新潟県の後継者不在率が2011年以降で最低を更新 2017年以降3年連続で低下
地域の経済や雇用を支えているのは中小企業だ。だが、近年は後継者が見つからないことで、事業が黒字でも廃業を選択する企業は多い。日本政策金融公庫の調査では、60歳以上の経営者のうち50%超が将来的な廃業を予定。このうち「後継者難」を理由とする廃業が全体の約3割に迫る。後継者が不在のなか、新型コロナウイルスによる業績悪化などが追い打ちとなり事業継続を断念する事例も想定され、その回避策として事業承継支援が今まで以上に注目されている。
帝国データバンクの調査によると、新潟県の後継者不在状況は、全体の57.2%で後継者不在だった。2019年(58.2%)と比較すると0.1%下回ったものの、依然として6割弱と高水準だ。社長年代別では、「30代」が85.9%で最多となるなど、事業承継時期に差し掛かっていない若い世代で後継者不在率が高くなった一方、高齢層では後継者の選定が進み、後継者不在率が低下する傾向にあるが、「80代以上」の後継者不在率は上昇する結果となった。前年として同年代の事業承継が進んだこと、休廃業・解散予備軍が増えたことなどにより比率が押し上げられたとみられる。
地域別の後継者不在状況をみると、全国で9地域中4地域で前年を下回った。「新潟県」が属する「北陸」は2年ぶりに増加した。「北海道」は調査開始以来一貫して全地域中最も高いものの、3年連続で前年を下回った。「関東」「近畿」では過去最低となった。一方、「四国」「九州」は5年連続、「中国」は2年連続で上昇。「中部」は3年ぶりに増加した。特に、中国以西の西日本地域で後継者不在率が上昇している。
都道府県別では、「新潟県」は全国的には36番目と比較的低位となった。「沖縄県」が全国平均(65.1%)を大幅に上回る 81.2%で全国トップ。このほか、「鳥取県」(77.9%)は全国 2 番目の高水準。「山口県」(75.3%)、「島根県」(73.5%)など、上位10県中4県が中国地方で占められた。全国最低は「和歌山県」(44.8%)だった。
この結果、昨年から後継者不在率が低下した都道府県は18、上昇した都道府県は27となった。
首都圏1都3県もすべてで昨年から低下した。一方、「四国」は4県すべてで、「中国」は広島県を除く4県で上昇した。他の地方でも、主要都市を擁する都道府県では後継者不在率が低下した半面、その周辺地域では反対に上昇する傾向にある。
業種別で最も不在率が高いのは「建設」の64.9%だったが、前年比では 2.3ポイント下回った。
最も低いのは「運輸・通信」で50.0%。一方、業種中分類別でみると、運輸・通信の「郵便・電気通信」が100.0%で最高となったほか、小売の「家具類」(80.8%)も8割を超えるなど高水準となった。
前年からの比較では「その他」を除く7業種中4業種で前年を下回り、低下幅では「不動産」(2019年 61.7%→2020年56.4%、△5.3ポイント)が最も大きかった。
2018年以降の事業承継が判明した約550社について、先代経営者との関係性(就任経緯別)をみると、2020年の事業承継は「同族承継」により引き継いだ割合が42.1%に達し、全項目中最も高かった。しかし、2018年からは3.7ポイント下落しており、「同族承継」による事業承継割合は低下傾向にある。
一方、血縁関係によらない役員などを登用した「内部昇格」も31.7%と 3割を超えた。社外の第三者が就任した「外部招聘」は7.9%で、前年比で上昇した。
県内企業の事業承継は、同族間での事業引き継ぎから外部招聘など社外の第三者人材へのシフトが緩やかに進んでいる。
後継候補が判明する新潟県約1800社の後継者属性をみると、「子供」が 40.9%で最高となり、「非同族」(28.4%)、「親族」(17.0%)、「配偶者」(13.7%)が続いた。
承継を受けた社長の先代経営者との関係別(就任経緯別)に後継者属性をみると、「子供」を後継者候補とする企業が多いのは「創業者」(61.3%)と「同族承継」(49.3%)だった。
他方、社内外の第三者である「非同族」を後継候補に位置づけているのは「内部昇格」と「外部招聘」、買収などを含む「その他」に多い。
年代別に見ると、60代以降の社長では後継候補として「子供」を選定するケースが多い一方、40代以下の社長では「親族」や「非同族」を後継候補としている企業が多い。
今回の調査では、2020年における新潟県の後継者不在率は57.2%だった。比率は3年連続で低下してはいるものの、企業の6割近くが後継者不在と高水準の状態が続いていることに変わりはない。
帝国データバンク新潟支店が昨年10月に発表した「事業承継に関する企業の意識調査(2020年)(新潟県)」では、7割に迫る企業が事業承継を経営上の問題と認識しているなか、約4割で事業承継の計画がある一方、うち半分以上は計画が進んでいないとの調査結果が出ている。具体的な計画については、まだ進めることができていない企業は依然として多く、自治体や金融機関の事業承継に対する支援、各企業の取り組みが本格化することが求められる。
こうしたなか、新潟県では、低下傾向にあるとはいえ、6割近い企業が後継者問題に直面している現状に変わりはない。菅義偉政権は中小企業の再編を促す構えをみせるほか、中小企業の経営に伴走・支援する側の地域金融機関も再編が進み、新潟県においては 2021年1月1日付で、長年県内企業の経営を支えてきた第四銀行と北越銀行が合併し新たに「第四北越銀行」が誕生するなど、中小企業を支援する側にも変化が訪れている。中小企業庁が 2017年7月に事業承継支援を集中的に実施する「事業承継5ヶ年計画」の策定を皮切りに、中小企業の経営資源の引継ぎを後押しする目的で開始した「事業承継補助金」の運用など、円滑な事業承継に向けた積極的な支援が進んでいる。
今後は、ビジネスモデルや事業の将来性が見込める企業へ支援の資源を集中させるなど、事業承継支援の在り方=「質」の変化にも着目して動向をみる必要がある。