「茶道文化、若者にも関心を」新潟県長岡市茶道文化協会が小和田哲男氏を招聘 し、文化講演会を開催
“晩秋”という言葉がすっかりふさわしい日々を迎えた。天気予報をみると雪のマークが少しずつ見え始め、冬の訪れを感じている読者も多いのではないだろうか。そのような中、秋らしい講演会が27日、ホテルニューオータニ長岡NCホール(新潟県長岡市)で催された。長岡市茶道文化協会(和田裕 会長)による「文化講演会」である。同協会は、茶道文化を通じて流派を超えた会員同士の交流と、次世代への茶道文化の継承などを目的とし、2016年から活動を行っている。その中でも、「文化講演会」では、同協会が最も力をいれている催し物のひとつである。
毎年茶道に関わる人物を講師に招き、お話を伺う。昨年は新潟県下でも新型ウィルスによる大規模な感染拡大が懸念されたため、開催を延期せざるを得なかった。一年越しの想いがようやくこの度実現し、関係諸氏は、ほっと胸をなで下ろしている。
草月流の活け花で飾られた壇上には、NHKの大河ドラマで時代考証などを手がける小和田哲男氏(静岡大学名誉教授・文学博士)が、『戦国武将と茶の湯-必須の教養だったのはなぜか-』というテーマで、260名の聴衆を前に、大河ドラマの裏話などをユーモラスに交えながら話をした。
山の上の古戦場など、意外なところからも茶道具などが発掘されることや、南九州の戦国大名島津義久(しまづよしひさ)の家老・上井伊勢守覚兼(うわいいせのかみかくけん)が残した『上井覚兼日記』の記述などを紹介し、また、残されている文献資料や逸話などを元に、織田信長、豊臣秀吉、黒田孝高(如水)などそれぞれの武将たちと茶の湯との関係性について考察した。
小和田氏は、(常に死の危険にさらされている)緊張状態の中で、茶を飲むという行為は武将達にとって心の慰みとなった。また、同じ部屋、同じ茶器での仲間達との「共飲共食」(きょういんきょうしょく)は、連帯感や輪を大切にする武将達の仲間意識を強める役割があったのではないか、と指摘する。「緑色の“茶”というものは、なんとなく心を和ませる。ゆったりとした気分が、戦国武将たちにも必要だったのではないか」と考察した。1時間30分ほどの講演の後は、参加者からの質問も複数あった。
同会の和田裕会長(71歳)は、「茶道は総合芸術。流派を超えた茶道文化を中心とした日本文化を、特に若い人たちに興味を持ってもらいたい」と、今後の茶道文化の普及にも意欲的に語っていた
夕方には懇親会も開かれ、「久保田」「朝日山」「壱醸」などの地元の銘酒に囲まれながら、「講演後会場での質問は出にくいものだが、熱心に聞いていただき、質問も出てよかった」と小和田氏は満足な様子で語った。栃尾城が大好きで、これまで2度ほど長岡に足を運んだという小和田氏にとって、長岡は「お酒(熱燗)が美味しい」という。「もう1回来たいと思っている」と好印象である。
(文・撮影 湯本泰隆)