛り込まれている。

本格的な練習は、夏休みが明けた頃から始まった。台詞あわせからはじめ、各場面に応じて動きをつけていき、発表まで3ヶ月ほどの短い時間のなか、かなりの完成度の高い劇に仕上げることが出来た。万全な感染症対策の中、演じている児童も全員、マスクを装着した上での演技だったが、どの台詞も客席から明瞭に聞き取ることができ、全く違和感を覚えさせない。BGMや舞台効果を上手に活用し、臨場感溢れる、真に迫った演技だった。英語の台詞に関しては、日本人の英語の先生やネイティブ・スピーカーの先生から発音の指導を受けたというから、聞き取りやすい英語だったのも納得できる。

第4場面で小林虎三郎役を熱演した青木悠二郎さん(12歳)は、「台詞を覚えるのも大変だったが、演技が難しかった」と練習の様子を振り返る。動きがある場面よりも、(ずっと座っているような)動きがない場面ほど、虎三郎の気持ちを表現することが難しく、何度も先生方から演技指導を受けたという。

「小林虎三郎が、“米をくれ”と迫る人々に“学校を作ろう”と提案するのは、当時としては命がけの決断だったはず。勇気ある行動をとった虎三郎は素晴らしいと思う」と、地元の偉大な先人に想いを寄せる。

そんな青木さんに「将来の夢は?」と質問してみた。記者に聞かれて少し考えた後、「公認会計士かな」と大人っぽく語る若い虎三郎の姿に、同校に脈々と受け継がれている米百俵の精神、その片鱗をみた。

幼少時の小林虎三郎。病気のため左目を失う

西軍との壮絶な戦闘シーン

英語劇が行われたリリックホール

「将来は公認会計士かな」と語る青木悠二郎さん

(文・撮影 湯本泰隆)

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