地元愛を笑い文字で表現、新潟県長岡市台町で笑い文字展が開催
曲線をベースとした文字に、ところどころ笑顔の人物が顔をのぞかせているのは、アート書家の廣江まさみさんによって考案された“笑い文字”といわれる作品である。
新潟県長岡市にある台町会館(新潟県長岡市)では1日から、「笑い文字展~やっぱり長岡が好き~」が開催されている。主催は、長岡市出身のあまのそうこさん(64歳)である。
あまのさんは、自身で笑い文字を描く傍ら、講師としても市内のカルチャースクールなどで描き方の指導している。これまでも市内の郵便局などで自身の作品を展示してきた。
「笑い文字はただ描いただけでは何もならない。相手が喜んでくれることによって、自分もうれしくて気持ちよくなる」とあまのさんはいう。「笑い文字を通して感謝と喜びの循環をつくることができる。笑い文字は、感謝と喜びを伝えるコミュニケーションツールである」としている。
あまのさんは地元の高校卒業後、専門学校進学を機に上京、そのまま東京の会社に就職した。結婚、出産を経て、笑い文字に出会ったのは今から7年ほど前、横浜市内で暮らしていたときだという。
当時、笑いヨガを習っていたというあまのさんは、所属していた笑いヨガのコミュニティで初めて、笑い文字というものがあることを、知人を通して知ったという。最初は全くわからなかったが、知人に「貴女も描けるようになるわよ」といわれて興味を持ち、学び始めたという。
自分が描いた笑い文字を誰かにプレゼントすると、受け取った側は凄く喜んでくれた。相手の喜ぶ様子をみて、あまのさんのなかで「自分が何かしたことで、こんなにも人が喜んでくれる」ということに喜びを感じたという。「もっと上手に描けるようになりたい」という向上心がふつふつと湧きあがった。そうして研鑽を積み重ねていくうちに、気がつけば自身が講師として、指導する立場になっていたという。
横浜市内で活動していたときのことだったという。ある日、実家から一本の電話がかった。それを機に、10年も音信不通だった長岡市に住んでいる両親の元へと定期的に戻るようになっていった。横浜市と長岡市という二拠点での生活を送るなかで、笑い文字を通して色々な人とのつながりができ、地元に対する考え方にも変化が生じた。「長岡は、山があり川がある自然が豊かなところ。やっぱり長岡が好きなんだな」と思うようになったという。
笑い文字は、母と子の絆も取り戻してくれた。「貴女がなにをやっているのかわかって安心したよ」。亡くなる直前にあまのさんの母親があまのさんに語った言葉だという。地元で、親子一緒に過ごしていくうちに、次第に苦手だった母親との関係も改善していった。2019(令和元)年、あまのさんは嫌いだったこの街に再び戻ってくることに決めた。
今後は、地元から一人でも多くの笑い文字の講師を誕生させたいとあまのさんは考えている。「笑い文字は、字が下手でも、センスがなくても、絵が描けなくても、誰でも描けるようになる。是非とも皆さんも、気軽に描きに来てください」と、笑い文字にも負けないくらいの満面の笑顔で、あまのさんは語った。
展示は15日まで。地元愛に溢れる展示となっている。9日、14日、15日の午後は、あまのさん自身も在廊し、来場者の名前を笑い文字で描く。