ヤマト運輸が新潟県三条市と包括連携協定、三条市立大学では運送やロジスティクスの講座を開設
ヤマト運輸株式会社は16日、新潟県三条市および三条市立大学との協定をそれぞれ締結した。同社は今後、市とは物資配送を含む広い分野での連携を、三条市立大学では物流などに関する寄付講座を開催していく。
ヤマト運輸が新潟主管支店管内で自治体と包括連携協定を結ぶのは、佐渡市、燕市につづき三条市で3例目。三条市との間にはこれまでにも、2020年に災害時の物資支援などに関する協定を結んでいた。また、三条市が現在力を入れるふるさと納税の配送に関しても協力体制を敷く。
今回は、これまでの災害時やふるさと納税に関する支援に加え、集配時における地域の見守り活動などの「地域づくりに関する内容」や、市立図書館自動車文庫への協力といった「地域人材育成に関する内容」、そして市の魅力発信や産業振興などの7項目が「協定による取り組み案」に盛り込まれた。
16日に開催した、ヤマト運輸、三条市、三条市立大学合同の締結式で滝沢亮市長は「ふるさと納税ポータルサイトのレビューを見ると、配送への高評価を多くいただいていて、(ヤマト運輸には)1分1秒でも早く返礼品を配送していただいていることに感謝している。地方創生を実現させるためには、行政単独ではなく、地域全体で取り組む必要がある。ヤマト運輸をはじめ、民間の支援を得ながら『選びたくなるまち』の実現を積極的に進めていきたい」、藤岡昌樹支店長は「さまざまな社会課題がある中で、官民学で取り組む重要性が増している。それぞれが有する人的物的資源を活用することで、地域の活性化に繋がる。この協定を機に、地域の活性化と持続可能な地方創生に貢献していきたい」と語った。
三条市立大学とは寄付講座の設置に関する協定を締結した。今後、3年生のカリキュラム内で、原材料調達から顧客の手元へ届くまでの物流に関する「ロジスティクス論」の講座を設置する。同大学は座学だけでなく企業との連携による実学に力を入れる点で特徴的だが、「ロジスティクス論」でも、ヤマト運輸社員を講師に招き、また実際の物流拠点の見学など実地に出て学びを深める。
三条市立大学のアハメド・シャハリアル学長は「実学志向の学びは我々にとって何よりも価値が高く、追い求めているもの。アイデアの段階から顧客の手に届くまでがイノベーション。ロジスティクスの最前線にいる企業から臨場感を持って学べるのは大変意義深い」と期待を寄せる。
ロジスティクス論で教鞭を取るのは、新潟主管支店管内の横木剛氏。ヤマト運輸で働きながら、近世日本の物流についても研究する。著書に、新潟湊における廻船問屋の経営を分析した『新潟の廻船問屋』(アミックス 2021年)。
横木氏は今回の講座について「学生たちは『良いモノを作れば売れる』という意識が強いかもしれないが、原料やパッケージのための箱、そういったもののロット、それらをどこから持ってくるか……という一つ一つを考えていかないと、本当の意味で人には届かない。企業活動全体を最適化する中で、物流はかなり大変。そうした概念をなるべく早い段階で若い方々に持ってもらうのは、大切だと思っている」と話していた。
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