連載⑧ 流通最前線「ドンキ、ユニー再生の方法論とは」(下)

PPIHはユニーの再生はGMSの長崎屋に次ぐ2社目。PPIHはどんな方法論でてこ入れを図っているのだろうか。

「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)によるユニーの総合スーパー(GMS)てこ入れでは、いわゆるドン・キホーテ業態に転換しないで再生するかという命題と向き合っている。PPIHはユニーの再生はGMSの長崎屋に次ぐ2社目。PPIHはどんな方法論でてこ入れを図っているのだろうか。

愛知県一宮市にあるユニーの「ピアゴパワー妙興寺店」。同店はPPIHが「ドン・キホーテ」業態に転換せずに、活性化を目指した「Newアピタピアゴ構想」に基づくユニーGMS再生の1号店で、昨年6月のリニューアルに続き今年3月、さらに改装し店名をピアゴパワーに変更した。

同店からわずか2キロメートル先にユニー店舗をドンキ業態に転換した「MEGAドン・キホーテUNY一宮店」があることから店舗名も近隣住民に馴染みある「ユニー」を残し活性化に乗り出している。

ユニーの店舗を皆、ドンキ業態に転換し活性化すれば効率的と思うが、なぜこうした手法をとるのか。

ユニーの出店戦略はドミナント(地域集中出店)政策がとられており、すべてユニー店舗を業態転換すると一定の地域がほとんど「ドン・キホーテ」や「MEGAドン・キホーテ」ばかりになって、カニバリ(自社競合)してしまうからだ。ユニーが従来持っていた店舗名を残しつつ、「パワー」や「プラス」など新しい店舗名を付加し活性化を進めているのだ。ユニーではドンキ業態に転換する80店前後とは別に、残ったユニー店舗を以前と同じようにユニーの店名を残しテコ入れを図る見通しだ。

それはドンキ幹部が明らかにしているように、ドンキ業態に転換した店舗の近隣のユニーGMS店舗の売上高が増加するという現象がみられたからだ。ドンキ業態に馴染みがないお客を旧ユニー店舗が吸収しているのだ。すでに今年3月時点でユニーの「妙興寺店」を始め、「アピタプラス岩倉店」、「ラスパ御嵩店」など数店が改装されている。

ユニーの店名を一部残して活性化を図っている店舗の売上高は例えば「ピアゴプラス妙興寺店」は転換後6か月間の伸び率が転換前の同期間に比べ35・5%増、さらに「アピタプラス岩倉店」は20年12月の実績が転換前より31・2%増などという結果だ。

写真はイメージです

このうち昨年、業態転換されたピアゴプラス妙興寺店を訪れた。看板も「ピアゴ」を残しており従来のユニーのGMS店舗のようにみえる。ドンキ流の名残である圧縮陳列や、POPの洪水といった店内の変更がみられるのだろうと思っていたが、まったくそうしたドンキの特徴は見られない。

そして3月、ピアゴプラスへの転換後1年も経たないうちに同店を「ピアゴパワー」に転換した。「ピアゴパワー妙興寺店」はいわゆるかつてのGMSのように何でもあるが何もない店という総花的な品揃えを改め、1階は食品のユーストア、2階はインナー&雑貨、3階をユードラッグ、カーニバル(キッチン雑貨)いう売り場構成に改めた。売り場にメリハリをつけ、特定のカテゴリーを最大限拡張するという方式をとった。

仕入れ方法も多くのGMS企業がとっている本部や地域集中仕入れという方法を改め、個店が仕入れ権限を持って仕入れるというドンキ流を導入した。地域の実態に合わせた商品政策をとれるようにしたのだ。改造から1年も経たないうちに柔軟に店舗を改めるのもPPIH流だろう。

ユニー既存店の改造の成果は現れており総合スーパーはダメという論調にアンチテーゼをとなえている。

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