【詳報】東京電力小早川社長が新潟県庁を訪問
25日、東京電力ホールディングス株式会社(東京電力HD)の小早川智明代表執行役社長が新潟県庁を訪れ、花角英世知事、新潟県議会自由民主党議員団、公明党新潟県本部を訪問した(テロ対策の不備が相次ぎ発覚した問題)。詳報は以下のとおり。
花角英世知事、「新潟県における御社の信頼は損なわれた」
東電 新潟県のみなさまに不安を与えた。心からお詫び申し上げる。
花角知事 新潟県における御社の信頼は損なわれた。原子炉の運転を守れるのか、疑問符がついた状態。行動と実績で示して欲しい。
知事訪問後の取材に小早川社長が応答、「発電所がこの先存続できるかの大きな危機感を持っている」
記者団 先ほど知事から信頼が損なわれたとの発言があったが…。
東電 ID不正使用、工事の未完了に加え、核物質防護設備の機能の一部喪失という事案を起こしてしまった。本当に新潟県のみなさま、広く社会のみなさまに大変なご心配をおかけしたことにつき、改めて心よりお詫び申し上げたい。
会社としても今回の事案の発生を大変重く受け止めている。福島の事故から10年間、二度とあのような事故を起こさないとの反省と教訓に立って改革を進めてきたが、今回の事案の発生を受け、やはり大きく何かが足りなかったのではないかと、重く受け止めている。
一連の事案に対しての根本原因を経営の最優先事項として究明し、抜本的な改革を打ち進めたい。発電所がこの先存続できるかの大きな危機感を持っている。先頭に立って、しっかりと立て直しを図りたい。
新潟県議会自由民主党議員団、「すでにセキュリティが破綻している」
自民党 不正侵入はあったのか、また、その問いに対する回答の根拠は。東電 不正侵入はなかったものと判断している。破られた痕跡、内部に対する侵入の痕跡がなかったことを総合的に判断し、そのように評価している。規制委員会からの指導を受け正常な状態に復帰している状況。
自民党 セキュリティ上の理由から情報開示できないと言うが、すでにセキュリティが破綻しているのだからその論理は崩れている。情報開示すべきでないか。
東電 セキュリティ問題については、昨年9月のID不正利用から6か月の中での根本原因究明、それに基づく再発防止を報告した上で原子力規制庁の検査を受ける予定となっている。これらの工程の中で公開できるものを公開していきたい。核防護に対する脆弱性が高まる可能性があるため、(公開が十分とはいえない点を)ご理解をいただきたい。
自民党 脆弱性については東京電力自らが行ったこと。情報開示が行われない態度に疑義。積極的に検討してもらいたい。また、防護施設の問題は、核防護の観点で勉強不足だったのか。それとも、上からの指示が現場まで届いてないのか、どちらなのか。
東電 なぜ現場がこれで十分と判断にいたったのか、ルールの問題でもあり、ルールの有効性の問題でもある。現場のオペレーターや、管理者側でもなぜ気が付けなかったかを徹底的に究明していく。
歴史から学ぶことが重要だと考えている。今回の件も一連の事案も、福島の事故も、そもそもの東京電力の体質について見直す必要がある。核セキュリティの対処が出来ていなかったことが非常に重大だと考えている。現場がどうかということではなく、社全体が一体となって取り組めているか。ご指摘もあった通り、(本社のある)東京都と新潟県の距離も重要だと考えている。新潟県に立地させていただいているひとつの企業であるという意識を持たせていただき、現地、現場の重要性を再認識していきたい。
自民党 短期間の間で、不正侵入、工事未完了、核防護施設の事案が発生している。組織のコントロールが出来なくなっているのではないか。
東電 弁解の余地はない。大変な負担をおかけしたことをお詫び申し上げる。信頼が損なわれた状態であると認識している。根本的な原因究明が必要。意識するだけではなく、行動を積み重ねることが必要と認識している。
自民党 東京電力には柏崎刈羽原発の再稼働を目指す思いがあり、再稼働へ向けて一枚岩になるべき場面であると思うが、そのようには見えない。東電社内、協力会社をどう見ているのか。
東電 対話を重ね、進めていく必要があると考えている。意識ももちろんだが、ルール作りが大切であると認識している。
公明党、「しっかりと県民の信頼を回復していただきたい」
