新潟県上越市の雪室施設「ユキノハコ」が完成、中山間地の所得向上を目指す
新潟県上越市は27日、2017年12月に上越市安塚区の道の駅雪のふるさとやすづか内にあった雪室施設が火災で焼失したことを受けて、同所内に雪室施設「ユキノハコ」を完成させ記念式典を開催した。雪中貯蔵の効果を活かした農産物の高付加価値化による中山間地の所得向上が期待される。
ユキノハコは新潟県産スギを使用した木造2階建てで、木造の雪室施設は全国的にも珍しいという。事業費は約1億1,000万円。雪室の貯蔵庫は床面積79.5平方メートルで、約90トンの安塚区の雪を今年2月に除雪機などでコンテナなどに詰め込んでおり、来年冬頃まで雪が持つという。
雪室の中は5度以下となっており、安塚区で収穫された米や地酒などを入れる予定。パレット(鉄製の荷台)30台、かご台車10台の収納が可能で、上越市内の業者を優先的に有料で1パレットや1かご台車ごとに貸し出す。
雪室で貯蔵した米や野菜などはユキノハコに隣接する物販店・雪だるま物産館で販売するほか、上越市内のレストランでの取り扱いを見込んでいる。
雪室とは雪による天然の冷蔵庫と呼ばれるもので、上越地域に古くから伝わる保存方法。雪室の効果は大きく4つあり、1つ目はじゃがいもなどの野菜は糖度が増加し、甘味が増す点。2つ目は酸化が遅れることで、食品劣化を防止できる点。3つ目は一定した低温・高湿度環境で感想を防ぎ、鮮度を維持できる点。4つ目は雪冷熱の利用により、二酸化炭素の排出を削減できる点がある。
雪室の貯蔵庫の外周に上越市高田の雁木(雪よけのために家々の軒からひさしを長く差し出して造り、下を通路とするもの)をイメージした回廊があるほか、雪国の生活や雪国の文化などを学べるパネル展示があり、雪に触れて雪の冷気を感じられる見学コースもあるなど観光対応型の施設にもなっている。4月から土日祝日の午前、午後1回ずつ無料で一般見学を受け付け、詳細は上越市ホームページで告知する。
完成記念式典で挨拶した上越市の村山秀幸市長は「農家の所得向上を図るのはもちろんだが、地域の産業や観光の振興に寄与するような雪国文化を発信する拠点としてやっていきたい」と話した。
なお、上越地域の雪室施設は、上越市では株式会社岩の原葡萄園が雪室を保有しているほか、隣接する妙高市では道の駅あらいで今年2月から妙高市初の取り組みがスタートしており、雪を有効に利用して付加価値を生む動きが進んでいる。