東電 現場だけ、経営だけということではなく、全社で取り組む必要を感じている。まずは、ルールがしっかりと定められていたのか。そのルールが有効に機能できるものあったのかどうか。有効に機能できないとわかった時に、現場のオペレーター、管理者はなぜ気づけなかったのか、改善を試みなかったのか。そういった点が重要と考えている。
その過程において、所長をはじめとした経営幹部、経営管理層がいて、協力会社も含めた作業にあたられる方がおられる。本社と現場の過程のガバナンス、是正されなかった、有効性を確認出来なかった関係性も含めて、深追いしていきたい。
一連の事案の発生を受け、核セキュリティおよび安全品質に対する当社の意思や文化に大きな疑念を抱かざるを得ない状況であると考えいる。
意識だけだなく行動レベルに体現していくことが重要で、なぜ行動が果たされなかったか、そこに組織の縦割り、ある種の事なかれ主義、様々な心理的要因が働いてなかったかについてもしっかりと究明していきたいと考えている。
公明党 行動と実績ということを重ね重ね言っている。しっかりと県民の信頼を回復していただきたい。
訪問後のぶら下がり取材、「行動と実績を重ねることを持ってしか信頼の回復はない」
記者団 撤退もやむなしとの意見もあったが…。
東電 ID不正利用、工事未完了、また、核防護施設の機能喪失という一連の重大な事案を起こしたことに関し、県民のみなさま、地元のみなさまから大変なるお怒りと強い不信感があるとの言葉をいただいた。その通りであると思う。
特にに核セキュリティに関しては根本原因の究明と再発防止をしっかりと行いたい。今回の訪問では様々な疑念や、対策に対するアドバイス、また、東京電力が過去様々あったことを含めての企業文化についても言及があった。しっかりと再構築をはかっていきたい。
記者団 県民の信頼回復はどのように…。
東電 今回の一連の不祥事、過去の様々な不祥事もさることながら、福島の事故の反省と教訓がしっかりと活かせていなかったのではないかということを原因究明の中に視点として盛り込み、直すべきことを直していく。
現場任せ、本社からの指示ということでなく、一体となって発電所を生まれ変わらせるような気持ちを持ち、知事からのご指摘にもあったように、行動と実績を重ねることを持ってしか信頼の回復はないと考えている。時間はかかるかも知れないが、信頼いただけるようひとつひとつ進めていきたい。
記者団 柏崎の再稼働スケジュールについての考えは。
東電 再稼働の見通しを立てられる状況にはないと考えている。
記者団 信頼回復したと判断できるまでどれくらいかかると考えているか。
東電 健全性を作り変えて証明していくことが必要。その上で地元の御信頼をいただけるか。今の時点では申し上げられない。
記者団 県議から撤退もあり得るとの意見もあったが…。
東電 企業としての責務を果たしていきたい。
記者団 撤退の考えはないということか。
東電 事業として進めさせていただいている以上、まずはこの状態を立て直さない限り、地元のみなさまに対して申し開きが立たないと考えている。
記者団 原子力事業に固執する理由は。
東電 お客様に対して電力の安定供給を行っていく上で、価格の安定性、供給の脆弱性に対応するようなエネルギーセキュリティの問題、また、非常に重要な問題である脱酸素の問題。こういったものを総合的に勘案しながら安定的に電気を供給することが重要であると考えている。
ただ、その上で今回の一連の事案が発生し、現段階で再稼働の検討を申し上げる段階ではないが、原子力エネルギー自体を活用することは電力会社としてしっかりと考えていかなければならないと考えている。
記者団 今回の訪問で他の会派に回らなかった理由は。
東電 今回は自民党、公明党から説明要望があったので応じさせていただいた。要請のあるなしに関わらずというのはもっともであるが、緊急事態宣言が明けて、まずは県を代表する知事と、要望のあった会派にご説明させていただいた。今後、真摯に対応させていただきたい。
柏崎刈羽原子力発電所を置く中越地域はもとより、新潟県民全体の安全問題に重大な影響を及ぼす今回の一連の不祥事。東京電力は経営と現場が一体となって進めていくことが重要であると捉え、今週初めから常務執行役で原子力・立地本部長の牧野氏を本社スタッフとともに常駐させるなど、原因究明と再発防止への意欲を示している。